資産運用
これから不動産投資を始めようと思う方が心配する点として、空室リスクは筆頭候補の一つかと思います。
・もし、空室になったまま次の入居者が入らなかったら???
・もし、長期間空室が続いて、金融機関への返済が滞ってしまったら???
そうしたリスクを定量化して評価するため、一般には「空室率(または入居率)」といった指標を使ってシミュレーションをすることになります。
本稿では、この「空室率」について、特に不動産投資初心者の方が注意すべきポイントについてご説明していきます。
不動産投資における「空室率」とは、どのように計算するのでしょうか。
一般的には、対象エリア内または所有物件を分母に、調査時点での空室戸数を分子にして空室率を計算します。
たとえば、対象エリア内に200.戸の賃貸物件があり、そのうち5戸が空室だったとすれば、空室率は2.5%(5戸÷200戸)ということになります。
ところが、空室率の計算式に明確な定義はありません。
調査機関の目的や書籍・記事の執筆者の意向によって、不動産投資で一般に使う空室率とは異なる計算式で算出されることもあります。
たとえば、「東京の空室率が●●%(数十%という高い数値)を超えた!」といった話題を目にした方は多いかと思います。
ネットニュースなどでも不定期に記事が掲載されており、ときにはギョッとする数字が踊っていたりもしますが、こうした記事での空室率は、対象エリアを絞っていたり、空室率の分母を「空室のある物件」に絞って計算したりするケースもあります。
慌てずに、その数字の根拠を確認してみるべきでしょう。
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冒頭に記載したとおり、不動産投資初心者の方にとって、購入検討中の収益物件の空室率をどの程度見込んでおくべきか、シミュレーションするうえで非常に気になるポイントかと思います。
そうした不安に応える形で、収益物件を中心に扱う管理会社には、自社ホームページなどで空室率(あるいは入居率)の直近実績を公開している会社が増えています。
そのエリアを営業範囲とする管理会社が公表する空室率であれば、購入検討の参考になるでしょうし、A社は1%、B社は5%、C社は10%・・・と複数の管理会社が数字を公表していれば、各社のリーシング(客付け)力の比較材料にもなりそうです。
しかし、管理会社の公表する空室率には要注意です。
先ほど、空室率の計算式に明確な定義はないとご説明しましたが、収益物件を中心に扱う管理会社では、「管理戸数を分母、調査時点での管理物件の空室戸数を分子」とする不動産投資の一般的な計算式でほぼ統一されています。
ここまでは良いのですが、実は「空室」の定義が、管理会社によって必ずしも統一されていないのです。
不動産投資家の感覚としては、「空室=家賃が貰えない」ですから、「②前入居者の退去」から「⑤新規入居者の入居開始」までの期間はすべて空室と考えたいところです。(もし、フリーレントなどの条件があれば、フリーレント終了日までは実質的に空室と同義ですね)
しかし、管理会社のなかには、「②前入居者の退去」から「④新規入居者の申し込み・成約」までを空室と定義するケースや、「③原状回復工事完了」から「⑤新規入居者の入居開始」までを空室と定義するケースもあります。
さらに、その管理会社が独自に定める免責期間(1ヵ月程度)は、空室率の計算から除外するようなケースもあります。
したがって、管理会社の公表する空室率を購入検討の参考とするには、少なくとも空室の定義を投資家目線に補正しなければなりません。
同様に、各社のリーシング(客付け)力を比較するには、数値を全て同じ基準で補正しないと分かりません。(もっとも、空室率に関する詳細は公開されていないことも多く、現実的にはインターネット上の情報だけでの補正計算は困難なことが多いかもしれません)
もう1つ、空室率に関連して注意すべきは、「どのように」空室を埋めた結果による数字なのかということです。
賃貸運営において、空室を埋める効果がもっとも高いのは「家賃の値下げ」であることは別の記事でもご紹介しましたね。
ほかにも、「過剰な広告料の支払い」「必要以上のフリーレントの設定」など、リスクの高い劇薬のような空室を埋める手段はいくつかあります。
たとえば相場よりも低い家賃で募集することが常態化している管理会社だとすれば、補正計算後の空室率が低かったとしても、それをそのまま参考にはできませんよね。
その管理会社は、「どのうように」空室を埋める方針を採っているのか、必ずチェックしたうえで数字を評価しなければなりません。
そして、この2つの注意点をクリアしたうえで、是非とも不動産投資初心者の方に留意いただきたいポイントが、さらに2つあります。
次稿の「後編」にて詳しく説明していきたいと思います。
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