節税
ここ最近、レアルメディアでは退職金の増税やインボイス導入による実質的な大増税を取り上げたばかりですが、今度はふるさと納税の制度見直し(改悪)が総務省より発表されました。
ご存じの方も多いと思いますが、ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附を行うことにより、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度のこと。(上限金額あり)
建て前としては、自分の選んだ自治体への寄付なのですが、実際には多くの自治体が寄付のお礼として返礼品を用意しており、かつその返礼品が高額な特産品などであることから、「実質2,000円で全国の特産品を貰える制度」として人気を博してきました。
また、見方を変えれば翌年の所得税・住民税の節税になるため、特に、会社員・公務員の方でも取り組める貴重な節税方法の一つとしても知られています。
そんなふるさと納税に対して、6月27日、総務省より以下2つの発表がなされました。
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<ふるさと納税の見直し内容>
①募集適正基準の改正
②地場産品基準の改正
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これら変更は、次期指定対象期間(令和5年10月1日から令和6年9月30日までの期間)が対象となることも合わせて発表されたため、結論だけ言えば、今年のふるさと納税は9月までに行った方がお得になる可能性が高いといえます。
本稿では、今回のふるさと納税見直しの内容とその影響について、分かりやすく説明していきます。
総務省によると、ふるさと納税には大きく3つの意義があるとされています。
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第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。
それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。
第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。
それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。
第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。
【出典】総務省ホームページ『ふるさと納税の理念』より抜粋
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著者なりに解釈すれば、国民の税制への理解・関心を高め、地方創生を後押しし、そして各自治体がその取り組みを広く国民にアピールすることで健全な地方間競争を促そうという主旨から誕生した制度だといえます。
ふるさと納税のこうした目的に照らせば、いまの制度設計・運用に課題が多いのは確かです。
たとえば、「税制への理解」という意味では、制度開始当初こそ、確定申告による寄付金控除の申請が必須でしたが、平成27年度にワンストップ特例が導入されたことに伴い、条件付ではありますが確定申告不要となり、「寄付金控除」の仕組みを知らないまま、ふるさと納税を利用する方が増えたことでしょう。
また、「自治体の取り組み」についても、地域の行政・教育・環境保全などのアピールではなく、返礼品の豪華さばかりを競ってアピールしている場面が多く見受けられ、さらには本来その地域とは関係のない特産品や換金性の高い返礼品を用意する自治体まで現れる状況でした。(さすがにこうした状況には個別に総務省が対処していますが)
今回の発表には、こうした課題に対する牽制の意味合いもあったと推測されます。
今回の見直し内容は、冒頭に記載したように「①募集適正基準の改正」「②地場産品基準の改正」の2点です。
①募集適正基準の改正では、新聞やパンフレット等において返礼品の情報が大部分を占めるようなアピールの仕方は、『ふるさと納税制度は、寄附者が自らの意思でふるさとやお世話になった地方団体に寄附を行うもの』という制度主旨に反しているとしたほか、「寄附金に係る受領証の発行事務に要する費用」「ワンストップ特例に係る申請書の受付事務に要する費用」などを必要経費に算入することを求めています。
また、②地場産品基準の改正では、返礼品のうち、特に「熟成肉」「精米」については、加工だけではなく、原材料についても同一の都道府県内産であることを求めました。
これにより、たとえば輸入した海外産の牛肉を区域内で熟成させたものや、県外で収穫した玄米を区域内で精白したものを提供することは認められないということになります。
なお、見直し内容の詳細は以下サイトに詳しく記載があります。関心のある方は本稿と合わせてご参照ください。
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<参考>
総務省ホームページ 令和5年6月27日『ふるさと納税の次期指定に向けた見直し』
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では、これら制度見直しによって、今後のふるさと納税への影響はどうなるでしょうか?
現在、返礼品の調達にかかる費用は寄付額の3割以下、送料や事務費などの経費を含む総額は同5割以下とするルールが総務省により定められています。
①募集適正基準の改正によって、これまでは未算入だった金額も経費として5割以下ルールの対象となるため、「返戻品の内容(量・グレードなど)を下げる」または「返礼品に対する寄付金額を引き上げる」といったことが多くの自治体で発生する可能性が高いでしょう。
特に、ふるさと納税先として人気だったギリギリの経費率の自治体ほど、今回の改正による影響は顕著となるはずです。
また、返礼品として人気であった「熟成肉」「精米」については、取り扱う自治体が減少するほか、やはり「返戻品の内容(量・グレードなど)を下げる」または「返礼品に対する寄付金額を引き上げる」といったことが考えられるでしょう。
いかがでしょうか。
総務省は、今回の制度見直しによって、『ふるさと納税本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われるものと考えている』とのことですが、利用者目線でいえば大幅な改悪となることは疑いがありません。
制度主旨からすれば仕方のないことではありますが、「よりによって、値上げや増税にあえぐ今年でなくとも・・・」と思った方も少なくなかったのではないでしょうか。
ふるさと納税を検討しているのであれば、今年は9月までに終えた方が無難であることは是非覚えておきましょう。
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