節税
取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐために創設された「経営セーフティ共済」。
昨今の副業・起業ブームもあってか、この経営セーフティ共済に関心を持つ方が、近年飛躍的に増えています。
経営セーフティ共済とは、本来、中小企業や個人事業主を対象に取引先の倒産を起因とする連鎖倒産を抑止するための制度です。しかし、掛金と解約のタイミングを上手に工夫すると節税に繋げられるため、節税の有力な手段の一つとして注目を集めつつあります。
そこで、今回の記事では経営セーフティ共済を活用した節税の仕組みと注意点について、分かりやすく解説していきます。
経営セーフティ共済は中小企業倒産防止共済法に基づき昭和53年にスタートし、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している「中小企業倒産防止共済制度」の愛称です。令和3年3月現在の加入企業・事業者は約54万にも達しており、歴史も実績もある共済制度の一つといえるでしょう。
共済に加入することによって貸付制度が受けられるほか、事業所得なら年間で最大480万円(20万円×12ヶ月)が必要経費(法人の場合は損金)になるといった多くのメリットがあります。
経営セーフティ共済の制度主旨は、冒頭にも記載したように、取引先事業者の倒産に伴う売掛金の回収不能等を原因とする連鎖倒産や経営難を防ぐことです。共済加入者は、有事の際には、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできます。
借入額 | 返済期間(6ヶ月の据置期間含む) | ||||
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5年 | ||||
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共済金の借入は無担保・無保証人で受けられます。
共済の契約者は取引先の倒産などがなくとも、臨時で資金が必要となった際は解約手当金の範囲内(解約手当金の95%)で借入可能です。これを一時貸付制度といいます。公庫や保証協会系にも似たような融資制度がありますが、実行が遅くて待てないという場合に役立つ制度といえるでしょう。
経営セーフティ共済の掛け金は月額5,000円から20万円の範囲内で、自由に設定可能です。(5,000円刻み)また、加入後に増額もできるので、無理のない範囲で始めるとよいでしょう。
加入条件は、1年以上継続して事業を営んでいる中小事業者で、かつ「資本金額等」または「従業員数」のいずれかが要件を満たしていれば加入可能です。
なお、業種別の要件は次のようになっています。
業種 |
資本金の額または 出資総額 |
常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、 運輸業その他の業種 |
3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業 |
3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または |
3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 |
200人以下 |
なお、制度の詳細についてより詳しく知りたい方は以下の運営元ホームページをご覧になってください。
参考:【出典】独立行政法人 中小企業基盤整備機構ホームページ
注意点として、金融業者や不動産業者、一般消費者を取引先とする事業者は融資が受けられない恐れがあることが挙げられます。なぜなら、中小企業倒産防止共済制度の融資対象となる債権は「取引先の倒産で回収が困難になった売掛金と前渡金」であり、貸付金や不動産賃貸料などは対象でないからです。
他にも、以下の事例に該当する場合には加入が拒絶されるケースがあります。
・住所や主要事業の変更を頻繁に繰り返しており、継続的な取引状況の把握が困難である
・すでに貸付を受けた共済金や一時貸付金などの償還が滞っている
・中小企業基盤整備機構から返還請求を受けている共済金、一時貸付金、早期償還手当金などの償還が滞っている。
・納付すべき所得税や法人税の滞納が見られる
経営セーフティ共済の概要について把握したところで、経営セーフティ共済を活用した節税の仕組み・効果について見ていきましょう。
経営セーフティ共済は支払った掛金を経費に算入でき、掛金を40か月以上納めていれば、掛金全額が解約手当金として戻るという制度設計です。
通常、取引先の倒産に備えようと思うと運転資金を手厚くしたり、定期預金に預けたりといったリスク回避策を思い浮かべる方も多いかも知れません。しかし、実際手元に残せるお金には限度があるほか、利益を上げるためにお金を回すことを考えると効率の悪さがネックとなります。
経営セーフティ共済であれば、支払った掛け金が経費となることから税負担を軽減できるでしょう。万が一の場合においても、被害額を限度として掛金総額の10倍まで貸付を受けられます。
また、掛金については将来月の分まで含めて前納が可能です。(うち1年以内の部分については支払時の経費として参入可能)そのため利益が多く出た年度について前納を検討してみるのも良いかも知れません。
ただし、注意点として経営セーフティ共済の解約手当金は「課税対象」となります。この点について詳しくお伝えします。
掛金が損金または必要経費に全額算入でき、さらに解約金も非課税であれば最高ですよね。しかし、実際そこまでうまい話はなく、解約金については法人の場合には益金、個人の場合には所得として課税されます。
たとえば、ある中小企業が、経営セーフティ共済の掛金を10年間50万円ずつ支払ったとしましょう。
この場合、毎年50万円ずつ損金計上できますので、50万円に各会計年度の法人税率等を乗じた金額がさしあたっての節税効果です。しかし、10年後に経営セーフティ共済を任意解約して500万円の解約手当金を受け取ると、この500万円に解約年度の法人税率等を乗じた金額が課税されます。
つまり、何も考えずに経営セーフティ共済に加入しても、課税時期を遅らせるだけで節税の効果は発揮されません。経営セーフティ共済の節税の本質は「課税の繰り延べ(先送り)」であって、解約年度の出口戦略、タックスプランニングをセットで考えることで初めて、節税効果が生まれるといえるでしょう。
では、経営セーフティ共済を活用した節税は、どのように行えばよいのでしょうか。
ここでは一般的な活用事例についてご紹介します。
【前提条件】
・掛金は月額5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位)で自由に選択できる
・掛金の増額・減額も可能
まず、掛金は毎月固定金額とするのではなく、たとえば利益の小さい時期は掛金を減額、逆に利益が大きな時期には掛金を増額するなどして、会計年度ごとの利益(課税対象額)を調整することができます。
中小法人の法人税実効税率などは、当該年度の利益額によって変わる(上がる)ことがあるほか、戦略的に手元に資金を残したい時期もあるでしょう。そのため、掛金の範囲内とはいえ利益(≒税額)を調整できることは大きなメリットといえます。
また解約手当金についても、解約時期を支出が大きくなる時期と合わせるケースが多いようです。支出が大きくなるタイミングとして、大型投資を行うタイミングや退職金の支払いが生じるタイミング(法人の場合)などが挙げられます。
このように同一会計年度に大きな支出があれば、解約手当金と相殺して利益を圧縮することで、結果的に納税額を抑えることが可能です。
経営セーフティ共済にはいくつかのメリットがある一方、注意点(デメリット)も存在します。
経営セーフティ共済は加入資格として、継続して1年以上事業を行っている中小事業者であることが条件となっています。そのため、起業して1年が経過するまでは加入できない点に注意が必要です。
共済契約を解約した時点で掛金を12ヶ月以上納めている場合、掛金金額の8割以上が戻るほか、40ヶ月以上納めていれば掛金全額が戻ります。しかし、逆に捉えれば12ヶ月未満の場合は掛け捨てとなるため、その点はデメリットといえるでしょう。
危機時に貸付が受けられ、掛金が損金・必要経費となる経営セーフティ共済。近頃は有効な節税手段のひとつとして、中小企業や個人事業主から積極的に活用されています。興味がある方は一度、顧問税理士などとも相談して、上手に活用する方法を模索してみてもよいかもしれません。
とはいえ、解約手当金を受け取ると益金扱いとなる、掛金納付期間が40ヶ月未満の場合には元本割れするなどの注意点も存在するため、事前にしっかりと概要を理解しておくことが大切です。
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