節税
累進課税制度とは税金に採用されている課税の仕組みのことで、日本では「所得税」「相続税」「贈与税」に対して用いられています。この制度では課税対象額が増加するに従って税率が上がるため、所得が高ければ高いほど税率が引き上がります。
せっかく頑張って稼いだのに税金でほとんど取られてしまっては、悲しいですよね。そこで、今回の記事では累進課税制度の仕組みやメリット・デメリット、節税対策についてご紹介します。
私たちの身近な税金として知られる、消費税や所得税、固定資産税。これらは国や都道府県などの地方自治体が公共サービスや公共施設を提供できるように設けられています。
税金は種類ごとに計算方法が異なります。たとえば、重量などに応じて一定額を課税するケースもあれば、収入に対して一定率を課税するケースもあるでしょう。累進課税制度もそうした課税方式のひとつであり、日本では「所得税」「相続税」「贈与税」に対して採用されています。
「累進」とは、数量が増えるに従って比率が増加することです。つまり、累進課税制度では課税対象額が増加するに従って、税率が上がります。所得に応じた税金の負担や、富の集中を排除することなどが目的とされる一方、努力して増やした収入の多くを徴税されてしまうことで労働意欲が損なわれ、経済活動が弱まるとの指摘もある制度です。
以下は国税庁のホームページに掲載されている所得税の速算表です。
所得税の速算表
課税対象所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円以下 | 30% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
(引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
たとえば、課税対象となる所得金額が400万円だとしたら、課税額は以下のように計算されます。
例)195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(400万円-330万円)×20%=372,500円
ではもし、課税される所得金額が500万円としたらどうでしょうか?その場合、計算式は以下の通りです。
例)195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(500万円-330万円)×20%=572,500円
このように、実際に計算してみると所得が上がれば上がるほど多額の税金を納めなければならないことがわかります。
累進課税には「単純累進課税」と「超過累進課税」といった2つの種類があります。日本で用いられているのは「超過累進課税」であり、さきほどの所得税の計算例がこれに該当します。
一方、日本では用いられていない「単純累進課税」とは、累進課税率を課税額全体に適用する方法です。先ほどの所得が400万円と500万円の例を挙げると、次のように計算されます。
■所得400万円
400万円×10%=40万円
■所得500万円
500万円×20%=100万円
このように単純累進課税と超過累進課税を比較すると、超過累進課税のほうが課税額の上昇が緩やかだとわかります。
累進課税制度の概要と仕組みについてわかったところで、メリットとデメリットについてご紹介します。
累進課税制度のメリットとして、「納税者の収入に応じて負担可能な範囲で課税しよう」といった応能負担の考えをベースに作られていることが挙げられます。所得税の計算例でも触れたように、課税対象額が増えれば増えるほど税率が上がるため、高所得の人ほど負担額が高くなります。
累進課税制度では、こうした考え方を取り入れることで税公平の負担が図られているほか、富の格差が生じにくい点がメリットといえるでしょう。また、贈与であれば贈与時期をずらすことで節税が可能であるほか、所得税であれば控除を使って課税金額を減らせます。たとえば、個人事業主などは車を経費として計上し、課税対象額を減らせるでしょう。
累進課税制度では高所得の人ほど税金が高くなるため、労働意欲の減退が起こりやすくなる点がデメリットです。主婦がパートで働く際、配偶者の扶養内で働くケースなどが該当するでしょう。
また、インフレが生じると実質的な所得が変わらずとも所得額が増え、結果として納税額が増えてしまうといった問題や、課税額が大きい人ほど可処分所得が減るといった問題もデメリットとして持ち合わせています。
「収入が増えれば増えるほど累進課税で税金が高くなってしまう」などとナーバスな気持ちを抱いてしまう方も多いかも知れません。
しかし、適切な節税対策を講じることで課税される税金額を減らすことができます。とはいえ、所得税と相続税及び贈与税ではそれぞれ対策が異なることから、別々に分けてご紹介します。
所得税の節税対策として、各種控除制度を賢く活用することが挙げられます。例として、次のような控除を活用すると良いでしょう。
・医療費控除
・生命保険料控除
・住宅ローン控除
・ふるさと納税
・NISA・iDeCoを利用する
このうち医療費控除とは、1月1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が高額な場合に所得控除を受けられる制度です。本人はもちろん、生計をともにする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も対象となります。なお、医療費控除で控除される金額を求める計算式は次の通りです。
実際に支払った医療費の合計-保険金などで補填される金額-10万円(※)
(※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%の金額)
最高200万円までが控除の対象となるため、場合によっては大幅な節税が見込めます。
また、生命保険や地震保険に加入している場合、年末調整の際に証明書を勤務先に提出すると所得から一定額が控除されます。この際提出する証明書は、年末調整の時期に合わせて保険会社から送られてくるので、捨てずに提出時まで保管するようにしましょう。
地震保険は年間の保険料の5万円までが控除対象です。生命保険の場合は、2012年1月1日以降に加入したものに関しては2万円まで、それ以前だと2万5千円までの保険料が全額控除となります。
とはいえ、全額控除の対象となる金額を超えた場合には注意が必要になります。生命保険料控除では区分によって控除される上限が決められているため、年間で支払った保険料の全額が必ずしも控除になるわけではありません。その点に気をつけて、控除を利用するようにしましょう。
相続税・贈与税は所得税に比べて節税対策が講じにくいものの、できれば課税対象額を抑えたいところ。そうした際におすすめなのが、「暦年贈与」です。暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間で、贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからないという仕組みを利用した贈与方法のことです。
この仕組みを利用することで毎年110万円を非課税で移せることから、相続税対策に有効といえるでしょう。また、暦年贈与の対象は110万円以下であればお金に限らず、土地や建物も含まれます。ただし、土地や建物を贈与する際に登記手続きの手間や費用が生じることから、不動産を対象とした暦年贈与はほとんど行われていないのが現状です。
注意点として、110万円という非課税枠は贈与を受けるものを基準として計算されます。そのため、同一年度内に父から60万円、母から50万円であれば合計110万円でセーフとなりますが、父と母からそれぞれ100万円ずつ贈与された場合、子どもは200万円の贈与を受けたことになってしまいます。この場合、110万円を控除した後の金額90万円に対して贈与税が課税されてしまうことを覚えておきましょう。
また、相続の際に今まで納めてきた贈与税を相続税で精算する「相続時精算課税制度」もおすすめです。この制度は60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できます。
相続時精算課税制度では2,500万円の特別控除があり、同一の父母または祖父母からの贈与において限度額に達するまで何回でも控除できます。つまり、2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになるでしょう。
贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた額に対して一律20%の贈与税が課税されます。しかし、その贈与税は相続時に相続税額から差し引かれるほか、相続税額が少ない場合は差額が還付されることもおさえておきましょう。
相続時精算課税制度は選択制であり、父母の片方にだけ適用することも可能ですが、一度選択したら取り消しは認められないため事前にしっかりと検討を重ねることが大切です。
今回の記事では累進課税制度の概要やメリット・デメリット、節税対策についてお伝えしました。
累進課税の仕組みはもちろん、所得税と相続税、贈与税のそれぞれに対する節税対策を知ることでより多くの資産を手元に残せるでしょう。
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