資産運用
近年、テレビや雑誌などのメディアで、「リノベーション」という言葉をよく見かけます。
不動産投資をしていると、入居者様の退去都度に原状回復工事を行うことになりますが、私自身の経験でも「今回は、リフォームではなく、リノベーションをご検討されませんか?」と提案を受けることがあります。
実需(自己居住用)物件だけでなく、収益物件に対してもリノベーションを検討する方が増えているようです。
ところで、そもそも「リノベーション」とはなんでしょうか?リフォームとはなにが違うのでしょうか?
本稿では、リフォームとリノベーションの違いを整理しながら、不動産投資におけるリノベーションの効果や注意点についてご説明していきます。
最初にお断りしますが、「リフォーム」「リノベーション」といった用語には法令等による明確な定義はありません。
しかし、実務上は概ね以下のようなイメージで使用されることが多いようです。
リフォームとは、一般に建物・室内の汚破損を交換・補修し、元の状態に戻す工事を指します。
たとえば、同等クロスへの貼り替えや床材・設備機械の交換・補修などは、リフォームの範疇とされることが多いようです。
不動産投資家としては、入居者様が退居した後の原状回復工事のイメージと考えておけばよいでしょう。
リノベーションとは、一般にリフォームよりも大掛かりな工事を行い、建物・室内の機能性や価値の向上を目的とする工事を指します。
たとえば、機能性・デザイン性の高い内装に変更したり、水回り設備を新型でグレードの高いものに交換したり、和室を洋室に変更したり・・・といった工事などは、リノベーションと呼ぶことが多いようです。(内装を解体して全てを作り替える規模の工事には、「フルリノベーション」「スケルトンリノベーション」とさらに区別して呼ぶこともあります)
リノベーションは、実需(自己居住用)物件でも、不動産投資での収益物件でも、どちらでも活用されています。
近年脚光を浴びた例としては、なんといっても『晴海フラッグ』でしょう。
ご存じの方も多いかもしれませんが、『晴海フラッグ』は、東京オリンピックで選手村として使用予定の建物を転用し、オリンピック開催後に一般分譲する計画の大規模マンション及びその周辺施設の総称です。
当然ながら、選手村の内装・設備のままではなく、建物の内側を解体したうえで最新の内装・設備に仕上げて販売されるそうです。
特大規模の実質的な「フルリノベーション」「スケルトンリノベーション」物件といえるでしょう。
『晴海フラッグ』以外でもリノベーション市場は活況のようで、近年では、工事だけでなくリノベーション向けの中古物件探しからサポートしてくれるサービスを展開する事業者も増えてきました。
特に、実需(自己居住用)で、物件の所在エリアや立地に拘りがある方にとっては、新築物件はどうしても選択肢が限られてしまいますし、販売価格も相対的に高額です。
納得のいく立地の中古物件を厳選し、内装・設備を好みに合わせて作り込めるとすれば、新築との価格比較で有力な候補になりえるのでしょう。
ところで、不動産投資家が自身の収益物件にリノベーションを検討する場合、特に注意すべき点があります。
実需(自己居住用)物件では、「住みやすさ」「満足感」などの定性的・主観的な要素がリノベーションの成否に大きく影響します。
しかし、不動産投資の収益物件では、「費用対効果」「回収期間」といった定量的・客観的な要素で、リノベーションの成否を評価すべきです。
不動産投資では、以下4つの効果が考えられます。
この4つの効果を数値化してシミュレーションすることで、「リノベーションするべきか」「いくらまで費用を投下すべきか」の判断材料となります。
但し、実務上は①~④の全ての効果が揃うというよりも、いずれかの効果が発生すると考えた方が無難です。
たとえば、家賃5万円の収益物件があったとします。
リノベーションにより商品価値を上げたことで「①家賃の値上げ」を行い、家賃6万円で募集をかけるとすれば、「②空室期間の短縮」「③入居期間の長期化」への期待効果は小さくなります。
商品価値が上がった分を家賃に転嫁すれば、競合物件も一段上の商品価値を持つ物件となるからです。
その一方、家賃が上がれば、「④売却査定価格の増額」の効果は期待できるでしょう。売却価格の査定には、現況家賃も参考にされるためです。
逆に、「①家賃の値上げ」を行わなければ、同家賃帯の競合物件と差別化できることで「②空室期間の短縮」「③入居期間の長期化」は期待できる一方、「④売却査定価格の増額」への効果は小さくなるでしょう。
あるいは、「①家賃の値上げ」を半分にして5.5万円で募集をかければ、②~④の効果が少しずつ得られる反面、トータルでは中途半端な結果になる可能性もあります。
前述したリノベーションの効果は、収益物件の立地や特徴により様々です。
「家賃はいくら上げられるのか」「空室期間はどのくらい短縮できるのか」・・・などを数値化して複数パターンを比較検討することで、その収益物件における最適な戦略が分かってきます。
たとえば、ある収益物件について、周囲に低家賃帯の競合が少なく、高家賃帯の競合物件が多い事情があれば、リノベーションをしても「①家賃の値上げ」を敢えて狙わない戦略もあるかもしれません。
その場合、家賃は現況のままの前提で「②空室期間の短縮」「③入居期間の長期化」「売却査定価格の増額」の効果を計算することで、リノベーションに投下できる上限金額や損益分岐点の目安が見えてくることでしょう。
少し厳しい言い方をすれば、リノベーションをすれば工事会社は確実に儲かりますが、不動産投資家も儲かるとは限りません。
「どこで」「どうやって」「いつまでに」投下した費用を回収するのか、しっかりシミュレーションしたうえで判断するようにしましょう。
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