資産運用
不動産投資の成否に大きく影響する金融機関からの融資について、前稿では、金融機関の規模による特徴をご説明しました。
【前稿】不動産投資 融資に関する基礎知識① ~金融機関の規模による特徴~
本稿では、その続きとして金融機関が融資の際にチェックする事項、審査基準の基本についてご説明していきます。
当然ながら、具体的な審査基準は各金融機関によって異なりますが、収益物件の融資可否はどういったところに着目して判断されるのか、そうした基礎知識があるのとないのとでは、融資を引き出す成功率は違ってくるはずです。
是非、「自分は金融機関にどう見られているのだろうか?」とイメージしながら、読み進めていただければと思います。
まず、不動産投資家が金融機関に相談する際、アパートローンや提携ローンといった収益物件用の融資を打診するのか、広く事業資金全般に対するプロパーローンの融資を打診するのか、という分岐があります。
アパートローン・提携ローンとプロパーローンの詳しい比較はここでは割愛しますが、一般に収益物件に特化したアパートローン・提携ローンの方が、プロパーローンよりも審査は早く緩く、その分金利などの融資条件は厳しい傾向があります。
本稿でのご説明は、特別な記載がない場合、アパートローン・提携ローンに対するものとご理解ください。
では、まずは収益物件向けの融資と、住宅ローンの融資は全く違うという点に触れておきます。
不動産投資のご相談をお受けしていると、「自分は大企業の役員・役職者で、高額な住宅ローンを低金利で借りることができた。だから不動産投資でも好条件で借りられるに違いない!」と考えていらっしゃる方が少なくないからです。
しかし、この考え方はちょっと危険と言わざるを得ません。
住宅ローンは、原則としてご本人やそのご家族が住むであろう「自宅」の購入資金に対する融資です。
「自宅」に収益性の観点はなく、基本的にはご自身の資産と本業からの収入が返済原資となりますので、住宅ローンの審査基準は「資産状況(預貯金・借金など)」「本業の職業・年収」、そして「完済時の年齢・健康状況」などが主たる審査項目となります。
そのため、一般のサラリーマン・公務員の方であっても、本業の年収が高かったり、十分な預貯金があったりすれば、比較的簡単に好条件での融資を受けることができたというわけです。
その一方、収益物件向けの融資は、原則としてその収益物件が稼ぐであろう「利益」が主たる返済原資となります。
そのため、その収益物件の収益性が、融資金額や毎月の返済額に対して十分であるかが問われることになります。
そしてこの評価は、金融機関が独自に定めるストレスをかけたリスクシナリオベースで判断されるケースが多く、たとえば空室率や経費率などは、過去実績や投資家目線での将来予測よりもかなり厳しいパラメータで計算されることが珍しくありません。
収益物件向けの詳しい審査基準は後述しますが、住宅ローンのように、本業の職業・年収等がよいだけでは必ずしも高評価に繋がらないことを、まずはしっかり理解しておく必要があります。
では、収益物件向けの融資では、金融機関はどのような基準で融資可否を判断しているのでしょうか?
ほとんどの金融機関で共通する主要な審査基準は、一般に以下の項目とされています。
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<収益物件向けの融資での審査基準>
①収益物件の収益性
②収益物件の担保価値
③本人の資産状況など(住宅ローンと類似した項目)
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①は先ほども記載しましたが、もう少し詳しくいえば、融資対象となる収益物件が「いつまでに」「いくら」を稼ぐことができるのかという点です。
基本的に「いつまでに」は法定耐用年数以内、「いくら」は空室率や経費率に一定のストレスをかけたパラメータで計算した毎月の利益を前提に判断されます。(具体的な基準は金融機関により異なります)
不動産投資の現実としては、しっかりメンテナンスをしていれば法定耐用年数を大きく超えても高稼働を維持する事例はたくさんありますし、空室率・経費率なども投資家の工夫やテクニックによって大幅な改善が期待できる部分ではあるのですが、残念ながらそうした個別事情をくみ取って審査してくれる金融機関は少ないようです。(個別事情については、むしろプロパーローンの方がくみ取ってもらいやすいでしょう)
②は、万一返済が滞った場合を想定して、その収益物件を売却(場合によっては任意売却や競売も想定)することにより、融資した残債が回収できるのかという点です。
その担保価値は、収益物件の売買相場ではなく、積算価値を基準に判断する金融機関が多いようです。
具体的な計算式は金融機関により異なりますが、多くの場合、積算価値は売買相場よりも低く計算されてしまうため、融資を受けたい不動産投資家にとっては厳しい部分の一つとなっています。
③は、住宅ローンと同様です。
前述した①②を金融機関の基準で計算すると、その収益物件の過去実績や適切に賃貸運営する前提での将来予測と比べて、かなり厳しい結果となることが少なくありません。
そこで、本人の資産状況や年収等も審査に加えて、基準に対する不足分を補って審査してもらえることがあるというわけです。(一部の提携ローンでは、年収が足切りラインとして設定されていることもあるようです)
但し、このパターンで融資を引くということは、ご自身や本業の信用力を切り売りしているような状態ですから、融資額との不足が大きい場合や、繰り返し融資を受けたいような場合には、特に注意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
金融機関は不動産投資のプロではありませんし、ましてやアパートローン・提携ローンともなれば、審査効率の観点からある程度枠にはめた審査をせざるを得ない事情があります。
不動産投資家としては、もどかしい思いをすることもあるでしょうが、こうした審査基準で評価されていることを予め理解し、金融機関から安心して融資してもらえる投資家を目指す心構えは、忘れないようにしたいものです。
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