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先日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)の「1デイ・スタジオ・パス」の価格について、22年10月から最高9,800円に引き上げることが報道されました。
USJでは、かねてよりダイナミックプライシング制を導入しており、チケット価格は季節のイベントやパーク内の混雑予想等による変動価格制となっていましたが、今回の価格変更ではその最高価格が9,400円→9,800円に値上げされることになりました。
USJによると、「10月下旬はハロウィーンなど年間で1番人気の季節。混雑の平準化も踏まえ判断した」とのことですが、USJではここ1、2年だけでも「1デイ・スタジオ・パス」の実質値上げを複数回に渡って繰り返しており、つい先日には「年間パス」の値上げもあったばかり。
今回の値上げも然ることながら、この先、どこまで値上げが続くのか、不安を感じるファンの方も少なくないようです。
そして、実はこうした値上げの動きは、他のレジャー施設でも相次いでいるのです。
本稿では、USJの値上げのほか、全国的に相次ぐレジャー施設の値上げについて、直近の実例を挙げながら分かりやすく説明していきます。
※本稿の内容は、8月中旬現在の情報により執筆しています。
まずは、先日報道されたUSJの値上げ内容を詳しく確認しておきましょう。
「1デイ・スタジオ・パス」の大人料金は、ダイナミックプライシング制により3段階の価格に分かれていますが、その新旧比較は以下のとおりです。
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<USJの価格比較> ※いずれも税込
【旧価格(~22年9月)】
(低)8,400円、(中)8,900円、(高)9,400円
【新価格(22年10月~)】
(低)8,900円、(中)9,400円、(高)9,800円
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「最高価格の引き上げ」と聞くと、3段階のうちハイシーズンの最高価格だけが値上げされるようにも感じますが、実際にはこのように、3段階すべての価格が値上げとなるようです。(今回の値上げについて、USJは「混雑の平準化」を強調していましたが、3段階すべての価格を引き上げたのでは平準化は図れない気もしますが、どうなのでしょうか・・・)
では、USJ以外の国内のレジャー施設に目を広げてみましょう。
東京ディズニーリゾート(以下、TDR)についても、先日チケット価格値上げの報道がありました。
TDRでもダイナミックプライシング制が採られていますが、「1デーパスポート」の価格について、現在の7,900円~9,400円から引き上げる予定とのことです。
但し、USJとは異なり、最安値は維持したうえで最繁忙期の価格を値上げする方向らしく、値上げの時期は新エリア『ファンタジースプリングス』がオープンする2023年度が目処と少し先になるようです。
USJほど頻繁でないにせよ、TDRでも近年は継続的に値上げが行われているため、この先どこまで価格が値上がりするのか、やはりファンの間では不安の声も挙がっています。
また、USJ・TDR以外でも、サントピアワールド(新潟県阿賀野市)、横浜・八景島シーパラダイス(神奈川県横浜市)、沖縄美ら海水族館(沖縄県国頭郡)、富士サファリパーク(静岡県裾野市)、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)など、今年に入って多くのレジャー施設で値上げが行われました。
今後についても、ルスツリゾート(北海道虻田郡)からは冬季のスキーリフト料金の大幅値上げの発表があるなど、全国的な値上げ傾向はしばらく続きそうです。
では、なぜレジャー施設の値上げが相次いでいるのでしょうか。
その背景を大きく分けると「混雑の平準化」「体験価値の向上」「維持コストの増加」の3つがあるようです。
「混雑の平準化」については、正にUSJが今回の値上げ理由として説明したものですが、TDRでもかねてより混雑の解消・平準化を課題として挙げています。
従前より、ダイナミックプライシング制により混雑予想日の価格を引き上げることは行われてきましたが、前述したTDRの発表のように、今後はその価格差により強弱をつける方向に進むことが予想されます。
また、コロナ禍で入場制限を行った結果、パーク内の混雑が解消しアトラクションの待ち時間が短くなったことで、顧客満足度が上昇し、グッズや飲食店の売上が伸びたというデータもあるそうです。
利用者により賛否は分かれそうではありますが、「混雑の平準化」を理由とした実質的な値上げは当面続くと考えた方がよいのでしょう。
「体験価値の向上」も、USJやTDRなどによる値上げの説明として有名です。
これらパークでは、新しい体験エリアを拡大したり、スクラップアンドビルドによるアトラクションの入れ替えを定期的に行っています。
必然、同じパーク内で体験できる価値は向上するため、その対価である入場料も値上げすることに合理性がある、という理屈のようです。(前述した「混雑の平準化」によっても、体験価値は向上したとされています)
最後の「維持コストの増加」は、問題が深刻かもしれません。
昨今の原油高と円安のWパンチによって、各種の施設維持コストが高騰し、企業努力ではカバーできないケースが相次いでいます。
特に、水族館・動物園などのように生き物を扱う施設では、エサ代や健康管理のためのコストを削ることができないといった悲鳴が上がっている状況なのです。
いかがでしょうか。
著者が不安に思うところとしては、レジャー施設は生活必需品ではないため、価格の値上げによって利用者離れを引き起こし、事業の採算をより悪化させないかという点です。
USJやTDRのように、「混雑の平準化」が課題になるほど集客力のあるレジャー施設ばかりではありませんし、真にやむを得ず「体験価値の向上」の伴わない値上げを決断しなければならない施設も今後増えてくることが予想されます。
事業者にとって、非常に難しい経営のかじ取りが求められる局面といえるのでしょう。
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