保険年金
公的年金を納めるのは国民の義務です。
給与控除されるなど、納めていることが当たり前となっていますが、
実際にどのくらい給付されるのかを関心を持っている方は多いのではないでしょうか。
ですが、実際把握しているという方はあまり多くはありません。
65歳の定年退職後は、主に貯蓄と支給開始となる年金でやりくりしていく必要があります。
老後の生活資金は3000万円かかると言われるなど、若いうちからの資産運用は不可欠です。
老後に年金として支給される金額のおおよそを知ることで、
逆算して日々の貯蓄をどのくらいしていけばいいのか目安にもなります。
そこで今回は年金給付水準の基準となる所得代替率について解説していきます。
所得代替率とは、厚生年金の支給額を決める指標で、
年金支給開始時の金額と現在の手取りでの収入額とを比較した割合を意味しています。
たとえば、所得代替率が60%の場合、給与所得の手取り額の60%が
年金給付として受け取れる額として計算できるというものです。
また、この所得代替率は、5年に1度に公的年金制度が正しく運用されているかどうかを
財政検証として厚生労働省が発表しています。
所得代替率が50%を下回る場合、仕組みの見直しが検討される運用方法です。
ここでなぜ50%と言及されているかというと、この所得代替率を試算するための
モデルケースとなる対象を想定しているからです。
具体的には、夫が平均的収入の会社員かつ、妻が専業主婦の家庭で
夫が約40年間厚生年金の保険料を納めた場合の夫婦家庭を想定しています。
このモデルケースと比較して現労働世代の収入の半分以上があれば、
問題なく生活できるだろうと考えたためです。
そのため、この所得代替率50%以上という水準は法律で保証されています。
近年、将来年金が支給されないのではとするニュースが度々報じられていますが、
支給されない状況は考えにくいと言っていいでしょう。
ただし、実際に支給される額が厳密に計算できるわけではなく、
あくまでも支給額の水準が把握できる割合となります。
では、所得代替率が50%以下にならないようにされていると紹介しましたが、
現状ではどの程度なのでしょうか。
直近である2019年度の財政検証を参考にしてみましょう。
2019年に発表された所得代替率は、61.7%です。
(参照元URL:https://jp.reuters.com/article/japan-pension-idJPKCN1VH0RJ)
つまり、手取りの61.7%は支給される見通しということになります。
しかし、ここで注意が必要なのが、経済状況や人口状況を考えずに計算した場合です。
経済の低迷や少子高齢化で受給人口が増加の一途をたどれば、
当然受給対象国民全員に支給できる総額に対し人数が多いわけですから、
支給額も必然的に調整しなければなりません。
そこで、情勢を考慮した所得代替率を考えるうえで参考にすべきが「マクロ経済スライド」です。
マクロ経済スライドとは、その年代ごとの経済や社会情勢を考慮して年金の給付水準を自動的に調整する制度です。
少子高齢化が深刻化する中で支給財源と実際に支給する額の均衡を保たなければ、年金制度が破綻しかねません。
そのために、5年に1度その額を「財政検証」として「スライド調整率」という名目で調整する目的として設けられています。
なお、計算方法は「公的年金全体の被保険者の減少率」と「平均余命の伸び率(0.3%)」です。
この調整期間中は、財源と支給額を改定・調整する目的のため、当然所得代替率が低下しますが、
調整後はまた一定になると留意しておきましょう。
こうして考えると、少子高齢化が改善されることは現実的ではないため、
毎回財政検証の度に調整され続けることが懸念されます。
そのため、国が公表する「財政検証結果」では物価上昇率や賃金上昇率、年金財政の運用率と
国民の平均寿命の各要素を6つのモデルケースとして設定し予測を出しています。
いずれのケースでもあくまでも想定ですので、実際にモデルケースの範囲内になった場合は
所得代替率が50%を下回るよう調整されますので、安心してよいでしょう。
以上、所得代替率の紹介でした。
公的年金の給付水準は、一定額ではなく、「所得代替率」を基準に定められています。
その所得代替率とは、給付開始時における年金額を
現労働世代の手取収入に対する割合であることと解説してきました。
公的年金の支給額を知ることは、定年退職後の人生を考えることはもちろん、
現在労働している方にとっては、今現在の支出管理などの生活水準や
退職までのキャリア形成に至るまでをより真剣に考えるきっかけにもなります。
人生100年時代とも言われている昨今では、定年退職後のセカンドライフを考えて管理していくことが重要です。
公的年金の支給額を知ることで、どの程度の生活ができるのかという想定や理想の生活を送るためには
どの程度考慮すべきかが把握できるため、資産形成を考える上で良い機会になります。
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