節税
相場の急騰から、仮想通貨で億単位の利益を得る人も決して少なくはありませんでした。そうした儲かるという面だけでなく、仮想通貨は保持している限り税金の対象とはならないため、税金対策の一環として投資を考える方もいるかもしれません。しかし現在の税法上では、仮想通貨は税金対策として有効な手段とは言えないのが実情です。この記事では、何故仮想通貨が税金対策にならないのか、詳しくご紹介していきます。
仮想通貨は保持している限りは税金はかかりませんが、利益を確定した段階で所得税の対象となります。ただし、会社員などの給与を得ている人の場合は20万円以上、学生や主婦のような扶養者の場合は33万円以上の利益を得た段階で課税の対象となるため、それ以下の利益額の場合は税金は発生しません。
所得税は事業所得、不動産所得、給与所得、雑所得など全部で十種類に分けられます。仮想通貨で得た利益はこの内の「雑所得」となります。
所得税は基本的に累進課税の対象となり、収入額が大きくなるほど税金も高くなります。加えて仮想通貨の利益が分類されている雑所得は、「総合課税」という制度の対象です。この総合課税の対象となってしまうという点が、仮想通貨が税金対策として有効ではない大きな理由です。
総合課税では、仮想通貨での利益は給与所得と別に考えて税金がかけられるのではなく、給与所得と仮想通貨の利益が合算されて税金の対象となります。所得税は累進課税であるため、この合算によって所得が高くなることで、税金も大きくなってしまうのです。
例えば、年収が300万円の方が仮想通貨に投資を行ったとします。仮想通貨への投資が成功し、50万円の利益を得た時点で利益を確定させました。この場合、300万円の所得の方への税率は所得の10%ですが、330万円を超えると税率は2倍の20%へと倍増します。この税率は最大で45%まで増えてしまうため、仮想通貨による給与所得外での収入が大きくなるほど、税金も膨らんでいってしまいます。住民税を加えると55%も税金で持っていかれてしまう可能性もあり得ます。
この高い税率が存在するため、仮想通貨は税金対策として有効ではないということができるのです。
仮想通貨は利益を得るほどに、税率が高くなっていってしまいます。この説明だけを受けると、仮想通貨以外の投資方法である、不動産投資や株式、FXなども同じ税制度なのかと考える方もいるかもしれません。しかし、ここは大きく異なります。
例えば不動産投資による不動産売却によって得られた所得は譲渡所得、FXであれば仮想通貨と同じ雑所得に分類されます。所得税として分類されるのは同じなのですが、税率計算の方法は明確に違い、これらには「申告分離課税」という方法が取られています。この申告分離課税では、対象となる所得にかけられる税金は、所得とは一切関係なく、一律で20.315%と定められています。仮想通貨は総合課税によってその倍以上の税率になってしまうこともあるため、これらの投資と比較すると仮想通貨には非常に重い税金がかけられているということになります。
メリットのある税制として、「損益通算」と「繰越控除」というものが存在します。
不動産の貸付などによる不動産所得はこの損益通算の対象となります。この税制により、損失が生じた場合は利益が出ている他の所得から差し引くことができ、結果として課税対象額を減額することができます。
仮想通貨の場合も、相場の変動により損失が発生する場合は存在します。しかし、仮想通貨では仮想通貨同士による損益の差し引きや、他の雑所得との差し引きはできますが、他の金融資産などとの損益通算はできません。
また、損益通算によって利益から損失を差し引いても、損失が残ってしまう場合もあります。不動産投資などの場合はもう一つの税制である繰越控除によって、3年間は損失を繰り越すことができます。(青色申告の場合)しかし、仮想通貨の場合はこの繰越控除は対象外とされてしまっており、その他の投資と比較すると、税制によるメリットは少なくなっています。
仮想通貨は所得税の内の雑所得、更に総合課税の対象となってしまうため、利益額が増すほど税金が大きくなってしまいます。株式や不動産売却などその他の投資では申告分離課税によって税率が一律に抑えられているため、仮想通貨にかかる税金はそれらと比較すると非常に重いというのが現状です。税金対策として考えた場合は、不動産投資などその他の投資方法を検討することもよいかもしれません。
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