資産運用
2018年に施行された「民泊新法」の厳しい規制を受け、まず資本力のない個人や中小事業者が数多く撤退しました。さらに新型コロナウイルスの影響により、民泊事業者は現在進行形でダメージを受けています。
第1回目の記事でもお伝えしたように、新型コロナウイルスで収益が見込めなくなり廃業した事業者は、前年の7倍(2020年11月時点)にも激増しているのが現実です。
しかしこの苦しい期間こそ、これまでと違った戦略にシフトする大きなチャンスでもあります。第5回目となる今回は、これからの日本ではどういった方法で民泊事業に取り組めばいいのか、その新たな方向性について解説していきます。
※参考:宿泊旅行統計調査 (令和2年・年間値(速報値)) 1 -年別・延べ宿泊
具体的な方法を見ていく前に、まずは「これまで民泊の主流だった外国人観光客が激減している」という事実を、しっかりと押さえておく必要があります。
実際、外国人観光客がどれくらい減少しているかを調べてみました。
観光庁の発表によれば、2019年の外国人延べ宿泊数は「1億1,566万人泊」と、過去最高値を記録しています。これは、ラグビーワールドカップの日本開催が主な理由でしょう。
しかし2020年になるとコロナウイルスの影響が大きくなり、日本を訪問した外国人観光客は、わずか「1,803万人泊」でした。上図のとおり、じつに前年比−84.4%もの大幅ダウンです。
つまりこれから日本の民泊事業は、外国人観光客から日本人向けの民泊に、大きくシフトチェンジしなければならないのです。その具体的な方法として、大きく以下の2パターンが考えられます。
それではひとつずつ見ていきましょう。
日本人を民泊施設に呼び込む方法を考えた場合、一般的な観光客をターゲットにするのは、正直かなり厳しいでしょう。
観光地や都心部の好立地物件を確保できるなら別ですが、多くの民泊施設はそういった場所から離れたごく一般的な立地にあるからです。
しかし取り立てて特徴のない立地条件でも、そこでしか体験できない「体験型宿泊所」にすれば、可能性は大きく広がります。
たとえば、田舎の一軒家で民泊をおこなうなら、「田植えや農作業体験のできる民泊施設」はどうでしょうか。海ならば、船に乗って漁が体験できる民泊もよいかもしれません。
また地方へ移住したい人を対象に、「お試し居住空間」としてアプローチするのも、ひとつのやり方でしょう。
いきなり移住するのは怖いという人のために、地方暮らしのサポートをしてあげれば、週単位・月単位での宿泊が見込めます。場合によっては、宮崎県の新富町※のように、地方自治体のサポートも期待できるかもしれません。
ここに挙げたのはあくまでも1例でしかありませんが、付加価値をつけて差別化する意識を、これからは常に頭へ入れておくべきです。
もうひとつの戦略は、民泊業界の世界的トレンドに合わせて、新たな需要を掘り起こしていく方法です。
民泊仲介業者最大手「Airbnb」は、2021年の宿泊トレンド※1について、以下の3点を挙げています。
コロナウイルスの影響が収まらないうちは、人と接触する機会の多い「ホテル」「旅館」「タウンハウス」は、どうしても敬遠されるでしょう。となれば、必然的に接触の少ない「1棟貸し」の需要が増加します。
また同様の理由で、海外旅行のニーズは、大きく低下したままの状態が続くはずです。その代わり、接触の少ない安全な1棟貸し民泊を活用して、家族や友人と小さな交流を楽しむ動きが活発化するでしょう。
ワーキングスペースについてですが、Airbnbの調査によると、回答者の83%がリモートワークの一環として転居してもよいと考えているそうです。
日本の場合、これまでリモートワーク(テレワーク)は、ほとんど普及していませんでした。
しかしコロナウイルスの影響により、2019年度東京のリモートワーク普及率は、19.2%から62.7%※2まで急激にアップしています。
この調査結果はあくまでも東京に限定されたものですが、多くの人がリモートワークでも仕事の大部分に対応できると、実感しているのではないでしょうか。
ということで、日本でも好きな場所に移動してリモートワークする人が、これから増えていくはずです。ぜひこういった流れを、上手に民泊に活用していただきたいと思います。
※1:How Airbnb and Travelers are Redefining Travel in 2021
これまでと同じ意識のままで民泊事業を続けるならば、経営状況が改善されることはほぼ期待できないでしょう。
それだけ民泊を取り巻く環境が、コロナウイルスの猛威により大きく悪化したということです。
前の記事でも触れたように、国内需要をメインに動いているアメリカの民泊動向を、日本は徹底的に真似すべきです。
今回紹介した3つの新しいトレンドを軸に、ぜひ新しい顧客層を開拓していきましょう。そうすれば、民泊事業は必ず生き残っていけるはずです
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