資産運用
不動産業者のセミナーや本などを読むと、しばしば「不動産投資の最大のリスクは“空室”である!」といった説明がなされています。
たしかに、空室であっても、管理費や固定資産税などの固定費は毎月発生しますし、金融機関から融資を受けて収益物件を購入していた場合、その借入返済は待ってもらえません。
さらには退去時の原状回復費用や、次の入居者を決めるための広告費・仲介手数料が必要となることを考えれば、なるほど不動産投資において、空室が大きなリスク要因であることは間違いありません。
しかし、ある程度長い期間に渡って大家業をやっていると、ときに、空室よりもよっぽど厄介なトラブルに見舞われることもあります。(正直、「空室の方がよほどマシだった!」と強く感じることもあるほどです・・・)
本稿では、そんな空室以上に恐ろしいトラブル事例とその対策について、ご紹介します。
実際のところ、空室以上に厄介なケースは、1つや2つではありません。(私自身も、十数年の大家経験で、様々な厄介なトラブルに巻き込まれています)
今回は第一弾という位置づけで、比較的発生頻度の高い“滞納”をテーマに、前後編に分けてお話しします。
まず、滞納といっても様々なケースがあります。
たとえば、うっかり振込を忘れてしまっただけのケースや、突発的な海外出張などの理由による一過性のケースであれば、厄介なトラブルに発展する可能性は低いといえます。(大抵の場合は、連絡するとすぐにお支払いいただけます)
大家として警戒すべきは、“経済的事情による滞納”です。
具体的には、
などの事情により、収入・貯蓄が大きく減ってしまった(若しくは途絶えてしまった)結果の滞納です。
こうしたケースでは、長期戦での対応を覚悟せねばなりません。
いざ滞納が発生して、詳しい事情を伺うと、事故やご病気など、入居者様ご本人を責められないケースも多々あります。
私も大家業を始めた当初は、苦しい状況に少しでも助けになればと、家賃の支払いを猶予したり、一時的な減額や分割払いに応じたこともありますが、いずれも事態を悪化させるだけの結果に終わりました。
殆どの入居者様は、家賃の滞納が良くないことだと理解されていますし、平時にはある程度の貯蓄・資産を持っています。
それでも家賃を滞納してしまうということは、経済的事情が短期で回復できる見込みがなく、貯蓄・資産も底を尽きかけているサインであるわけです。(さらにいえば、家賃以外の様々な支払いも滞納している可能性、あちこちから限界まで借り入れを重ねている可能性も十分考えられます)
そんななか、多少の家賃支払猶予や減額に応じたくらいでは、根本的な解決には程遠く、いたずらに家賃の滞納額を増やしてしまうだけなのです。
最悪は自己破産されてしまうまでお付き合いする覚悟があるならば別ですが、そうでないなら、滞納解消はまず不可能な前提で手を打つ必要があります。
もっとも、賃貸借契約を締結する際、有事に備えて連帯保証人を付けているケースも多くあります。
「家賃の滞納があった時点で、連帯保証人に支払いを求めればよいのでは?」と思われた方もいることでしょう。
実際、民法の規定では、連帯保証人に重い責任が課されています。
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<民法上の連帯保証人の責任>
・『催告の抗弁権』がない
⇒「まずは本人に請求してくれ」という権利はない
・『検索の抗弁権』がない
⇒「まずは本人の資産をあるだけ差し押さえてくれ」という権利はない
・『分別の利益』がない
⇒「他の保証人にも請求してくれ」という権利はない
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しかし、いざ、連帯保証人に連絡すると、「まずは本人に請求してください」「うちもお金に余裕がないのでお支払いできません」「もう長いこと本人と会っておらず関わりたくありません」「そんな契約をした記憶がありません」というケースもザラですし、「本人に支払うよう言って聞かせます」として次からは一切電話に出なくなるケースもありました。
法律がどうであれ、滞納家賃の代位弁済(代わりに返済してくれること)に応じる連帯保証人ばかりでもないのが現実といえます。
さらに、2020年4月の民法改正で、連帯保証人に関する規定が厳格化されました。
詳細は別記事でご説明予定ですが、大家からすると、連帯保証人への請求はいっそう制約が増えた点も、覚えておいた方がよいでしょう。
■入居者様本人への督促・交渉は困難を極める!
では、“経済的事情による滞納“が発生し、連帯保証人もアテにならない場合、どうすればよいのでしょうか。
先ほど書いたように、経済的な事情で滞納が始まった以上、短期間での事態解消はまず不可能ですから、滞納家賃の督促をしつつ、現実的には「部屋の明け渡し」と「未払い分の分割払い」について、入居者様と交渉するしかありません。(傷口に塩を塗るようで、本当に心が苦しい瞬間です・・・)
しかし、いざこうした督促・交渉を始めると、
こうなってくると、大家側としても入居者様に対する感情が変わってくるわけですが、ここで冷静さを欠いては絶対にダメです。
大家側が感情的になっても事態は悪化するだけですし、特に督促に関しては厳しい規制がかけられています。
たとえば、以下のような督促行為を行った場合、逆に大家が不法行為責任を追及される立場になってしまうのです。
電話やメールを無視されて、居留守を使われたとしてもなお、こうした制約下で滞納家賃の督促を行い、部屋の明け渡しや未払い家賃の分割払いの合意を得るのは、並大抵の苦労ではありません。
いかがでしたでしょうか。
ここまで読んでいただければ、滞納が空室以上に厄介なトラブルであることは、ある程度イメージしていただけたのではないかと思います。
しかし、リスクはリスクとして正しく認識しておけば、完全な回避はできないまでも、発生時のダメージを低減する対策を講じることができます。
次回は、こうした滞納が起きてしまった際の対応、大家のリスクを低減する対策についてご説明させていただきます。
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