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部屋を借りようと思って賃貸の仲介不動産会社(以下、「仲介不動産屋」)に相談に行ったら、
・「相談だけのつもりだったけど、気付いたら契約していた」
・「立地や間取りが希望条件ピッタリの物件が1部屋だけ残っていたので、少し予算オーバーだったけど慌てて契約してきた」
といった話をよく聞きます。
もちろん、ご本人の希望条件や予算ピッタリの部屋を案内してもらえた結果なら双方ハッピーですが、実は仲介不動産屋の仕掛けた“巧妙な罠“にハマってしまった可能性があるかもしれません。
多くの方にとって部屋探しは頻繁に経験するイベントではないため、貸す側と借りる側に知識・経験の差が開きやすく、時として不動産業界の人から見ると、「ちょっとズルいなぁ・・・」と感じるシーンもあるのです。
部屋探しのシーズン真っただ中ということで、本稿では仲介不動産屋の仕掛ける“罠”のうち、代表的なものをいくつかご紹介しますので、是非参考にしてください。
相手の本音を理解するうえで、まずは仲介不動産屋の利益構造から理解しておきましょう。
彼らの利益は、基本的にほぼ“成功報酬”です。
主たる収入源は、入居者さん(または大家さん)から受け取る「仲介手数料」ですが、これは成約時にのみ受け取ることができます。
また、付帯収入であり、利益率が高いとされる「広告料(大家さんから受け取る収入)」「火災保険料の代理店フィー」なども、やはり成約時のみに発生する利益です。
つまり、仲介不動産屋としては、入居者さんが自社で部屋を成約してくれないと、どれだけ親切丁寧に部屋探しを手伝ったとしても、たとえ経費(社用車のガソリン代・駐車場代など)をかけて内覧をご案内したとしても、1円の利益にもならないのです。
それにも関わらず、少し大きな街では駅前にたくさんの仲介不動産屋が店舗を構えていますから、後日、他の仲介不動産屋に成約を持っていかれてしまうことも珍しくありません。
仲介不動産屋が、入居者さんに部屋を即決してもらえるよう、時として“ズルい”手口を使うことには、こうした事情がある点は最初に覚えておくとよいでしょう。
では、具体的には、仲介不動産屋はどんなやり方で即決を促すのでしょうか?
強引または無理やりに申し込みを迫られることを心配する方も多いかもしれませんが、私の知る限り、そうした事例は殆ど聞いたことがありません。
むしろ、その物件をアピールして、納得してもらったうえで申し込みをもらうテクニックが上手なのです。
有名なテクニックの一つに、「3件目に本命物件を案内する」というものがあります。
たとえば、部屋探しをしているお客様から希望条件を聞いて、3件程度の内覧の計画を立てたとします。
案内を受ける側としては、「希望条件に近い部屋を3つ見せてもらって、その中から一番気に入った部屋を決められる」という期待があるはずですよね。
ところが、実際に案内する部屋のうち、1件目と2件目はわざと希望条件を外した部屋とするのです。
当然、希望条件と違えばお客さんはガッカリしますが、そこですかさず「この時期は良い部屋は取り合いの状況で・・・」「この予算だとこうしたお部屋が中心で・・・」などと説明するわけですね。
お客さんが、「早く決めないとどんどん良い部屋がなくなってしまうかも」「もう少し予算を上げないと難しいのだな」という気持ちになったところで、いよいよ本命の物件にご案内します。
3件目はより希望条件に近い部屋を案内することで、お客さんに「ここだ!」と思ってもらいやすくする作戦というわけですね。
そして、「この部屋はとても人気なので、今決めてもらえないと、別の方で決まってしまうかもしれません」とダメ押しの一言に繋げて即決を促すというわけです。
もちろん、その部屋が本当に特別な人気物件であるケースもあるでしょうが、こんなやり方でお客さんの即決を促すテクニックがあることは、知っておくとよいでしょう。
もう1つ。仲介不動産屋によっては、内覧に行く前に、強力に特定の部屋をおススメされることがあります。
お客さんとしては「それほどおススメするということはさぞかし素晴らしい部屋なのだろう」と思いたくなりますが、そうとは言い切れません。
先ほど、仲介不動産屋の利益として「広告料(大家さんから受け取る収入)」をご紹介しました。
広告料には色々と業界の闇があるのですが、今回は「部屋によって金額が違う」という点だけ覚えてください。
仲介不動産屋が部屋を成約した際の利益は、広告料の大小によって大きく違ってくる事情があるというわけですね。
ということは、、、もうお気付きかもしれませんが、仲介不動産屋がピンポイントでオススメしてくる部屋や、条件と少し違うのに不自然にアピールしてくる部屋の正体は、この「広告料が大きい部屋」であることがよくあるのです。
広告料は大家さん側の事情で大小が決まっており、たとえば新築マンションを建てて一斉に入居者さんを付けてほしい場合や、引越しシーズン外や不人気な要素があり入居者さんが見つかりにくい場合などに広告料は大きくなる傾向にあります。
つまり、広告料の大きい部屋が良い部屋であるとは限らず、場合によっては不人気な部屋である可能性すらあります。
もちろん、その部屋が本当におススメであるケースもあるでしょうが、こうした業界の事情を知っておくと、「なぜ、この部屋がよいのですか?」と聞きやすくなりますね。
いかがでしょうか。
このように、賃貸不動産業界には、一般の方がなかなか気づけない事情があります。
仲介不動産屋も営利企業ですから、多少のズルい営業は仕方ないともいえますが、本稿で紹介したようなことを知っていれば、より上手に希望の部屋を探しやすくなることでしょう。
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