節税
一般のサラリーマンにとって、一つの目標ともいえる、年収1000万円。
以前、こちらの記事で富裕層に関するテーマを取り上げましたが、令和元年に年収1000万円をクリアした人は全体の4.8%でした。
全体の5%にも満たない高年収ですから、「年収1000万円もあれば、それなりに余裕のある生活が送れるだろう」というイメージがあるのも無理はありません。
しかし、一方で日本の税制・社会保険制度では、高所得者ほど負担が重くなる制度設計になっている側面も無視はできません。
本稿では、年収1000万円のサラリーマンの本当の手取りがいくらになるのかについて、モデルケースを用いて計算してみたいと思います。
まずは、サラリーマンの方の税金計算の基本からおさらいましょう。
サラリーマンの給与収入には所得税・住民税が課税されますが、特に厄介なのは所得税です。
住民税は所得に対して一律で約10%の税率となっており、収入が増えても税率が上がるということはありません。
しかし、所得税は年間の所得に応じて税率自体が上がる仕組みとなっており、5%から最大45%まで跳ね上がってしまうのです。
【出典】国税庁ホームページより
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
所得税が最高45%、住民税が約10%ですから、所得税・住民税の合算税率は最高で55%となります。
さらに、令和19年までは東日本大震災の復興を名目とした、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が追加で課税されるため、実際の最高税率は55%を超えるという計算になります。
そして、サラリーマンの収入には、税金に加えて社会保険料も発生します。
サラリーマンの社会保険料は、基本的に「健康保険」「介護保険」「雇用保険」「厚生年金」から構成されており(40歳未満の方は介護保険は対象外)、事業主(企業)とサラリーマンご本人が、原則として折半で保険料を負担します。
実際の社会保険料は運営母体によって異なりますが、年収1000万円であれば年間120万円程度が目安です。
参考に、東京都の「協会けんぽ」の保険料額表のリンクを貼っておきますが、これを見ただけでも、社会保険料の負担額は決して小さくなく、さらに税金同様に高収入の方ほど大きな負担となる仕組みであることがご理解いただけるかと思います。
【リンク先】令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r3/ippan/r30213tokyo.pdf
では、日本の税制・社会保険制度の仕組みをおさらいしたところで、年収1000万円のサラリーマンの方が、所得税・住民税・社会保険料でいくら支払うことになるのか、実際の手残りはどの程度なのかについて、以下のモデルケースで試算してみましょう。
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【モデルケース前提】
・夫婦2人のサラリーマン家庭、世帯主の年収1000万円(賞与は考慮せず)
・社会保険料は年間約120万円
・ほかに、「基礎控除」「配偶者控除」の適用条件を満たす
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サラリーマンの方は、個人事業主などに比べて仕事に必要な経費計上が認められにくい反面、給与所得控除という所得控除の適用を受けることができます。
給与所得控除は給与収入に応じて拡大しますが、年収850万円超で上限195万円に達してしまいます。
<給与所得控除の計算式>
【出典】国税庁ホームページより
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
これらから計算すると、課税対象となる年間所得は599万円となります。
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<年間所得の計算>
年収1000万円-給与所得控除195万円-(基礎控除48万円+配偶者控除38万円+社会保険料控除120万円)=599万円
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年間所得金額が599万円の場合、先ほどの所得税速算表では税率20%、控除額42.75万円ですから、所得税は約77万円、住民税は約60万円となり、所得税・住民税の合算税額は約137万円となります。(正確には住民税の計算はもう少し複雑で所得税とは異なる部分もありますが、本稿では概算での試算を目的とするためご了承ください)
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<所得税の計算>
年間所得599万円×税率20%-控除額42.75万円=77.05万円
<住民税の計算>
年間所得599万円×税率約10%=約59.9万円
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つまり、今回のモデルケースでは、年収1000万円のサラリーマンの実際の手取りは、所得税・住民税の合計約137万円と社会保険料約120万円を差し引いた743万円ということになります。
いかがでしたでしょうか。
年収1000万円のサラリーマンの場合、年収の1/4以上もの、税金と社会保険料を支払わなければならないということに驚いた方も少なくないかと思います。
また、サラリーマンの方がさらに年収を上げたとしても、税額ばかりでなく、税率(所得税率)自体も跳ね上がるという点も、頭の痛い問題です。
「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」「ふるさと納税」「iDeco」など、サラリーマンと相性のよい節税手段もありますが、根本的な対策としては、共働きなどによる所得分散や社会保険料の発生しない副業を始めることも選択肢ではあります。
本稿をきっかけに、是非「お金の残し方」にも関心を持っていただければと思います。
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