節税
前稿では、成功している不動産投資家さんが節税対策として検討する手段として、法人化をご紹介しました。
不動産投資業の法人化! 3つの方式からベストな選択を!(前編)
不動産投資業の法人化! 3つの方式からベストな選択を!(後編)
しかし、不動産投資の初心者の方やまだ規模の小さい大家さんにとって、いきなり法人化というのはハードルが高いと感じるのも分かります。
本稿では、不動産投資を「小さく始めて様子見したい方」に向けて、簡単・お手軽にできる節税方法をご紹介いたします。
不動産投資を個人で行う場合、その利益は「不動産所得」として課税対象となります。
この「不動産所得」または個人事業主として行った事業に対する利益である「事業所得」に関しては、青色申告をすることで最大65万円の特別控除を受けることができます。
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<65万円の特別控除を受ける条件> ※国税庁ホームページより抜粋・一部加工
(1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
(4) 次のいずれかに該当していること
①その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存(下記《参考》参照)を行っていること。
②その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。
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詳細は国税庁のホームページをご確認いただきたいのですが、白色申告との大きな違いを抜粋すると、
・複式簿記で記帳し、貸借対照表を作成すること
・e-Taxによる確定申告の提出を行うこと
の2点です。
簿記や会計の知識がある方であれば、それほど難しい条件ではありません。
しかし、「不動産所得」に対して65万円の特別控除を受けるには、いわゆる「5棟10室」という事業的規模で不動産投資を行う必要があります。
不動産投資を「小さく始めて様子見したい方」にとって、ここまで収益物件を増やすのは難しいケースも多いでしょうし、そもそもこの規模であれば法人化の方がより節税対策として有利となるケースも多いはず。
そこで、これからご説明する10万円の青色申告特別控除の出番というわけです。
先ほどの「65万円の青色申告特別控除」の条件を満たさない場合、「10万円の青色申告特別控除」を受けることができます。
「いつかは青色申告できるよう、5棟10室を目指したい」と考える方もいらっしゃるのですが、実は1戸目の収益物件を購入した段階から青色申告は選択できますし、最大10万円とはいえ特別控除の適用を受けることはできます。
また、控除額が10万円では物足りないと思われるかもしれませんが、そもそも青色申告特別控除は不動産所得を超えて控除はされません。(仮に、65万円の青色申告特別控除の条件を満たしても、肝心の不動産所得が20万円であれば控除額は20万円です)
不動産投資を「小さく始めて様子見したい方」であれば、投資初年度から大きな不動産所得は出ないでしょうから、実質的な節税効果はそれほど変わらないこともあるでしょう。
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「10万円の青色申告特別控除」を受けるための手続きは、「開業届」「青色申告承認申請書」を提出して受理されればOKです。
また、毎年の確定申告でも、複式簿記や貸借対照表といった面倒な条件はなく、白色申告とほとんど同じ手間で青色申告をすることができます。
特別控除は毎年受けることができますので、勤務先の制約など個別事情がなければ、青色申告とするデメリットは殆どなく、不動産投資家デビューした初年度から青色申告を検討するのがおススメです。
また、個別相談をお受けしていて、近年ではご夫婦で不動産投資を検討される方も増えているように感じます。
もし、2戸以上の収益物件を検討するのであれば、ご夫婦どちらかの名義で購入するのではなく、ご夫婦それぞれの名義で収益物件を1戸ずつ分散購入することも選択肢です。
ご夫婦それぞれが「開業届」「青色申告承認申請書」を提出することで、「10万円の青色申告特別控除」を2人で受けることができるからです。(但し、ご夫婦間で本業の給与所得に差がある場合、給与所得の低い方が2戸分の収益物件を購入することで、より大きな節税効果を狙えることもあります)
不動産投資を「小さく始めて様子見したい方」にとっては、法人化や顧問税理士への相談など、節税方面に手間や費用を掛けたくないと思う方も多いと思いますが、本稿のように簡単・お手軽にできる節税もありますし、所轄の税務署への相談は無料です。
せっかく稼いだ利益ですから、ひと手間だけかけて、出来る範囲から節税を検討してはいかがでしょうか。
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