資産運用
不動産投資をしていると、「源泉徴収(源泉所得税)」という言葉によく遭遇します。
たとえば、収益物件売買時の司法書士報酬や毎年の決算申告における税理士報酬の支払時などですね。
それらの請求書には、以下のように「源泉所得税額」などの記載があることがあります。
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<司法書士からの請求書(例)> ※登録免許税・印紙代は含まず
【報酬額】50,000円
【源泉所得税額】4,084円
【請求額】45,916円
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数字だけ見ると、司法書士からの請求額は源泉所得税額の分だけ減っていますが、当然ながら「請求額が安くなってよかった!」という話ではありません。
この差額は不動産投資家が別途納税しなければなりませんし、「原則として支払った月の翌月10日」までの短い期間に手続きを終えなければなりません。
不動産投資家としては、二重に支払手続きをする面倒が増えるだけで、全く嬉しい話ではないのです。
なぜ、わざわざ面倒が増やしてまで源泉徴収を行う必要があるのでしょうか?
また、源泉徴収の面倒を軽減させる方法はないのでしょうか?
本稿では、源泉徴収に関して、特に不動産投資家の目線から分かりやすく説明していきます。
まずは、「そもそも、源泉徴収とはなにか?」について改めて整理しておきましょう。
源泉徴収は、冒頭に書いた司法書士らに対する報酬だけでなく、会社員の方の給与も対象となっています。
会社から発行される毎月の給与明細には、「(源泉)所得税」「住民税」「健康保険料」などの控除項目が記載されているはずで、これを目にした方は多いことでしょう。
給与での源泉徴収の流れは以下です。
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【会社(支払う側)】
・源泉所得税を控除(天引き)して、会社員に給与を支払う
・控除した源泉所得税は、原則として翌月10日までに別途納税を行う
【会社員(受け取る側)】
・源泉所得税を控除(天引き)された給与を受け取る
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本来、所得税は1年間の収入や状況(家族構成や保険加入等)に応じてその税率・税額が決定する仕組みです。
その意味では、各年の税額決定後に纏めて納税できればラクですが、給与に対する所得税については、源泉徴収を通じて前倒しで毎月分割納税することになっているのです。(決定した所得税額との過不足は、年末調整や確定申告で調整します)
納税者には面倒が増える一方、税金を徴収する国にとっては、「納税者の申告漏れを防止できる」「年間の税収を平準化できる」「多数の個人に納税させるより少数の会社に納税させた方が管理しやすい」などの運営面でのメリットがあるとされています。
さて、不動産投資家が司法書士報酬などに対して行う源泉徴収も、基本的には給与と同じ理屈です。
所得税法では、給与支払以外で源泉徴収が必要な場面として、個人に対して支払う「原稿料や講演料」「弁護士、公認会計士、司法書士等への報酬・料金」などを定めており、これに司法書士報酬や税理士報酬が該当します。
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<参考>国税庁ホームページ 『No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは』
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給与支払いの場合には「会社(支払う側)と会社員(受け取る側)」の関係でしたが、不動産投資では「不動産投資家(支払う側)と司法書士など(受け取る側)」の関係に置き換わると考えれば分かりやすいでしょう。
源泉徴収を行う必要のあるものを「源泉徴収義務者」といいます。
会社や個人だけでなく、給与支払のある学校や官公庁、人格のない社団・財団なども、原則として源泉徴収義務者に該当します。
しかし、以下条件に該当する「個人」に限り、源泉徴収を不要とする例外が認められています。
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<源泉徴収をする必要のない条件>
①常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人
②給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金
<参考>国税庁ホームページ 『No.2502 源泉徴収義務者とは』
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一般に、不動産投資家の方に関係する例外条件は②でしょう。
たとえば、不動産投資を法人ではなく個人事業主として行っており、かつ従業員を雇用していない方であれば、司法書士報酬に源泉徴収の義務は生じないということです。
既に不動産投資を行っているが源泉徴収をしたことがないという方は、こうした例外に合致しているからであって、今後不動産投資を法人化した場合や、従業員に給与を支払う個人事業主となった場合には源泉徴収義務者となることを覚えておきましょう。
最後に、源泉徴収の面倒を減らす方法をご紹介しましょう。
先ほど、源泉徴収の支払サイクルは原則として「支払った月の翌月10日」までと書きましたが、以下条件に合致したうえで、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を行うことにより、年2回にまとめて納付できる特例があります。
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<申請条件>
給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者
<特例サイクル>
・1月から6月までの源泉徴収分 ⇒7月10日まで
・7月から12月までの源泉徴収分 ⇒翌年1月20日まで
<参考>国税庁ホームページ 『[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』
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本稿のタイトルにもある「7月10日期限」とは、この特例サイクルの1回目のことですね。
不動産投資を法人化した場合でも常時10名以上の従業員を雇用するケースは多くないでしょうから、多くの不動産投資家の方がこの特例を利用しているようです。
ただし、毎月の納付手続きがなくなるのはメリットですが、年2回の手続きを忘れないよう、この時期はくれぐれも注意しましょう。
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