資産運用
不動産投資初心者からのご相談を受けていると、ときどき、「区分投資(区分ワンルームマンション投資)はリスク分散ができず、危険な投資手法だと聞いたのですが・・・」と不安を口にする方がいらっしゃいます。
資産運用における“リスク分散”とは、投資の対象やタイミングを予め分散することで、リスク発生時の影響を抑える(小さくする)考え方のこと。
たとえば、株式投資では、購入する株式の国や銘柄などを分散しておくことで、特定の国や企業でリスク事象が発生した際のリスクヘッジとなりますし、あるいは株式を購入するタイミングを分散することで、極端な株価の乱高下に巻き込まれるリスクを軽減することができます。
そして、資産運用の一つである不動産投資においても、リスク分散の考え方は重要です。
不動産投資でのリスク事象には、「退去(空室)」「滞納」「騒音」「行方不明」「孤独死」など様々あります。
なかでも「退去(空室)」については、およそどんな優良物件を購入しても避けられませんが、特にこの点において、1室だけを所有する区分投資は、(一棟投資と比べて)弱いと感じる方が多く、それが冒頭の不安のコメントに繋がっているようです。
それでは、本当に「区分投資はリスク分散のできない危険な投資」なのでしょうか?
本稿では、区分投資におけるリスクの考え方について、現役大家の実務目線を交えながら説明していきます。
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まずは、「区分投資はリスク分散できず危険」とされる所以を、改めて整理してみましょう。
先ほども触れましたが、どんなに好条件で人気のある収益物件を購入したとしても、入居者の退去(空室)のリスクをゼロにすることはできません。
退去理由には就職・転勤・転職・結婚など、部屋の満足度とは関係のないケースも少なくありませんし、空室期間の長さも募集時期によって変動します。(同じ部屋・同じ条件でも、賃貸募集をかける時期が、引越しの閑散期といわれる真夏や年末年始などの場合、空室期間が長期化しやすい傾向にあります)
退去(空室)に関して、大家にはコントロールできない要素が多いため、賃貸運営の実務では、ときに想定よりも頻繁に空室が発生したり、想定よりも空室期間が長期化したりすることは防ぎようがないといえます。
そして、1室だけを所有する区分投資では、その1室が退去となった瞬間に家賃収入は0となってしまい、空室期間中の支出(借入返済や管理費・修繕積立金などの支払い)は、全て持ち出しとなってしまいます。
その一方、よく比較対象として挙がる一棟投資(一棟マンション・一棟アパート投資)では、複数の部屋からの家賃収入が見込めるため、たとえ1室が想定外に空室となっても、他の部屋からの家賃は入り続け、空室期間中の支出に充てることができます。
こうした一棟投資との比較も含めて、「区分投資はリスク分散できず危険」という認識が広がっているようです。
なお、不動産投資初心者だけでなく、多くの金融機関もこの認識を持っているようで、融資審査において一棟よりも区分の方が厳しい傾向にある理由の一つでもあるとされています。
では、「やはり区分投資はリスク分散できず危険なのか?」と問われれば、著者は必ずしもそうではないと考えています。
忘れてはならないのは、投資の規模です。
区分投資は、イニシャルコスト(購入にかかるコスト)も、ランニングコスト(維持にかかるコスト)も、一棟投資に比べて金額は小さい特徴があります。
空室期間中に持ち出しが発生するとはいえ、区分1室であれば、その金額規模は数千円~数万円程度であることが多く、他に本業からの給与収入などがある方や、収益物件購入後の自己資金に余裕がある方であれば、少なくとも一発退場のような事態になるケースは多くないはずです。
また、区分投資の場合、そのイニシャルコストが比較的小さいことから、複数室を同時購入したり、2室、3室・・・と短期間で買い増ししたりする方も珍しくありません。
所有する部屋が複数になれば、一棟投資と同様にリスク分散効果が生じますので、不動産投資の規模が拡大するほどに空室への耐性は向上することになります。(金融機関のなかには、区分数室を一体と評価して審査してくれるところもあります)
区分1室の場合には、リスク発生時への備え(余剰資金の確保など)を行い、可能であれば区分の買い増しを行う・・・、これで区分投資のリスクは相応に軽減することができるはずなのです。
最後に、区分投資の方が一棟投資よりもリスク分散に有利な点についても、ご説明しておきましょう。
不動産投資のリスク事象は、なにも「退去(空室)」だけではありません。
冒頭にも書きましたが、ほかにも「滞納」「騒音」「行方不明」「孤独死」を始めとする様々なリスクが存在します。
たとえば、「騒音」について、繰り返し深夜に騒音を出す入居者がいた場合、隣接する部屋・上下階の部屋からクレームが重なり、最悪の場合には一斉退去する事態も起こってしまうかもしれません。
一棟投資であれば、隣接する部屋・上下階の部屋も自分が所有者ですから、トラブル解消に向けた対応や一斉退去による家賃収入の減少は全て自分が責任を負うことになる一方、区分投資であれば、他の部屋の所有者と協力したり、家賃収入の減少の負担を実質的にシェアすることができます。
また、少し目線を変えて、たとえば近隣の大学や商業施設が移転してしまったり、周囲に忌避施設が建築されたりした場合、一棟投資であれば建物全ての部屋にマイナス影響が生じますが、区分投資であれば影響は1室のみです。
このように、建物全体または複数の部屋に跨るようなリスク事象に対しては、一棟投資よりも複数室所有の区分投資の方が、リスク分散効果が高い場合もあるのです。
いかがでしょうか。
このようにリスク事象の中身や所有する室数によって、必ずしも「区分投資はリスク分散できず危険」というわけではないことはご理解いただけたかと思います。
不動産投資に”リスク分散”が重要なのは間違いありませんが、ご自身が警戒すべきリスクを整理し、不動産投資の規模拡大のペースを考えながら、冷静にリスク評価をすることが大切なのではないでしょうか。
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