資産運用
2021年7月から開催予定の東京オリンピックを控え、本来なら民泊事業は最高潮の盛り上がりを見せているはずでした。
ところが世界中を混乱に巻き込んだコロナウイルスはいまだ終焉の兆しがなく、外国人観光客の受け入れはほぼ絶望的な状況です。それにともない国内民泊事業の業績は大きく下落しており、廃業者の数も増加の一途をたどっています。
しかしだからといって、日本の民泊事業に希望がないわけではありません。非常に厳しい状況に置かれながらも、ピンチをチャンスと捉え、新しい形の民泊事業に移行する動きが活性化しつつあるからです。
Real Mediaでは、これから6回に渡り、民泊事業の現状と対策について、こまかく分析していきます。現在民泊事業に携わっている、あるいはこれから参入を予定している人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
悪化した民泊事業の将来を考えるならば、まずは業績が好調だったときと現状を、しっかりと比較しておく必要があります。
コロナの影響がはじまる前のホテルや旅館などの宿泊者数は、左図のように、大きな問題もなく順調に推移していました。また国内民泊事業の成長も著しく、2015年を基準にすると、わずか5年でおよそ15倍も伸びると予測されていたのです。(右図SPIKE統計による)
ところがコロナの影響により、状況は一変しました。
たとえば2019年10〜11月の宿泊実績※1を見ると、宿泊者の合計は314,717人です。うち海外からの宿泊客は21万人を超え、全体の68.6%も占めています。
これが1年後の2020年10〜11月期※2になると、合計宿泊者数は101,390 人と前年の約32%にまで下落。さらに海外の観光客にいたっては、わずか6,556人しかおらず、全体の6.6%に留まっています。
もちろん月によって変動はありますが、こうやって数字を冷静に比較すると、順風満帆だった民泊事業がコロナにより一気に下降してしまった状況がよくわかるはずです。
※1:住宅宿泊事業の宿泊実績について(令和元年10−11月分)
※2:住宅宿泊事業の宿泊実績について(令和2年10−11月分)
※参考:届出住宅数等の推移
2018年の民泊新法の施行以来、要件を満たし届け出さえすれば誰でも民泊事業をおこなえるようになりました。届出数は毎年着実に増加していて、上図のとおり、コロナの渦中でも届出数の増加傾向は変わっていません。
2020年3月の時点で、2018年届出初月の約13倍もの届出が出されている状況をみる限り、コロナであっても民泊事業に可能性を感じている事業者の多さがよくわかります。
実際2019年の観光庁調査では、収益の悪化を理由に廃業をした事業者は、7.2%しかいませんでした。つまり、参入した事業者の多くは、堅実に利益を出し続けていたわけです。
ところが翌年2020年11月の観光庁調査になると、「収益が見込めないから」という理由により廃業した事業者が、じつに7倍近くまで膨れ上がっています。(全体の49.1%)
しかもこれは廃業理由の確認が取れた289件だけの話であり、全体では7,292件も廃業していますから、実際には7倍どころではない数字になるはずです。
これまで順調だったのが、わずか1年の間に廃業へと追い込まれてしまう。あらためてコロナの影響の大きさを感じずにはいられません。
廃業届が増加した理由を見ていくと、前述のとおり、「収益が見込めないから」が全体の49.1%を占め、第1位となっています。
ここで注目したいのは、第2位「旅館業または特区民泊へ転用するため」です。前年の57.8%(廃業理由の第1位)から大幅に減少はしたものの、廃業ではなく用途変換で生き残りを図ろうとする事業者が18%もいることがわかりました。
廃業理由の第2位に該当する事業者も、収益が見込めないのは廃業を選んだ事業者と同じはず。「用途変更で本当に収益の改善ができるのか」これから民泊事業に参入を検討している人にとって、どうして用途変更を選んだのかが興味のあるところだと思います。
用途転換で収益化を図る取り組みについては、第4回・第5回目の記事で、詳しく紹介していく予定です。
第1回目となる今回は、民泊事業を取り巻く現在の状況について解説してきました。宿泊客が激減し、廃業届の件数が増加している厳しい現状をしっかりとご理解いただけたと思います。
しかし決して絶望的な状況ではなく、実際に用途転換などで新しい民泊の形を創り上げようとしている事業者も少なくありません。そういった動きについては、また別な回で詳しくご紹介していきます。
次回は、2018年に施行された民泊新法に焦点を当てて、民泊事業がその将来性にどのような影響を与えているのかを詳しく解説していきます。
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