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改めて知っておきたい、税制改正後の5つの「年収の壁」について

改めて知っておきたい、税制改正後の5つの「年収の壁」について

改めて知っておきたい、税制改正後の5つの「年収の壁」について

皆さんは、「年収の壁」という言葉を聞いたことがありますか?
ご夫婦のうち、どちらか一方が世帯主としてフルタイム正社員で働き、もう一方の配偶者がパート・アルバイトなどで家計を支える場合などで、配偶者の年収が一定額を超えてしまうと、税金・社会保険料の負担が発生して、逆に家計全体での手残りが減ってしまうことがあります。
この税金・社会保険料の負担によって、手残りが逆転してしまう分岐点を「年収の壁」と呼びます。
年末近くになると、敢えてパート・アルバイトのシフトを減らす配偶者の方を見かけることがありますが、この「年収の壁」を意識して、毎年の年収額を調整していたというわけですね。
一般に有名なのは「103万円の壁」ですが、実は「年収の壁」には、少なくとも「100万円の壁」「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」といった5つの壁があります。
そして、実は、税制改正によって2018年以降は「103万円の壁」はそれほど意識する必要がなくなった壁となった経緯もあります。
本稿では、税制改正後の5つの「年収の壁」について、分かりやすくご説明していきます。


■「100万円の壁」「103万円の壁」の影響は大きくない!

まずは、「100万円の壁」「103万円の壁」からご説明しましょう。
この2つの壁は、配偶者ご自身に所得税・住民税が課税される分岐点のことで、「100万円の壁」は住民税、「103万円の壁」は所得税を指しています。(住民税の課税分岐点は自治体によって多少異なります)
但し、住民税の税率は概ね10%前後、所得税も年収103万円をギリギリ超える程度であれば税率は5%(下記表のとおり、年収によって税率が大きく変わります)のため、実は税制改正後において、この2つの壁はそれほど大きな影響はありません。

【出典】国税庁ホームページより抜粋

一番有名な「103万円の壁」の影響が小さいことには、意外と感じる方も多いかもしれません。
2017年より以前(税制改正前)には、配偶者に所得税が課税されることに加えて、世帯主の「配偶者控除」が適用除外となり、世帯主に課せられる所得税が上がる分岐点でもあったため、たしかに家計全体でみれば「103万円の壁」の影響は大きかったといえます。
しかし、2018年以降は後述する「配偶者特別控除」によって、世帯主の控除の適用要件が緩和されたことで、「103万円の壁」の影響は小さくなった経緯があるのです。
但し、世帯主の勤務先に「配偶者手当(家族手当・扶養手当)」等の制度がある場合、税制改正前の「103万円の壁」を、勤務先独自の基準として設けている例は未だ散見されます。
国としての影響は小さくなりましたが、個別の家計単位での影響については、念のため確認しておくべきでしょう。

■「106万円の壁」「130万円の壁」の影響は大きい!

「106万円の壁」「130万円の壁」は、いずれも社会保険料に影響します。
配偶者の年収が106万円を超え、「従業員数が501人以上の企業」「週の所定労働時間20時間以上」などの所定条件を満たす場合、パートやアルバイトでも勤務先の社会保険に加入しなければなりません。
これまでは世帯主の社会保険の扶養であったものが、自分で社会保険料を負担することになるため、実際の手取り額は大きく減ってしまうことになります。(もっとも、ここで加入する社会保険は、原則として労使折半の厚生年金等であるため、保障内容・将来の年金受給額は有利となり、一概に悪いことばかりでもありません)
なお、社会保険の適用要件については2022年10月以降、段階的に緩和される計画となっています。
「106万円の壁」は、今後多くのパート・アルバイトに注目されることになりそうです。
そして次の「130万円の壁」は、世帯主の社会保険の扶養条件を満たさなくなり、原則として配偶者が自分で社会保険に加入せざるを得ない分岐点です。(実際に配偶者が世帯主の社会保険の扶養から外れるかどうかは、健康保険組合などの判断によります)
配偶者の勤務先の規模といった「抜け道」がなくなることで多くの方を対象に社会保険料負担が発生し、さらには全額自己負担の国民健康保険・国民年金に加入しなければならないケースもあることから、5つの壁のなかでも最も影響の大きな壁といえます。

■「150万円の壁」は世帯主の所得税に影響する!

最後は「150万円の壁」です。
これは世帯主の所得税に影響する分岐点で、配偶者の年収が150万円以下であれば、世帯主の配偶者特別控除の適用を満額の38万円、受けることができます。(実際には、配偶者特別控除の適用にはその他所定条件があります)
配偶者の年収が150万円を超えた場合、配偶者特別控除の適用額が段階的に縮小し、201万円を超えると適用がなくなります。(「201万円の壁」と言わないのは、実際に201万円に近いギリギリで配偶者の年収を抑えたとしても、配偶者特別控除の適用はごく僅かであり、意識を向ける意味合いがないためです)

いかがでしたでしょうか。

年末になると、「税金がかからないようにしないと!」「扶養から外れないようにしなければ!」という会話が飛び交いますが、「税金」「扶養」にはいくつか異なる意味合いがあり、意識すべき金額もまた異なってきます。
この機会に国や勤務先の制度について、改めて見直ししてはいかがでしょうか。
ひょっとしたら、「意識すべき“年収の壁”が間違っていた!」という気付きがあるかもしれませんよ!

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