資産運用
たとえば、個人の不動産投資家が、ある収益物件を2,500万円で購入し、3年後に3,000万円で売却するとしましょう。
購入価格より高く売れることは大変喜ばしいのですが、実際に不動産投資家の手元に残るお金(=売却による利益)は、「3,000万円-2,500万円=500万円」というわけではありません。
不動産売買では、法令の定めや業界の商慣習により、ほぼ必ず発生する費用・税金があるからです。
そして、往々にしてこれら費用・税金は高額になりがちで、「知らなかった」「誤解していた」では取り返しのつかない損失を被る恐れがあります。
「購入金額よりも高く売れたのに、手残りはマイナス」という事態も起こりえてしまうのです。
不動産投資では、売却による利益確定は避けては通れない重要なポイントです。
本稿では、不動産売買において、特に金額が大きい費用や誤解されがちな税金を中心に分かりやすくご説明しますので、是非、注意点をしっかり押さえておくようにしてください。
収益物件を売却すると、その売買取引と同時に発生する費用・税金があります。
代表的なものは以下のとおりです。
売却に際して不動産業者と媒介契約を締結した場合、その成功報酬として仲介手数料が発生します。
収益物件の購入時と同様、仲介手数料には法令による上限の取り決めがあるのみで、取引ごとの金額は任意の建て前ではありますが、業界の商慣習として上限金額目一杯での支払いが原則となっています。
上限金額は、売却金額が400万円超の場合、「(売買金額×3%+6万円)+消費税」です。
たとえば、3,000万円で売却したとすれば、(3,000万円×3%+6万円)×1.1=105.6万円の仲介手数料が発生することになります。
収益物件の売買契約書や領収書には印紙税が発生します。
印紙税の額は取引金額により変動しますが、たとえば売却金額が3,000万円の場合、売買契約書の印紙税は10,000円です。(軽減措置を含む)
なお、取引金額ごとの金額は、国税庁のホームページで確認できます。
取引金額が大きいほど印紙税の額も上がりますので、事前に確認しておくようにしましょう。
収益物件購入時に金融機関から融資を引いていた場合、一般に抵当権が設定されますが、売却時にはこれを抹消することになります。
抵当権抹消の登記費用のほか、登記を司法書士に依頼する場合には司法書士報酬が発生します。
また、売却時に金融機関への残債があればこれを一括返済することになりますが、金融機関によっては、繰上げ返済手数料や短期返済の違約金などを設定していますので、この支払いに纏まった金額が必要となる場合があります。
売却時の契約条件によっては、室内残置物の処分代やクリーニング費用、入居者の立ち退き費用などが発生することがあります。
前述した収益物件売却と同時にかかる費用・税金には要注意ですが、それ以上に最大限に注意すべきは、収益物件の売却後に生じる税金です。
不動産投資家が個人の場合(法人ではない場合)、収益物件を売却して儲かった場合、その「利益」に対して高税率の所得税・住民税が課税されることは、ご存じの方が多いと思います。
しかし、ここで特に注意すべき2つのポイントがあります。
1つ目は、売却の「利益」に対する税金は非常に高税率であるという点です。
具体的な税率は以下のとおりですが、特に所有期間が5年未満の場合、実に「利益」の約40%が課税されてしまうことになります。
2つ目は、収益物件売却時の「利益」とは、「売却金額と購入金額の差分」ではなく、「売却金額と売却時点の簿価(帳簿上の価値)」を基準に計算される点です。
これは実際に不動産投資をやっていて確定申告を終えていないとピンと来ないかもしれませんが、収益物件を購入すると、毎年の確定申告で、建物や設備に関する減価償却費を計上することになります。
そして、確定申告で計上してきた減価償却費の分だけ、売却時点の簿価は下がっているのです。
※減価償却費については、別の記事で詳しくご説明していますので、こちらもご参照ください。
では、実際に売却の「利益」に対する税金がどのくらいになるのか、試算してみましょう。
今回は論点を明確にするため、購入時・売却時の諸費用は考慮しない前提とします。
この試算前提では、実際の値上がり500万円に対して、実に400万円もの税金が課される結果となりました。
自己所有物件の売却時には、こうした高額な税負担を回避するための様々な軽減措置がありますが、収益物件の売却では基本的にそれらは利用できません。
不動産投資で着実に「利益」を残すには、こうした費用や税金面にも注意を向ける必要があるということですね。
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