資産運用
いよいよ2024年4月より、相続により不動産を取得した場合において、その取得を知った日から3年以内の相続登記申請が義務化され、正当な理由なくこれを怠った場合には過料が課されることとなります。
背景にあるのは、以前レアルメディアでも取り上げた所有者不明土地(※)の問題です。
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(※)所有者不明土地とは、
①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地
<参考記事>
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不動産の所有者は法務局の登記簿にて記録・管理されており、不動産の所有者が亡くなった際には、その不動産を相続した方が所有権移転の登記申請をすることになっているのですが、実際にはこれが徹底されていません。
理由は、「遺産分割協議が完了していない」「相続登記申請は義務でなく面倒」など様々ですが、相続をきっかけに不動産の所有者が不明となり、さらにその状態で相続が繰り返されると、全国的に所有者不明土地が加速度的に増えてしまいます。
所有者不明土地は、土地の管理が放置されることが多く、その利活用が阻害されるうえ、隣接する土地への悪影響も懸念されますが、令和3年の国土交通省の調査によると、所有者不明土地の割合は国土の24%にも上り、その原因の62%が相続登記の未了によるとのこと。
さらに、相続未了は高齢化の進展による死亡者数の増加によって、今後ますます深刻化するおそれがあるため、今回の相続登記申請の義務化に至った経緯です。
本稿では、2024年4月以降に義務化される内容について、分かりやすく説明していきます。
2024年4月に施行される相続登記の申請義務化の内容は、主に以下2点です。
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(1)
・相続で不動産を取得した相続人に対し、取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請を義務付ける。
・正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象。施行日前の相続でも、未登記であれば、義務化の対象(猶予期間あり)。
(2)
・相続人が申請義務を簡易に履行できるよう、負担の軽い新たな手続(相続人申告登記)を創設する。
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(1)に関して、特に注意すべきは、施行日前の相続についても、未登記であれば施行日から3年以内の登記申請が義務化される点です。
過料の適用除外となる「正当な理由」も、以下のような申請が真に困難なケースが列挙されており、安易な抜け穴となることはなさそうです。
大半の方にとっては、申請義務化と過料の罰則が実際に適用されると考えた方がよいでしょう。
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<正当な理由の事例>
ア 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
イ 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合
ウ 相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
エ 相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
オ 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
【出典】法務省ホームページ 令和5年3月22日付『相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン』より抜粋
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では、(2)に関して、相続人が申請義務を簡易に履行できるよう新設される「相続人申告登記」とはどのような手続きでしょうか?
3年以内の相続登記申請が義務化されるとしても、肝心の遺産分割協議が必ずしも3年以内に完了するケースばかりではありません。
また、前述のとおり、3年以内の申請ができない場合の「正当な理由」は、かなり厳格に運用されると予想されるため、「正当な理由には該当しないし、過料も課されたくはないが、3年以内の相続登記申請は難しい」といったケースが、それなりの頻度で生じることが懸念されます。
その際に活用するのが、この相続人申告登記です。
相続人が登記名義人の法定相続人であることを申し出ることにより、3年以内の相続登記申請が未了であっても、とりあえずは過料の適用対象外となります。
相続人申告登記は、他の法定相続人とは別に単独で申請できるため、遺産分割協議が完了せずとも申請できるほか、添付書類の簡略化といった便宜も図られることとなっています。
但し、相続人申告登記をしていても、遺産分割協議の成立時には、成立した日から3年以内に改めて相続登記申請が必要となります。(相続人申告登記には、自分の権利を他人に主張する効力はないため、自己防衛の観点からも相続登記申請は必要です)
ややこしい部分ではありますが、この点には注意しておきましょう。
いかがでしょうか。
今回の相続登記申請の義務化は、冒頭にご説明のとおり所有者不明土地問題の対策の一環です。
相続人にとって面倒には違いありませんが、国土の狭い日本の土地をしっかり管理・利活用していくためには、必要な取り組みなのだと思います。
なお、所有者不明土地問題の解消に向けては、今後も「登記名義人の死亡等の事実の公示」「登記漏れの防止」「住所変更未登記への対応」といった対策が順次実施される予定となっています。
以下にさらに詳しく説明されていますので、関心のある方は本稿と合わせて是非ご確認ください。
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<参考>
法務省ホームページ 令和5年6月付
法務省民事局『民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要』
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