資産運用
マイホームの購入に当たって、住宅ローンを利用している人も多いですよね。
また、ローンを返済する中で収入の増加や子どもの独立、臨時収入などで余裕資金が生じた際、「住宅ローンの繰り上げ返済に充てよう」と考える方も多いかもしれません。
しかし、住宅ローンの繰り上げ返済にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。
今回の記事では果たして本当に繰り上げ返済をすることが有利に働くのかどうか、わかりやすく取り上げてみました。
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済額と別に借入金の一部(または全額)を前倒しで支払うことです。
繰り上げ返済をしたお金はローンの元金部分に充当されるため、その元金に付随する利息に対して支払いがなくなります。
そのため、繰り上げ返済をすることで総返済額を減らせるでしょう。
また、繰り上げ返済は以下の2種類に分けられます。
・期間短縮型
・返済額軽減型
それぞれについて、見ていきましょう。
期間短縮型は、毎月の返済額は変えずに返済期間を短くする方法です。
返済期間が短くなれば、その分利息を支払う期間が短くなります。
そのため、最終的な支払い金利の総額は後述する「返済額軽減型」よりも小さくなるといえるでしょう。
借入金額が大きい場合や金利が高めに設定されている場合に節税効果が高くなる一方、返済額が変わらないことから繰り上げ返済の効果は実感しにくい点がデメリットといえます。
返済額軽減型は、毎月の返済額は減るものの、返済期間は変わらない方法です。
「期間短縮型」に比べ、繰り上げ返済の効果をすぐに実感できます。
ただし、最終的な支払い金利の総額は期間短縮型よりも大きくなることに注意が必要でしょう。
このように、繰り上げ返済をすることで支払金額の総額が減ることは間違いありません。
また、いくら住宅ローンが低金利であるとはいえ、金融機関の預金金利はそれよりもさらに低くなっています。
そのため、預けていたところで利息がほとんど期待できず、それならば繰り上げ返済に資金を回そうという考え方は合理的といえる一面があるでしょう。
しかし、それでも繰り上げ返済をする前に考えてほしいことを3つ、次にお伝えします。
住宅ローンの繰り上げ返済をおすすめしない3つの理由は以下の通りです。
・家計の資金繰りに影響が出る
・住宅ローン控除のが得をする場合がある
・余剰資金は運用に回した方がよい
それぞれについて、見ていきましょう。
昨今の低金利の状況下では、「期間短縮型」「返済額軽減型」のいずれの場合もその効果は限定的です。
一方、繰り上げ返済をすれば当然、手持ちのキャッシュ(余剰資金)は無くなってしまうことに加え、あとから繰り上げ返済を取り消すこともできません。
そのため、それまでコツコツと貯めてきた現金の大半を繰り上げ返済に充てるようなケースは極めて危険です。
繰り上げ返済に充てた直後に何らかの理由でまとまった資金が必要となった場合、資金繰りが苦しくなってしまいます。
手持ち現金が不足した場合、マイカーローンや教育ローンを利用するといった選択肢を考える方もいるかもしれません。
しかし、それらは一般的に住宅ローンよりも高い金利・短い借入期間が設定されていることがほとんどです。
特別好条件の住宅ローンを返済した結果、それよりも劣る条件で借り入れを起こしてしまっては本末転倒ですよね。
出産・育児による配偶者の退職や収入源、家族の介護など、将来的に現金が必要となるケースは少なくありません。
そのため、繰り上げ返済が本当にプラスの効果をもたらすのか考えるようにしましょう。
住宅ローン控除の上限は、「年末の住宅ローン残高(上限4,000万円)の最大1%」です。(適用時期などによる特例等を除く)
それを踏まえた上で、繰り上げ返済をしたことにより住宅ローン控除の上限を割り込んだとしたらどうでしょう。
少なくとも損得勘定だけでいえば、以下2つの天秤になるはずです。
・支払金利の低減効果
・住宅ローン控除の税関還付額の減少効果
近年の住宅ローン金利は1%を大きく割り込むケースも少なくないことから、繰り上げ返済の効果
先にも述べたように、近年の住宅ローンは利用者に有利な条件となっています。
そのことを踏まえると、余剰資金を繰り上げ返済に回すのではなく、資産運用に回すのも一つの手でしょう。
住宅ローンの低金利を踏まえれば、繰り上げ返済による支払い金利の低減効果以上の運用成果を期待することはそれほど難しくありません。
また、換金性の高い資産(上場株式など)を中心に運用すれば、家計の有事や今後の金利上昇に備えられます。
先にお伝えした、「期間短縮型」と「返済額軽減型」でそれぞれ繰り上げ返済をおすすめするケースが異なります。
ここでは、それぞれについてまとめてみました。
期間短縮型をおすすめするケースは次の2つです。
・定年退職までに完済を考えている場合
・老後の資金を少しでも蓄えたいと考えている場合
期間短縮型は、ローン返済のプレッシャーから早期に解放されることが一番のメリットです。
そのため、想定していた退職金が受け取れなくなったことから定年より早く返済したいと考えている場合や、老後の資金を少しでも早いうちから貯めておきたいと考えている方に適した方法だといえるでしょう。
次に、返済額軽減型をおすすめするケースは以下の通りです。
・こどもの養育費を捻出するために月々の負担額を減らしたい場合
・金利が上昇したときに備えたいと考えている場合
返済額軽減型は、とにかく毎月の返済額を少しでも減らしたいといった方におすすめです。
とはいえ、返済期間は変わらないため、場合によっては低金利のローンへの借り換えを検討した方がよいかもしれません。
繰り上げ返済をすると決めた場合でも、必ず以下の3点について事前に確認しておきましょう。
・ある程度の生活資金が手元に残るか
・今後数年間で想定されるライフイベントのお金は確保できているか
・定年退職前にローンの返済はできるか
繰り返しとは鳴りますが、繰り上げ返済をすると手持ち資金が減ってしまうため、急な出費に対応できなくなる恐れが高まります。
そのため、最低3ヶ月分ほどの生活費が手元に残せるかどうかを一つの基準として考えるとよいでしょう。
とはいえ、生活費3ヶ月分は最低限の目安であり、それ以上残しておくにこしたことはありません。
あくまでの繰り上げ返済は「余剰資金」で行うことが大切です
いまよりも金利の低いローンを切り替えることで、利息を軽減するのも一つの手です。
繰り上げ返済よりもコストの面でメリットが多く、数百万円単位でお得になるケースも少なくありません。
ただし、住宅ローンの契約そのものを締結し直す必要があることから、借り換えに当たって若干の手間とコストがかかることを頭に入れておきましょう。
金融機関の店頭窓口や、ネット上で借り換えた場合のシミュレーションができる場合もあるので、検討している際は一度試算してみることをおすすめします。
今回の記事では、住宅ローンの繰り上げ返済についてお伝えしました。
実際のところ、せっかく有利な条件で借入ができた住宅ローンに対し、積極的な繰り上げ返済を考える方はそこまで多くありません。
もちろん、最終的には価値観や損得は人それぞれ異なります。
そのため、「繰り上げ返済はすべきではない!」と断言するつもりはありませんが、安易な気持ちで繰り上げ返済を選択しないように注意しましょう。
家計の資金繰りや住宅ローン控除、資産運用を始める選択肢なども検討した上で、自身にあう最善の方法を見つけてみてください。
この記事が少しでも参考になっていたら、幸いです。
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