資産運用
去る9月22日、日本銀行の黒田東彦総裁が、「当面、金利を引き上げることはない」と記者会見で表明したことが話題となりました。
さらに、「当面とは、数カ月ではなく、2~3年の話」と続けて補足したことで、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導する大規模な金融緩和策をさらに長期間続ける方針であることが改めて確認されました。
背景にあったのは、昨今の物価高や急激な円安ドル高の主要因として、日米の金利差が拡大していることを受け、日本銀行の金利政策の方針見直しに注目が集まっていたことでした。
もっとも、日本銀行の本来役割は“物価の安定”であって、直接的に“為替レートの安定“を使命としているわけではありません。
日米、あるいは日本と主要国の金利差が円安を招き、それが物価高に影響している一面はあるにせよ、昨今の物価高は世界的な需要の増加や原油高、物流の混乱など、様々な要因の積み重ねとされています。
その一方、日本銀行の金融緩和方針は、国内市場をディマンドプル型のインフレへの転換を意図したもので、現在のところ道半ばの状況です。
※本件については過去にレアルメディアでも取り上げています。
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<参考記事>
止まらない値上げラッシュ!日本銀行がインフレを誘導したって本当!?
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いまの状況での金利政策転換はいかにも本末転倒で、今回表明された“当面”の継続方針は、いわば当たり前のことと捉えるべきかもしれません。
とはいえ、注目すべきは、“当面”の解釈を「数ヵ月でなく、2~3年」と踏み込んだ発言があったことです。
記者会見を行った黒田総裁の任期は23年4月までですが、このタイミングで任期満了以降の金利政策に言及した意味合いは大きいと受け止めるべきでしょう。
さて、この黒田総裁の発言を受けて、にわかに「住宅ローン」の話題が熱を帯びてきています。
「日本銀行の金利政策と住宅ローンの金利はどう関係しているのか」「今後は変動金利ではなく、固定金利を選ぶべきなのか」などといったことがSNSなどでも盛んに意見交換されているようです。
昨今注目を集める金利の動向について、本稿では特に住宅ローンをテーマに分かりやすく説明していきます。
まずは、住宅ローンの金利がどう決まっているのかについて、おさらいしておきましょう。
原則として、住宅ローンの金利は、「基準金利(店頭金利)」と「引き下げ幅」の」の2つで決定される仕組みとなっています。
「基準金利(店頭金利)」とは、政策金利や長期国債金利などを根拠に各金融機関が決定する金利のことで、いわゆる“定価”をイメージすると分かりやすいかと思います。
一般に、変動金利・固定金利によって根拠とする指標は異なり、変動金利は「短期金利」を、固定金利は10年もの国債の金利に代表される「長期金利」をそれぞれ根拠としています。
そして、「基準金利(店頭金利)」から金融機関ごとに定める「引き下げ幅」を差し引くことで、実際に住宅ローンを借りるときの「借入金利」が決定されます。
金融機関同士の競争によって「引き下げ幅」は増減しますので、「引き下げ幅」は個別のお店による定価からの“値引き”をイメージすればよいでしょう。
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<住宅ローンの金利>
①「基準金利(店頭金利)」を決定する
⇒変動金利は短期金利、固定金利は長期金利を根拠とする
②①から「引き下げ幅」を差し引いて、「借入金利」を決定する
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では、冒頭で触れた黒田総裁の発言は、住宅ローン金利にどう影響するでしょうか。
住宅ローン金利の構成要素には、「基準金利(店頭金利)」と「引き下げ幅」の2つがあることはご説明しましたが、直接的に影響するのは「基準金利(店頭金利)」です。
変動金利については、日本銀行の政策金利の影響を受ける短期金利を根拠とするため、黒田総裁の発言どおりであれば、少なくとも今後2~3年程度は金利上昇の心配はないということになります。
固定金利については、原則として債権(国債)市場に依存する長期金利を根拠としますが、日本銀行によって0%前後に誘導する政策が取られているため、実質的に日本銀行の金利政策の管理下にあるといえます。
そのため、固定金利についても、少なくとも今後2~3年程度は金利上昇の心配はないということになります。(あくまでも、黒田総裁の発言どおりであれば・・・、ですが)
従って、変動金利・固定金利を問わず、住宅ローン利用者にとっては、今回の黒田総裁の発言は安心材料として受け止めてよいものであったと考えられます。
もちろん、黒田総裁の発言は現時点の国内外の市況を受けてのものですし、23年4月には日本銀行総裁の後任人事を控えていますから過信は禁物です。
いざという時に備えて繰り上げ返済等の準備は行いつつ、引き続き国内外の情勢を注視しておくべきでしょう。
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