資産運用
ようやく新型コロナウィルスの感染拡大が収束し、不動産投資セミナーが少しずつ再開してきたようです。
それに伴い、著者のところにも不動産投資関するご相談が増えてきましたが、なかでも不動産投資の「融資」に関連して、
●金融機関に事前相談に行ったのに、真剣に取り合ってもらえなかった
●儲かる収益物件で融資を申し込みしたはずが、正式審査前にお断りされてしまった
といったご相談が直近で増えている印象です。
こうした事例は、一見すると金融機関側の姿勢に問題があるようにも思えますが、よくよく話を伺ってみると、投資家さん側に問題が潜んでいるケースも少なくありません。
本稿では、こうしたお悩みを抱えやすい特に不動産投資の初心者に向けて、金融機関への融資相談に関する基本を分かりやすくご説明していきます。
※融資に関する方針・姿勢は各金融機関あるいはタイミング等にもよって異なるため、本稿でのご説明内容と相違する場合があります。あくまで一般論・原則論としてのご説明である点は最初にお断りさせていただきます。
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不動産投資初心者の方とお話ししていて感じるのは、金融機関への融資相談について、小手先のテクニックやノウハウの収集にばかり意識が向いてしまい、根本的な部分を忘れてしまっている方が少なくない点です。
大前提として、「融資を受ける」ということは「お金を貸してもらう」ということ。
“赤の他人”である金融機関からお金を貸してもらおうとするわけですから、最低限「自分がなにもので、」「借りたお金を何に使い、」「どうやってお金を返すのか、」などについて、相手に分かりやすい言葉と態度で説明することは、本来は当たり前の話です。
特に、相談先の金融機関と初対面の場合、まずは「あなたがなにものか」を正しく理解してもらうことから始めましょう。
「あなた自身」が信用されない限り、あなたの説明する収益物件の中身がどれほど素晴らしい内容だとしても、それを信用してもらえない可能性が高いからです。
一般に、ある程度規模の大きな不動産投資家(不動産賃貸経営者)の方であれば、事業を既に法人化していて実績が積み上がっていますので、以下のような説明用ツールを持参し、自分(自社)を説明することが多いようです。
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<金融機関への初回相談時の説明ツール(一例)>
●登記簿
●決算書・確定申告(直近3年分が目安)
●法人および経営者個人の資産・負債、固定資産の一覧(金額が大きいものはエビデンスも)
●事業の強みや特徴、今後の事業計画
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これを参考に、これから不動産投資を始める方や、不動産投資を始めたばかりでまだ実績がない方であっても、準備できるツールは作成しましょう。
たとえば、法人としての決算や確定申告はなくとも、個人としての確定申告・年末調整はしているはずですし、ご自身の資産・負債・固定資産の一覧は作れるはずです。
こうした事前準備をしたうえで相談に行くのと、口頭や書類のコピーだけをかき集めて相談に行くのとでは、相手の受ける印象はまるで違うものになるでしょうし、説明自体もより具体的で濃い内容とできる可能性が高くなるはずです。
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ある程度自分のことを理解してもらうことができたら、次は具体的な融資相談のステップ、即ち「借りたお金を何に使い、」「どうやってお金を返すのか、」を説明する段階に移行します。
このステップが融資相談の本丸で、不動産投資家(不動産賃貸経営者)の腕の見せ所ですが、本稿では初心者の方がよくやってしまう失敗事例として、「自分の考えだけを強調して説明してしまう」ということをご紹介します。
大前提として、金融機関の担当者の方は「不動産投資の専門家」ではありません。
また、金融機関の扱う融資案件に占める不動産投資(不動産賃貸業)の案件割合は決して大きくはないでしょうし、ましてや法人でもない“個人”に対して、数千万円、数億円といった大金を融資する案件は、担当者の方にとってもレアケースかもしれません。(サラリーマンの副業案件であれば尚更ですね)
そのため、金融機関としても、その収益物件の良し悪しや、その収支計画の妥当性などを専門家並みの精度で評価したり、過去の取り扱い実績から正確に評価したりすることは難しく、ある程度型にはめた指標によって判断せざるを得ません。
誤解を恐れずにいえば、「本当に儲かる収益物件」と「金融機関が融資しやすい収益物件」は、必ずしも一致するとは限らないのです。
借入希望額に対して十分な資金余力があるとか、既に不動産投資(不動産賃貸業)で十分な実績があるなどの強いプラス事情があればまた話は別でしょうが、そうした事情もないなかで、「自分の考えでは間違いなく儲かる物件なんです!」といくら力説しても、それでは金融機関との交渉はうまくいきません。
殆どの場合、初対面で金融機関側の指標を明確に教えてもらえることはありませんが、じっくり担当者の話を聞くことで、「積算法による収益物件の担保余力」「法定耐用年数の残存期間」「本業収入からの補填余力」など、いくつか推測できるキーワードは見えてくるはずです。
融資の相談では、そうした金融機関の事情をくみ取り、目線を擦り合わせたうえで、金融機関が理解しやすい(受け入れやすい)言葉で説明すること、少なくともそうした姿勢を示すことが大切です。
分かっていても難しいことではあるのですが、この点はしっかり意識しておくとよいでしょう。
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