資産運用
不動産投資をするうえで避けられないものといえば、空室。
特に、閑散期と言われる真夏や真冬の時期に退去が発生すると(空室になると)、次の入居者さんを探すのにとても苦労するのは、この業界では“あるある”の話です。
そのため、閑散期に催される不動産投資セミナーや賃貸運営セミナーなどでは、「いま人気の設備を取り付けましょう!」「差別化に繋がるリノベーションをしましょう!」「やはり広告料の積み増しが強いです!」といったネタで持ち切りとなることもあるようです。
実際、大家歴の長い著者自身も、閑散期の空室対策には毎年頭を悩ませています。
家賃を下げて募集したこともありますし、セミナーで挙がるような対策を実行したこともありますが、やはり一筋縄ではいかないものです。
本稿では、そんな閑散期の空室に対する対策に関して、著者自身の経験談も交えつつ分かりやすく説明していきます。
そもそも、賃貸運営における「繁忙期」「閑散期」とはなんでしょうか。
明確な定義はないものの、春の新生活に向けて引越しがピークとなる2月~4月、秋の転勤に伴う引っ越し需要が拡大する9月~10月頃を「繁忙期」と呼ぶことが多いようです。
繁忙期に関しては、以前こちらの記事でもご説明していますので、合わせてご参照ください。
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<参考記事>
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その逆で、1年のうちで特に引っ越し需要が縮小する時期があります。
地域差はありますが、一般に真夏の7月~8月と、真冬の12月~1月上旬頃がこれに当たり、この時期を「閑散期」と呼んでいます。
この時期は、引越しを伴う社会的なイベントもなく、わざわざ暑い真夏や寒い真冬に好んで引っ越しをする人は少ないということなのでしょう。
もちろん、閑散期といっても、人の動きが全くないわけではありませんが、空室を抱えた大家さん同士で少ない入居者を奪い合うことになるため、冒頭で紹介したような対策を検討する大家さんが増える時期となるのです。
それでは、閑散期の空室対策にはどのようなものがあるでしょうか。
本稿では代表的な対策を4つ、それぞれの注意点と合わせてご紹介します。
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<閑散期の空室対策事例>
①家賃の値下げ
②キャンペーンの実施
③大規模なリフォーム、リノベーション
④広告料の積み増し
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「①家賃の値下げ」ですが、これはそのまま募集家賃を引き下げることです。
賃貸物件には、エリアや立地、建物構造や築年数などによって、おおよその家賃相場があるのですが、その相場よりも明らかに低い家賃設定とすることで、近隣競合物件との差別化を図る対策です。
しかし、この対策は諸刃の剣でもあります。
閑散期の空室に気を揉んでいるのは他の大家さんも同じですから、競合物件が家賃の値下げに追従する可能性は十分に考えられます。
そうなると、せっかく値下げしても差別化が図れず、いたずらに家賃相場を下げただけの結果となるばかり。
さらには、同じマンション・アパートの他の入居者からの家賃減額要求を誘発してしまうことに繋がりかねません。
家賃相場を毀損するような大幅な値下げは最後の手段であり、安易に行わない方が良いでしょう。
では、他の空室対策についても、順番にご説明していきましょう。
「②キャンペーンの実施」とは、初期費用の割引(仲介手数料・保証料・火災保険料などの一部大家負担)、家具家電の無償提供、フリーレント(一定期間の家賃無料)などを指しています。
いざ引っ越しとなると家賃以外にも様々な一時費用がかかりますから、こうした初期費用を軽減するキャンペーンは入居者募集の訴求力となります。(特に、家賃相場が低い物件ほど、効果を発揮する傾向にあります)
しかし、なかには最初から短期間の引っ越しを繰り返すつもりの方や、資金がギリギリで滞納リスクの高い方もおり、せっかくのキャンペーンがそうした方を呼び込んでしまうこともあります。
契約条件に極端な短期解約へのペナルティを入れたり、入居審査で保証会社を必須としたりするなどの自衛策もセットで実行するとよいでしょう。
「③大規模なリフォーム、リノベーション」は、閑散期ならではの空室対策です。
繁忙期ならルームクリーニングだけで空室が埋まる物件でも、閑散期だと空室が長期化することは珍しくありません。
どうせ空室が長期化するなら、時間とお金を投下して大規模リフォームやリノベーションをして中長期的な競争力を向上させてしまおうという作戦です。
しかし、当然ながら相応の費用が必要となりますので、リフォームやリノベーションによる家賃増加・空室短縮効果によって、投下した費用が回収できるのかについて、じっくり計算する必要があります。
最後は、「④広告料の積み増し」です。
広告料とは、本来は仲介不動産会社が新聞広告などの「特別な広告」を打った際に支払う料金だったのですが、実際には仲介手数料に加えての追加報酬としての位置づけが定着しています。(仲介手数料には法令で上限金額が設定されているため、敢えて広告料の名目で報酬を授受する商慣習ができたようです)
地域によっては、閑散期には「この物件を決めてくれたら広告料を家賃のNヵ月分払います」といった広告料の積み増しが必須となっているのが実情です。
しかし、これも濫用は諸刃の剣です。
仲介不動産会社のなかには、「この大家さんは、過去に広告料をいくら払ってくれた」と記録しているところもあり、一度広告料を積み増してしまうと、それ以降は通常の広告料では積極的に協力してもらえなくなることもあります。
また、閑散期には、他の大家さんも広告料積み上げは当たり前に実施してくるため、よほど突き抜けた積み増し方をするか、広告料の積み増し+αの対策を取らないとなかなか差別化に繋がらなくなってきています。
いかがでしょうか。
「不動産投資は不労所得」というのは、今は昔。
賃貸運営、特に閑散期の空室を乗り切るためには、大家さんも試行錯誤を凝らさないと厳しい時代になったといえそうです。
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