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賃貸物件を探す際、「少しでも安い家賃の部屋を探したい」「同じ家賃ならもっと条件の良い部屋を探したい」と思う方も多いですよね。
また、そうした目線で賃貸物件を探しているときに「定期借家」「定期借家契約」といった記載のある物件を見つけたことがあるかもしれません。
「定期借家契約」とは、文字通りその賃貸物件を借りる期間をあらかじめ定めておくタイプの借家契約のことです。
通常の借家契約(普通借家契約)に比べて、更新ができない点などリスク面が強調されて説明されることが少なくありません。
しかし「定期借家契約」は特徴を理解したうえで活用すれば、大家と入居者の双方にメリットのある契約といえます。
そこで今回の記事では「定期借家契約」の概要を始め、定期借家契約のメリット・デメリット(リスク)についてまとめてみました。
ここではまず定期借家契約の生い立ちと、普通借家契約との違いについて見ていきましょう。
従来、建物の賃貸借契約は「普通借家契約」のみが定められていました。
普通借家契約では入居者の権利が強く保護されており、以下の決まりからもそのことが伺い知れます。
・契約期間を1年以上としなければならない(1年未満の契約は期間の定めのない契約とする)
・正当な事由がない限り賃貸借契約の更新は拒むことができない
これらの決まりは転勤などによる一時的な空き家や建て替えを控えた空き家などについて、オーナーが賃貸募集をするうえで大きな足かせとなっていました。
もともとは入居者の権利を守るために定められた法律でしたが、結果としてオーナーの賃貸募集にブレーキをかけてしまい、優良な賃貸物件が市場に供給されない事態を招いてしまいます。
そこで、事態を改善しようと2000年に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」による借地借家法の一部改正がなされ、「定期借家契約」が誕生しました。
普通借家契約は借主が希望すれば原則として契約更新がなされ、貸主(オーナー)も正当な理由がない限りは更新を拒否できませんでした。
対する定期借家契約は、契約で定めた期間が満了した時点で契約も終了します。
それぞれの相違点を表にまとめてみました。
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・2000年3月1日以前は20年 ・2000年3月1日以降の契約は制限なし |
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契約期間は自由 | ||||||
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とはいえ、定期借家契約は一般の方にほとんど認知も、利用もされていないのが現状です。
令和4年に国土交通省が公表した「住宅市場動向調査報告書」によると、定期借家契約を知っている人(「名前だけは知っている」を除く)は15.1%にすぎず、利用者の割合も1.9%にとどまっています。
あまり認知されていない定期借家契約ですが、入居者にとって以下3つのメリットがあります。
・本来は賃貸市場に出ないような物件を借りられる
・相場よりも安い家賃・初期費用で借りられる
・近隣住民のトラブルのリスクが限定される
さっそく見ていきましょう。
定期借家契約の特徴は、一見すると入居者の権利軽視にも見えるかもしれません。
しかし、より高い目線で見れば入居者にとっても優良な賃貸物件が市場に供給される(少なくとも、賃貸物件の選択肢が増える)というメリットがあります。
特に、転勤等を理由とした賃貸募集であれば、いわゆる「分譲仕様」の豪華な内装・設備の部屋が、賃貸に出回ることもあるでしょう。
定期借家契約は入居者が見つかりやすいよう、家賃相場が周辺より低く設定されているケースも少なくありません。
また、家賃や初期費用についても条件交渉の余地が大きいともいえるでしょう。
とはいえ家賃が安いからといって、建物や設備自体が劣っているわけではありません。
中には設備の整った物件もあることから、じっくりと探してみることをおすすめします。
普通借家契約では入居者の権利がかなり手厚く保護されています。
そのため、少々の家賃滞納や近隣トラブルがあったくらいでは、オーナーは不良入居者を強制退去させることができません。
よって普通借家契約の場合、不良入居者が更新を繰り返して半永久的にその部屋を占拠し続ける可能性もゼロではないでしょう。
しかし、定期借家契約であれば、少なくとも契約満了時の退去は約束されています。
借りた部屋の上下階や隣人に、騒音などのトラブルを起こすような不良入居者がいた場合、入居者にとっても一定のリスクヘッジとなるでしょう。
