資産運用
不動産投資をするうえで避けては通れない「減価償却費」。
以前こちらの記事で、収益物件のうち「建物」については、その帳簿価値を耐用年数で按分して減価償却費として毎年費用計上すること、その計算方法や注意点などをご説明しました。
不動産投資 減価償却費での節税には要注意!!(前編)
不動産投資 減価償却費での節税には要注意!!(後編)
では、毎年の減価償却費の根拠となる「耐用年数」は、どのように決まるのでしょうか?
不動産投資家のなかでは、「木造22年、鉄骨34年、鉄筋コンクリート47年」という言葉が有名ですが、その意味を正しく理解できているでしょうか?
本稿では、「耐用年数」について少し掘り下げてご説明していきます。
本来、不動産投資における建物(あるいは設備)の耐用年数は、どのように考えるべきでしょうか。
シンプルに考えれば、不動産投資の主たる収入は「家賃」ですから、「家賃収入を得られるであろう年数」を耐用年数と設定することが合理的です。
そもそも、収益物件の立地や賃借人の性格・用途、あるいは所有者のメンテナンスなどによって収益物件の寿命は変わってくるはずですから、所有者ごと、あるいは収益物件ごとに異なる耐用年数を設定すれば、それが一番実態に近いといえるかもしれません。
その一方で、耐用年数は減価償却費の計算に直結し、その年数により毎年の納税額が大きく変わることになります。
恣意的な耐用年数の設定を防ぐという税の公平性の観点から、その基準には一定の客観性も考慮しなければなりません。
そこで、不動産を含む固定資産について、国が新築時点の「耐用年数」を定めるルールが作られました。
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不動産投資において、耐用年数(とその先の減価償却費)を考えるうえでは、やはり収益物件の「建物」を、どのように計算するかが重要です。(不動産投資家さんの中には、「建物」と「設備」を分けて減価償却費を計上している方も多いと思いますが、その場合であっても最大の固定資産は「建物」であることが多いはずですから、本稿では「建物」のみを前提に説明を続けます)
「建物」の耐用年数を決める観点は、大きくわけて以下の2つとなります。
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<建物の耐用年数を決める観点>
①建物の構造
②建物の用途
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「①建物の構造」とは、その収益物件が、たとえば「木造」なのか「鉄骨造」なのか「鉄筋コンクリート造」なのかといった観点です。
私は建築の専門家ではありませんが、木よりは鉄の方が、さらに鉄にコンクリートを組み合わせた方が、より構造が頑丈になるであろうことは容易に想像がつきます。
耐用年数の本来の意味は、「家賃収入を得られるであろう年数」ですから、構造が堅牢な建物ほど耐用年数を長く設定すべしという考え方は、実態に照らして理にかなっているといえますね。
「②建物の用途」とは、その収益物件が、たとえば「住宅用」なのか「店舗用」なのか「事務所用」なのか、はたまた「工場用」なのかといった観点です。
実際の利用シーンから建物へのダメージを想像すると、デスクワーク中心の事務所が一番建物へのダメージが小さく、家事や育児のある住宅がそれに続き、不特定多数の人が頻繁に出入りする店舗が、一番ダメージが大きいであろうことは、なんとなくイメージできますね。(工場ともなればさらに・・・)
「①建物の構造」と同じく、耐用年数の本来の意味・実態に照らして、分かりやすく合理性があるといえます。
冒頭でご紹介した、「木造22年、鉄骨34年、鉄筋コンクリート47年」という有名な言葉は、新築時の「住宅用」の耐用年数を切り取ったものだったわけです。(厳密には、鉄骨造の場合は、骨材の厚みによって耐用年数は細分化されています)
(表)新築時の耐用年数の抜粋
構造 | ||||
鉄筋コンクリート | 鉄骨(※) | 木造 | ||
用途 |
事務所用 |
50年 | 38~22年 | 24年 |
住宅 | 47年 | 34~19年 | 22年 | |
飲食店用 | 41年 | 31~19年 | 20年 |
(※)骨材の厚みによって異なる
ここまでご説明した2つの観点は、いずれも新築時の耐用年数を決めるルールですが、不動産投資での実務では、中古の収益物件を購入するケースが多いはず。
では、中古の収益物件では、どのように耐用年数を決定するのでしょうか。
国税庁のホームページによれば、中古の収益物件を取得した場合、新築時の耐用年数(法定耐用年数)ではなく、その収益物件の使用可能期間を見積もる年数を使用することを原則とする記載があります。
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<中古資産の耐用年数> ※国税庁ホームページより抜粋
中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。
・・・(中略)
また、使用可能期間の見積りが困難であるときは、次の簡便法により算定した年数によることができます。
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中古の収益物件では、まさに耐用年数の本来の意味どおり、個別に年数を見積もるべし、という主旨とされています。
新築と比べても、中古は購入時点までの使用方法・メンテナンス方法などによって、同じ構造・用途であっても、残りの「家賃収入を得られるであろう年数」には一際大きな差異が生じる可能性がありますから、その点が反映されたのかもしれません。
しかし、不動産投資の実務では、「税務指摘リスクの回避」「見積りの手間・コストが大きい」ことなどから「使用可能期間の見積りは困難」として、以下の簡便法による計算を行うケースが多いようです。(但し、簡便法が使えないケースもあります。
詳しくは国税庁のホームページ等を参照ください)
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<簡便法の計算> ※国税庁ホームページより抜粋
(1) 法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20%に相当する年数
(2) 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数
なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
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いかがでしたでしょうか。
「耐用年数」と聞くと、条件反射で「鉄筋は47年!」と考える不動産投資家さんも多いのですが、背景にはこうした事情があったりします。
知っていれば税務署や税理士さんに相談しながら見積り法を検討する選択肢が増えるかもしれませんし、そうでなくともトリビアとして面白い話かと思います。
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