資産運用
マンション経営において投資家本人の属性(勤務先や年収などの経済的背景)と並んで、銀行が重視するのが、収益物件の「担保価値」です。ところで、どのように物件の担保価値は判断されているのでしょうか。今回は投資用物件の担保価値について考えてみたいと思います。
金融機関がマンション経営を行う投資家に対して、数千万円から億単位ものお金を貸すことができるのは、属性などから判断したその人に対する評価と、その人がローンの返済ができなくなった時に、物件を競売にかけて現金が回収できるからです。そのために、金融機関は、その物件がいくらで売れるのかを、できる限り正確に把握しなければなりません。この金額こそが物件の担保価値です。それでは、銀行はこの担保価値を、どのように計算しているのかというと、一般的に物件の評価額(時価)に「掛け目」を乗じて計算しているとされています。この掛け目は7~8割の場合が多いようです。つまり、金融機関は本来の不動産の評価額よりも、2~3割低い担保価値を考えているということです。これは将来掛け目は金融機関ごとに異なり、また物件の立地や条件などによっても異なります。
では、物件の時価である「評価額」はどのように算出しているのでしょうか。求め方には「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」の3通りがありますが、今回は最もポピュラーな原価法で説明します。この原価法によって求めた価格のことを積算価格と呼びます。
原価法は、物件を土地と建物に分けてそれぞれ算出します。まず土地は、「公示地価」「基準地価」「相続税路線価」「固定資産税路線価」とそれぞれ国土交通省、都道府県知事、国税庁、市町村長が発表する1㎡あたりの単価のいずれかに、広さを乗じて求めます。
公示地価と基準地価はほぼ同じで、最も時価に近い価格です。相続税路線価は公示地価の80%、固定資産税路線価は同70%程度とされています。このため、路線価で計算するときには掛け目を乗じないケースもあります。路線価の場合を見てみましょう。
ただ、時価(実勢価格)はこれらの価格と隔たりがある場合があるため、近隣の売買事例を鑑みたり、住宅の場合は、道路に接する面が日照にかかわる北向きか南向きか、利用価値の高い角地であるかなど、土地の条件に応じて細かく補正したりすることで、より正確な数値を算出します。なお、区分マンションの場合は、土地の持ち分を乗じます。
一方、建物は新築を建て直したときにかかるであろう単価費用である「再調達価格」に延べ床面積を乗じ、そこに減価償却分を加味し、さらに法定耐用年数から経過年数を差し引いた「残存年数」を、法定耐用年数で割ったものを乗じて算出します。
再調達価格の単価と法定耐用年数は、国税庁によって以下のように決められています。木造と軽量鉄骨はそれぞれ約14万円、22年です。重量鉄骨は約15万円、34年です。SR(鉄筋)・SRC(鉄筋コンクリート)は18万~20万円、47年となっています。
もう少し具体的に考えてみましょう。「敷地面積2,000㎡、土地の持ち分が4,000/50万、相続税路線価が40万円、RC造(再調達価格20万円)、専有面積30㎡、築年数17年」のワンルームマンションの積算価格を求め、掛け目80%で担保価値を計算してみます。
土地は相続税路線価40万円÷0.8(公示地価に戻すため)×敷地面積2,000㎡×持ち分4,000/50万=800万円です。
建物は再調達価格20万円×専有面積30㎡×残存年数30年(法定耐用年数47年-築年数17)÷法定耐用年数47年=約383万円です。
担保価値は、(土地800万円+建物383万円)×掛け目0.8=約946万円ということになります。この区分マンションを購入してマンション経営を行う場合、ローンとして借りられる額は、この946万円が一つの基準になります。ただ、これはあくまでも目安で、融資限度額ではありません。ここから立地などさまざまな条件、投資家の属性や与信が考慮され、最終的な融資額は決まります。
上述のようにして物件の担保価値は算出されます。少々複雑に感じる方もおられるかもしれませんが、
このような算出方法があることを知っておくだけでも、物件の購入にあたって「なんとなくいいな」とか「周囲の金額がこれくらいだから」というような直感に左右されず、自分なりにざっくりとでも判断基準を持つことができるでしょう。
もちろん不動産会社や金融機関の方々も親身になって相談に乗ってくれますが、投資家として最終的な意思決定と責任は常に自分にあるべきです。担保価値の算出は、より確実性を高める投資手段の一つとして学んでおいて間違いはありません。
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