ただし、このメリットは、マンション・アパートの一棟全てを同じオーナーが所有するケースでないと発揮されません。
借りた部屋だけが定期借家契約であれば、不良入居者は更新を繰り返してしまう可能性は残ってしまうことに注意が必要です。
定期借家契約のメリットについて確認したところで、デメリットについても確認していきましょう。
定期借家契約は期間を定める契約であるため、入居者側からの途中解約には一定の制限が生じます。
とはいえ、「200平方メートル以下の居住用借家で転勤・療養・介護その他のやむを得ない事情ある場合」には、途中解約が可能です。
そのため、一般の方が期間限定で居住用の部屋を借りる場合において実質的な影響は限定的といえるでしょう。
定期借家契約の最大のデメリットはなんといっても契約更新がないことです。
たとえば借りた当初は3年間で部屋を出るつもりが、住んでいる間に事情が変わって引越しをしたくないとなっても、契約が3年間であれば部屋を退去しなければなりません。
こうした不確定要素が大きい場合、定期借家契約には慎重になるべきでしょう。
ただし、定期借家契約において更新は認められませんが、オーナーと入居者双方の合意があれば「再契約」が可能です。
昨今では、入居者さんが問題を起こさないことを確認するためにあえて定期借家契約とするオーナーも増えています。
また、そのような場合において、賃料滞納などの契約違反や近隣トラブルなどがなければ原則、再契約を考えているオーナーも少なくありません。
入居者にとっても、定期借家契約のメリットを享受しつつ、更新できないデメリットも回避できる可能性があり、考え方によっては「お得」な賃貸物件になることもあるでしょう。
メリットとデメリットを踏まえた上で、定期借家契約に向いている人や状況は以下のようなケースといえます。
・短期間だけ住みたい人
・家賃や初期費用をなるべく抑えたい人
・転勤などで引っ越しの頻度が多い人
一人暮らしで身動きが取りやすい人
定期借家契約はコストをおさえて、比較的条件のよい物件に住むことができます。
中には契約期間が1年未満と設定されているケースもあり、そうした点に注意は必要ですが、短期間に住む物件を探している人には向いている契約方法といえるでしょう。
また、一人暮らしや単身赴任などで荷物が少ない人、移動の負担が少ない人にも定期借家契約はおすすめです。
定期借家物件を借りるときの注意点を3つ解説します。
定期借家契約は契約期間に定めのある契約となっており、契約が満了したら期日までに退去しなければなりません。
契約期間が1年以上の場合、期間が満了する1年前から6ヶ月前に通知がくるため、通知を確認したら事前に退去に向けた準備を始めるようにしましょう。
契約した後も居座り続けると、不法占拠とみなされてしまいます。
最悪の場合、損害賠償を請求されることから注意が必要です。
定期借家契約は取り壊しや、リノベーションが決まっている物件に対して用いられることも珍しくありません。
そのような場合、仮に設備などに不具合が見つかったとしても対応してもらえないケースがあることをあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
借りようとしている物件が定期借家契約を採用しているのであれば、借りる前に必ず内見を済ませておくことはもちろん、室内や建物の状況・状態も欠かさずにチェックしておくことが大切です。
定期借家契約は原則として中途解約ができません。
契約期間を残した状態で中途解約をすると違約金を請求される恐れがあります。
この場合の違約金は残りの家賃となるケースがほとんどですが、契約によって異なることから前もって確認しておきましょう。
ただし、先にもお伝えしたように「200平方メートル以下の居住用借家で転勤・療養・介護その他のやむを得ない事情ある場合」には、途中解約可能です。
とはいえ、解約の申し出から実際の解約までは約1ヶ月かかるため、期限に余裕を持たせるようにしましょう。
定期借家契約は締結において明確な要件が存在することから、一見厳しい契約のように感じてしまう方もいるかもしれません。
しかし、定期借家契約を正しく知ることで、少なくとも「入居者側にはデメリットしかない契約」ではないことがわかるでしょう。
定期借家契約は入居者(契約者)の権利を守ることを前提に作られた制度であるため、使いようによっては享受できるメリットが多く存在します。
今回の記事を参考に、定期借家契約の賃貸物件を見つけた際は是非、自身にとってのメリットとデメリットを天秤にかけたうえで判断してみてくださいね。
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