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空室より怖い!大家が恐れるトラブル事例① ~滞納編(後編)~

空室より怖い!大家が恐れるトラブル事例① ~滞納編(後編)~

空室より怖い!大家が恐れるトラブル事例① ~滞納編(後編)~

前回の記事では、不動産投資において、空室よりも厄介な事例として“滞納”があることを、大家歴十数年の経験をもとにご説明させていただきました。

 

※前回の記事をまだご覧になっていない方は、是非こちらを先にお読みください。

空室より怖い!大家が恐れるトラブル事例① ~滞納編(前編)~


本稿では、その続きとして、不動産投資をするうえでの滞納への備え、そして滞納が発生してしまった場合の対応について、ご説明していきます。

※本稿での“滞納”とは、うっかりなどによる一過性のケースではなく、経済的事情による滞納を想定して記載しています。予めご了承ください。

 

■滞納発生に対する3つの備え

 

前回の記事で詳しく書きましたが、滞納は一度発生してしまうと、少々の家賃支払い猶予や減額をしたくらいでは、解消に至ることはほぼありません。

むしろ、ずるずると滞納額を増やし、事態をより悪化させてしまう危険の方が多いといえます。

そのため、滞納が生じてしまった際には、いかに初期対応を迅速・適切に実行できるかが重要で、まずはその事前準備からご説明しましょう。


①逃げない連帯保証人の確保

前回の記事で、連帯保証人はあまりアテにならないことをご説明しました。

しかし、入居者様と関係が深い方(親子など)であれば、民法上の責任どおりに全額代位弁済してくれるケースもありますし、そこまでは期待できずとも、一部代位弁済や事態の解消に向けた各種協力に応じてくれることもあります。

滞納への備えとしては、「連帯保証人がいるか」といった形式的なことではなく、「有事の際に逃げない連帯保証人がいるか」といった実態が重要となります。(逃げ回る連帯保証人に、いくら権利を主張したところで仕方ありません)


そのため、

 

・連帯保証契約を結ぶ時点で、しっかり民法上の責任を説明しておく

・連帯保証人との関係を確認しておく(古い友人、前の職場の同僚、遠い親戚などの場合は、特に慎重に)

・連帯保証人の資力があることを確認しておく

・2人以上の連帯保証人を確保しておく(または、後述する保証会社への加入も必須とする)

・定期的に、連帯保証人の連絡先を確認する(特に、高齢の連帯保証人の場合、途中でお亡くなりになっている可能性もある)

 

といったことは、当たり前に備えておきたいところです。

 


②家賃保証会社への加入

連帯保証人とのトラブルや2020年4月の民法改正による連帯保証人への請求に制限が明文化されたことに伴い、近年では家賃保証会社への加入を入居の必須条件とするケースも増えてきました。

基本的には、家賃保証会社に、「家賃の●ヵ月分」「△年ごとにいくら」といった保証料を支払うことで、所定上限内で滞納家賃を保証し、入居者様との退去調整を代行してもらえます。(詳細は各保証会社により異なります)

保証料は入居者負担のケースが多いようですが、これが入居者募集の妨げになったり、保証契約の更新時に保証料の支払いを行わない入居者様もいます。

少なくとも、前述した「逃げない連帯保証人」の確保が難しい場合には、保証料は大家が全額負担してでも家賃保証会社を付けておく方が無難といえます。

 

③滞納に強い管理会社への外注

最後は、家賃回収業務の一切を専門の管理会社に外注するという方法です。

家賃保証会社と同様、基本的には「家賃の●●%」「月額いくら」といった金額を支払うことにはなりますが、連帯保証人のチェックや保証会社の加入状況に時間を使うことができない方などは、いっそ家賃回収業務そのものを外注するのも選択肢です。

但し、数名の事務員で全ての業務を回す会社もあれば、専門知識や豊富な経験を持った人を集めて組織的に対応してくれる会社もあり、肝心の滞納時の対応に関するノウハウは、管理会社によって大きな差があります。

滞納に強い管理会社をしっかり選ぶ手間だけは惜しまないようにしましょう。

 

■それでも滞納が発生してしまったら???

それでも、いざ滞納が発生してしまったらどうすればよいでしょうか。

前述した「②家賃保証会社」「③滞納に強い管理会社」を付けている場合は、基本的には大家自身が督促や退去調整を対応することはなく、経緯報告を受け取り、指示された書類にサインをするなどの対応が中心となります。(各会社により詳細は異なりますので、くれぐれも契約内容は把握し、念のため初動対応で大家側のタスクがないかは問い合わせた方が無難です)


問題は、「連帯保証人のみ」のケースで、この場合は大家が直接対応しなければなりません。

繰り返しになりますが、滞納が一度発生してしまうと、少々の家賃支払い猶予や減額をしたくらいでは、ほぼ解消に至ることはなく、むしろ滞納額をいたずらに増やす結果に終わるケースが多いものです。

そのため、入居者様のためにも、早期に契約を解約し、転居(実家に戻る、より家賃の安い部屋に移る)といったことに同意いただく必要があります。

とはいえ、やみくもに交渉しても上手くいかないことも多いでしょうから、

 

・早期に連帯保証人に協力を仰ぐ
⇒滞納額が少ない時点であれば、代位弁済や退去調整に協力いただける可能性が高くなります

・引っ越し費用の相談に乗ってあげる
⇒家賃を滞納するぐらいですから、引越し費用や引っ越し先の初期費用が支払えない可能性もあります。その場合は、引越し費用の一部負担も検討した方がよいケースもあります。

といったことを組み合わせつつ、滞納が発生したら“すぐに”行動を開始することが重要です。


なお、新型コロナウィルスによる経済的困窮の場合、一定の要件を満たせば住宅確保給付金の支給が受けられ、当面の猶予期間を得られることもあります。

入居者の方がご存じないことも多いため、事情が該当する場合には案内してあげるのもよいでしょう。

<住宅確保給付金> ※厚生労働省の案内サイトへのリンクです
https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/index.html


ちなみに、「家賃を払わないなら追い出せばよいのでは?」といったご意見もあるかもしれませんが、いまの日本では非常に難しい現実があります。

家賃の滞納があったとしても、勝手に部屋に立ち入ったり、鍵を変えたり、家財などを運び出したりはできません。(住居侵入罪や器物損壊罪、場合によっては脅迫罪や強要罪の罪に問われることになります)

部屋を取り戻す(強制退去)には、裁判で建物明け渡し請求を行い、勝訴判決を得る必要がありますが、目安として6ヵ月以上の滞納が生じていなければ勝訴は困難とされています。

さらに、勝訴しても入居者が退去しなければ、さらに費用と時間を投じて強制執行の手続きを経る必要があり、裁判費用と滞納家賃による経済的負担、そして長期間にわたる手間とストレスは避けられないのです。

いかがでしたでしょうか。

不動産投資において、滞納は非常に厄介な問題ですし、一定確率での発生は避けられません。

しかし、リスクに備えておくことはできますので、ご自身の投資スタイルに合わせた滞納対策を是非考えてみてはいかがでしょうか。
 

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