資産運用
著者が不動産投資家からのご相談をお受けしていると、不動産投資がうまくいかず、「キャッシュフローがマイナスで給与から補填を続けている」「貯金も底をついてこれ以上のマイナスに耐えられない」といった悩みを抱える方とお会いすることがあります。
詳しくお話を伺ってみると、購入した収益物件自体に問題があるケース(割高な金額で購入してしまったり、ワケアリ物件を見抜けずに購入してしまったりなど)がやはり多いのですが、なかには物件自体は悪くないにもかかわらず、購入後わずか1、2年で売却を余儀なくされてしまうケースもあるのです。
なぜ、購入した収益物件に問題がなかった場合でも、短期で売却せざるを得ない状況に陥ってしまうのでしょうか?
本稿では、著者がこれまでに受けたご相談事例から、特に不動産投資初心者の方が陥りやすい“落とし穴”のパターンを3つ、分かりやすくご説明していきます。
これから不動産投資を始めようかと思っている方は、是非参考にしてください。
1つ目は、「税金に潰されてしまう」パターンです。
個人で不動産投資を行う場合、その利益に対して「所得税・住民税」が課税されるわけですが、所得税は給与などの他の所得と合算して税率が決定される仕組みとなっています。
問題はその上昇幅で、所得に応じて所得税・住民税合算税率は、約15%→最大約55%まで税率が上がってしまうのです。(住民税は約10%で計算)
<参考>
さらに悩ましいことには、所得税・住民税は、実際に手元に残った不動産投資の利益に対して課税されるわけではなく、税務上のルールに基づく帳簿上の利益に対して課税されます。
話が逸れるため詳しい説明は割愛しますが、たとえば実際には年間100万円しか儲かっていなくても、税金は帳簿上の利益200万円に対して最大55%課税されることも起こりえるのです。
こうなっては、利益の全て(あるいは大部分)が税金で無くなってしまいます。
税金関連の話は敬遠する不動産投資家さんも少なくありませんが、こうならないために予め関連する税務の知識を学習することは非常に重要だと思います。
また、税金繋がりでもう少し説明すると、「不動産取得税」「固定資産税・都市計画税(以下、「固都税」)」の支払いに苦しむ方もいらっしゃいます。
不動産取得税は収益物件購入後3ヵ月~半年程度、固定資産税は1月1日時点の所有者に対して毎年春頃にそれぞれ納税通知が届くのですが、特に年末頃に収益物件を購入した場合、翌年春頃に納税時期が重なってしまいます。
これらの税額は購入した収益物件(土地・建物)により様々ですが、都市部の一棟物であれば合わせて100万円を超えることも珍しくないうえ、購入後数ヵ月時点では利益もまだ少ないため、予め準備しておかないと納税資金が足りない状況に陥りかねないのです。
2つ目は、「退去関連コストに潰されてしまう」パターンです。
退去発生時のコストとして、空室期間中の「家賃減少」は認識している方も多いのですが、付帯して発生する「原状回復工事費用」「広告料」を見落としている(軽視している)不動産投資家さんは少なくありません。
たとえば、家賃8万円の部屋が退去になったとします。
空室期間が2ヵ月とすると家賃減少は16万円ですが、実際には室内を次の方に賃貸できる状態に戻すための原状回復工事費や、仲介業者に入居者募集を依頼する際の広告料が発生するケースが殆どです。
仮に、原状回復工事費15万円、広告料16万円(家賃2ヵ月分)とすれば、空室期間中の家賃ロスと合わせて47万円、家賃減少だけの想定と比べて実に3倍ものコストです。
また、一般に入退去は新生活シーズン(2月~4月頃)に増える傾向にあり、特に一棟物では複数の部屋が一斉に退去となるリスクも想定せねばなりません。
前述したように、この時期は固都税の納税とタイミングが重なる事情もあり、(収益物件の購入時期によっては不動産取得税も重なります)、資金繰りが苦しくなる方が増えやすいのです。
3つ目は、「滞納に潰されてしまうパターン」です。
オーナーチェンジで収益物件を購入すると、保証会社や連帯保証人の付いていない部屋もあります。
そうした部屋で運悪く滞納が発生すると、退去よりもはるかに厄介なことになりかねません。
長くなるため滞納時の詳しい話は割愛しますが、「うっかり」による滞納以外の場合、基本的には長期戦を覚悟することになります。
日本には借地借家法という法律があり、賃借人の権利が非常に強く保護されているため、「催告→裁判→強制執行」の手順を踏んで対応する必要があるのです。
また、滞納時には家賃収入がないにも関わらず、借入返済や不動産取得税・固都税の支払いは待ってもらえません。
そればかりか、所得税・住民税に関しては、税務上は家賃の支払いがあったものとして利益計算され、あろうことか未収分も課税対象となってしまうのです。
家賃はもらえず、裁判費用はかかり、借入返済等は待ってもらえず、さらには税金も・・・とは何ともやりきれない話ですが、日本の法律ではそのように扱われてしまうのが現実なのです。
いかがでしょうか。
せっかく問題のない収益物件を購入できても、こうした状況が複数重なってしまうと、資金繰りが厳しくなり、場合によっては不動産投資を続けられなくなってしまうという事例のご紹介でした。
税金の支払いのように事前準備でカバーできるリスクもあれば、連続退去や滞納など、運やタイミングに大きく依存するリスクもありますが、自己資金(現金資金)を多めに確保しておくことで、こうしたリスク全般に対する有効な備えとなります。
収益物件購入後の自己資金は、くれぐれも余裕を持っておくようにしましょう。
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