資産運用
新型コロナウィルスによる経済へのダメージは極めて深刻で、大手企業でさえも休業やボーナスカットに踏み切る報道が続いています。
リモートワーク導入による自由時間の拡大も追い風となり、これまで専業のサラリーマン・公務員だった方が、新たに不動産投資を検討する方が増えているようです。
意外と知られていませんが、不動産投資では、良い収益物件を購入することと同じくらい、税金対策が成否を分けるポイントになってきます。
そして、実は、不動産投資を始める前のほんのひと工夫で、スタートから賢い節税ができる“開業費”というコツがあるのです。
この記事では、“開業費”による、お手軽でお得な節税について、ご説明していきます。
開業費とはなにか?
不動産投資は、株式投資や個人向け国債のような投資と比べても、一般に高額なお金を動かす投資です。
比較的少額からできるとされる区分ワンルーム投資であっても、たとえば東京で比較的新しい収益物件に投資するとなれば、2,000万円前後~のお金が必要となります。
これだけの大金を投資する、または金融機関などから借入を起こすわけですから、初めて不動産投資をする方が、思い立った当日に収益物件を購入するケースは少なく、多くのケースでは、数ヵ月スパンでの事前準備をすることになります。
開業費とは、この事前準備の段階で生じたお金のことで、具体的には、以下のようなお金が該当します。(個々の支払いが、実際に開業費に認められるかは細かいルールに則り、個別案件として判断されます。あくまで一般論としてご理解ください)
・不動産投資を学ぶための、書籍や有料情報の購入代金
・候補物件を探すための、セミナーや個別相談会への参加代金
・購入是非を判断するための、収益物件現地までの移動交通費
1つ1つは大きな金額ではないかもしれませんが、こうした支払いが数ヵ月スパンで続くわけですから、積み上げていくとそれなりに纏まった金額となることも珍しくありません。
そのため、「不動産投資をやってみよう!」と思い立ったら、その事前準備に要したお金については、必ず領収書やレシートを取っておく習慣を付けるようにしましょう。(公共交通機関などでは、利用した日にち、行先、目的、金額などをメモに控えておけばOKです)
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不動産投資の利益に課される税金
株式投資の配当金に税金がかかるのと同じように、不動産投資の利益にも税金がかかります。ここでの税金とは、毎年の利益に対して課税される所得税・住民税のことです。
この税金の計算式をごく簡易的に説明すると、以下の通りになります。
・不動産投資の利益(a)
=「年間の不動産投資の売上」-「年間の不動産投資の費用」
・不動産投資の税金
=(a)×所定税率
「不動産投資の売上」とは、入居者様から受け取る毎月の家賃や、契約更新時に受け取る更新料などの1年間の合計金額です。
「不動産投資の費用」とは、マンションの維持管理のための建物管理費・修繕積立金や、入居者様対応のために要する集金代行手数料などに加えて、借入金利子や減価償却費といった税務上のルールによる金額を調整した1年間の合計金額です。
個人で不動産投資を行う場合、税金は毎年1月1日から12月31日までの1年間を単位として、「売上>費用」であればその差額が課税対象に、「売上<費用」であれば税金はかからない、または税還付の対象となります。
つまり、売上を減らすか、費用を増やせば税金は下がるわけですが、費用に関していえば、その年の費用は、その年に計上しなければならないのが大原則です。(たとえば、5年前に支払った建物管理費は当年度には費用計上できません)
しかし、開業費は、「任意の年」に、「任意の金額」を費用計上できるという、特別な性質を持っており、これが不動産投資では効果的な節税に繋がる可能性を秘めているのです。
不動産投資で新たに収益物件を購入すると、登録免許税(所有権移転・抵当権設定等)、印紙税(売買・金銭消費貸借等)、不動産取得税、司法書士報酬、金融機関手数料など、様々な費用が発生します。
これら費用の総額は、購入した年度の売上を上回ることも多く、不動産投資の初年度は赤字となることが珍しくありません。
税還付がうまくハマるならまだしも、元々が赤字決算の年に、追加で費用を計上してもメリットがありません。
そこで、開業費の「任意の年」に、「任意の金額」を費用計上できるという特徴が効果を発揮します。
たとえば、不動産投資を始めた2年目が黒字になるようであれば、ここでプラスマイナスゼロになるまで開業費の一部を費用計上すれば、この年の税金は発生しませんし、開業費が余れば3年目以降の黒字となった年度に計上することができます。
あるいは、もし、投資2年目にも収益物件を買い増しして赤字になるようなら、2つの収益物件分の利益が重なる、投資3年目に開業費を費用計上することも可能です。
もっといえば、所得税の超過累進課税制度に着目して、総合課税の税率が高くなりそうな年度まで温存して、いざというときに費用計上することもできるのです。
先ほどもご説明しましたが、不動産投資を始めた後は、その年の費用は、その年に計上するのが大原則で、これほど融通の利く経費は、開業費以外にまずありません。(減価償却費による節税も有名ですが、開業費ほど自由には費用計上できません)
開業費について、少し専門的なことをいえば、「任意償却の繰り延べ資産」という扱いとなっています。(簿記や会計の知識がある方には、こう説明した方がピンとくるかもしれません)
ただ、難しいことは、実際に不動産投資を始めてから、税務署や税理士さんに相談すればよいでしょう。
兎にも角にも、不動産投資をやろうと決めたら、
・領収書が出るものは領収書を取っておく
・レシートしか出ないものはレシートを取っておく
・公共交通機関(電車賃など)など、何も証憑が出ないものは、利用した日にち、行先、目的、金額などをメモに控えておく
・不動産投資を始めたら、開業費の計上タイミングを検討する
これをしっかり意識しておきましょう。
たったこれだけで、ライバルに一歩差のつくスタートダッシュを切れるはずですよ!
FP(ファイナンシャルプランナー)・不動産投資実務家
中川理
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