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マンション建て替えのルールが変わる!?法務省の中間試案を説明します!

マンション建て替えのルールが変わる!?法務省の中間試案を説明します!

マンション建て替えのルールが変わる!?法務省の中間試案を説明します!

マンション建て替えのルールが変わる!?法務省の中間試案を説明します!

先日、法務省の所管する区分所有法制部会第9回会議(令和5年6月8日開催)において、「区分所有法制の改正に関する中間試案」が取りまとめられました。

背景には、以前レアルメディアでも取り上げた「不動産登記法の改正」と同じく、相続等を契機とした「区分所有建物の所有者不明化」の進行があります。

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<参考記事>

不動産投資家に影響あり!不動産登記法の改正内容とは!?

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今後、全国の区分所有マンション(以下、「区分マンション」)では、老朽化により建て替えや大規模な修繕が必要な建物が急増する見通しですが、現状のままでは多くのケースで有効な対策を打てないであろうとの指摘があります。

原則として、区分マンションでなにかの決議を行うには全区分所有者から一定割合の同意を得ることが法令で定められているのですが、特に、建て替えや大規模修繕といった住民生活に大きな影響を与える決議に対しては、後述する厳しい同意要件(多数決の同意数)が規定されており、利害関係の異なる所有者間でしばしば衝突の原因となってきました。

また、相続等により所有者不明となった部屋や所有者に全く連絡の付かない部屋に関しては、建て替え決議等の同意を得ることは現実的に不可能であることから、近年では法令の同意要件がボトルネックとなり、区分マンションの管理不全化や、老朽化した区分所有建物の再生が困難となる事例が急増しかねず、その対策が急務とされてきた経緯があるのです。

冒頭の「中間試案」は、こうした現実と厳しすぎる法令の同意要件のギャップを解消するための素案で、9月までのパブリックコメントを経て2023年度中の結論を目指すとされており、多くの不動産関係者の注目を集めています。

本稿では、この「中間試案」について、分かりやすく説明していきます。

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■現行法令下における建替え等の決議要件

まずは、現行法令下における、区分マンションの建替えや修繕などの決議要件を、おさらいしておきましょう。

主要な決議事項とその多数決要件は以下のとおりです。

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<決議事項と要件>

 

【出典】法務省ホームページ「区分所有法制の見直し」より抜粋

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たとえば、通常の区分マンションの建て替え決議には4/5以上、大規模修繕の実施には3/4以上の同意が必要となっています。(正確にいえば、決議要件には所有者数と議決権数があるのですが、本稿では要件が厳しいことをご理解いただきたい主旨のため詳細は割愛します)

老朽化した建物の建て替えや大規模な修繕が必要だとしても、それには多額の費用が発生したり、仮住まいへの引越しが必要となったりするため、これだけの同意数を得ることは容易ではありません。(一時金が拠出できない、通勤・通学に支障がある、寝たきりで動けない、家族との思い出が詰まっているなど、様々な事情があることでしょう)

しかも、この4/5以上、3/4以上といった数字には、所有者不明・連絡難の所有者を含んでいます。

たとえば区分マンションを建て替えたいとしても、所有者不明・連絡難の所有者が全体の1/5を超えていた場合には、仮に連絡の取れるすべての所有者が同意したとしても、建て替えを実行できないことになります。

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■中間試案で示された2つのポイントとは!?

では、今回の中間試案を見ていきましょう。

ポイントは大きく2つあります。

 

1つ目のポイントは、「区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」です。

ここでは、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない当該区分所有者を「所在等不明区分所有者」と定義し、この「所在等不明区分所有者」を決議の母数から除外する制度の創設を検討するとしています。

また、決議に参加しない無関心な区分所有者も円滑な決議を阻害しているとして、「普通決議」「復旧決議」など一定の範囲においては、出席者の多数決による決議を可能とする制度の創設も検討するとしています。

 

2つ目のポイントは、「区分所有建物の再生の円滑化を図る方策」です。

前述したように、現行法令下における建て替えの決議要件は4/5以上と大変厳格ですが、ここに大きくメスを入れる内容となっており、1つ目のポイント同様に「所在等不明区分所有者」を決議の母数からの除外し、「法令に定める決議要件の緩和」を検討するとして、二段構えの対策案となっています。

決議要件の緩和については、大きく2パターンが示されています。

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<建て替え決議の多数決割合の緩和に関する各案>

【A案】

基本的な多数決割合を4分の3に単純に引き下げた上で、客観的事由(※)がある場合には3分の2に更に引き下げる案

【B案】

基本的な多数決割合につき現行法の5分の4を維持した上で、客観的事由(※)がある場合には4分の3に引き下げる案

 

(※)客観的事由とは以下のいずれかに該当すること(該当要件にも複数案あり)

① 耐震性の不足

② 火災に対する安全性の不足

③ 外壁等の剝落により周辺に危害を生ずるおそれ

④ 給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ

⑤ バリアフリー基準への不適合

⑥ 建築完了時から【50年】【60年】【70年】が経過

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特に区分マンションの建て替えについては、所有者(住人)の実生活に大きく関わるため、決議の円滑化と住人の権利保護のバランスが難しく、中間試案でも意見が割れている印象を受けました。

正解のない難しいテーマではありますが、パブリックコメントや今後の検討過程においてどのような結論となるのか、引き続き注視していきたいと思います。

なお、今回の中間試案では、他にもいくつか区分マンション管理の実態に即した改善案が示されています。

詳細は、以下の法務省のホームページで公開されていますので、関心のある方は是非ご確認いただけたらと思います。

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<参考>

法務省ホームページ

「区分所有法制の改正に関する中間試案」(令和5年6月8日)取りまとめ

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