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昨今、様々なモノやサービスの値上げが続いていますが、ECモール、なかでも国内で三大ECモールとも呼ばれる「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」が、ここ最近で相次いで大規模な値上げや改悪に踏み切ったことで話題を集めています。
これらECモールの人気を支える特徴として、
●各社の提供する有料・無料のサービスに登録・入会、または利用することで、
●各モールでの購入時に、ポイント付与や送料無料などの特典を受けられる
といった点が挙げられます。
例えば、有料会員サービス「Amazonプライム」に登録することで、Amazonでの一部買い物が送料無料となったり、楽天トラベルや楽天証券など楽天グループのサービス利用によって楽天市場での購入時に特典ポイントが付与されたり・・・、といった具合です。
商品の販売価格自体は店頭や他のECサイトと同程度であっても、こうした特典をトータルで計算するとお得に購入できることが多く、それがこうしたECモールの人気に繋がっていました。(昨今の物価高も相まって、ECモールの上手な活用は、節約術としても人気を博しています)
しかし、冒頭に記載のとおり、そんな大手ECモール各社が相次ぎ、サービスの値上げや改悪を発表する事態となっています。
本稿では、各社を取り巻く環境も含め、今後各ECモールがどのように変わっていくのかについてご説明していきます。
まずは、Amazonの変更点から見ていきましょう。
Amazonでは、冒頭にも触れた「Amazonプライム」の年会費・月会費が、8月24日より値上げとなりました。
具体的には、年会費は4,900円から5,900円に、月会費は500円から600円となり、値上げ幅は約2割と、かなり大幅な値上げです。
もっとも、同サービスは買い物時の特典だけでなく、「Prime Video」「Prime Music」といったサブスク的な特典も追加料金なしで利用可能なことや、米国など諸外国の料金と比べるとなお安価なことから、SNSなどでの反応を見る限り、今回の値上げは概ね受け入れられている印象です。
報道によると、Amazonは「サービスを長期的に継続する上での総合的な判断」として値上げの理由を明らかにしていない模様ですが、送料無料を実現するための配送コストの増加や、「YouTubeプレミアム」「Appleミュージック」といった競合するサブスクが先行して値上げを実施したことなどが要因ではないかと推察されます。
続いて、数年前より改悪の続く楽天市場です。
先日、楽天市場を運営する楽天グループ株式会社の2023年度第2四半期決算(※)が発表されましたが、グループ全体の傾向は従前と変わらない内容でした。
(※)参考URL
https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/results/
即ち、一言で言えば、楽天市場やフィンテック事業は好調ながら、楽天モバイル事業の大赤字が好調な他事業の利益を吹き飛ばしている構図は変わらないという内容です。
これを受けてか、楽天市場に更なる改悪が、直近で2つも発表されました。
1つは、「楽天市場アプリ」で購入すると、「+0.5%」の楽天ポイントを獲得できる特典が8月末を以って終了するというもの。
楽天市場アプリ自体は無料で利用できることから非常に人気のサービスでしたが、9月以降はアプリ利用のメリットはなくなってしまいました。
もう1つは、11月請求分より、楽天カードのポイント還元の計算方法が、「月間利用金額の合計→ショッピング利用ごとの金額」に変更するというものです。
たとえば、3,990円(税別)の買い物を月に10回するとします。
従来は、3,990円×10回=39,900円に対して100円で1ポイントの計算のため、399ポイントが付与される計算でした。
変更後は、3,990円に対して100円で1ポイントと計算するため、39ポイント×10回=3,900ポイントとなり、実質90ポイント目減りすることになります。
楽天市場では2022年4月にも、ポイント付与対象金額を税込価格ベースから税別価格ベースに変更したばかりで、僅か1年あまりでの更なる改悪は残念なところ。
また、2つ目の改悪は、正確には楽天市場ではなく楽天カードの改悪であるため、楽天市場でのカード利用時のみならず、街中で楽天カードを利用した際のポイント付与も同様に下がることとなります。
これまでは、楽天市場の利用頻度が少ない方にとっても、楽天カードのポイント付与率1.0%は魅力的でしたが、11月以降は同じ1.0%還元であれば他社カードが優位となるケースが増えることになります。
楽天カードをメインカードとして利用している方は、クレジットカードの乗り換えも検討した方がよいかもしれません。
最後に、Yahoo!ショッピングですが、こちらは競合2社と比べても更に大きな改悪が続いています。
背景にあるのは、グループの中核的決済手段であるPayPayが、国内で一定規模の会員規模・加盟店ネットワークを獲得し、いよいよ回収フェーズに移行しつつあること、そしてYahoo!ショッピング自体の戦略見直し(売上重視から利益重視)のためと言われています。
Yahoo!ショッピングの直近の改悪内容は、他2つのECモールと比べても非常に多く、かつ複雑なため、一部を抜粋してご紹介します。
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<Yahoo!ショッピングの改悪内容(抜粋)>
・「PayPayステップ」の達成条件難化およびポイント付与率実質低下(1月~)
・「5の付く日」のポイント特典上限が5000円→1000円に引き下げ(2月~)
・「5の付く日」のポイント特典が制約の多い商品券付与に変更(8月~)
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日ごろからYahoo!ショッピングを利用しない方にはピンと来ないかもしれませんが、上記以外にも、各種クーポンやほぼ定例化していた毎月のキャンペーンも続々と中止・縮小が打ち出されています。
このため、Yahoo!ショッピングでは客離れが顕在化しており、Yahoo!ショッピングを抱えるZホールディングスの決算資料(※)によると、22年度第3Q以降、主要ECモール事業の取扱高は成長率マイナスが続いているとのことです。
(※)参考URL
https://www.z-holdings.co.jp/ja/ir/presentations/earnings.html
この点、ECモール自体は好調な楽天市場とは状況が異なりますが、Zホールディングスはこの取扱高減少に対して『想定内での着地』としているため、少なくとも短期的にはYahoo!ショッピングにお得感が戻る可能性は低いといえそうです。
いかがでしょうか。
値上げ・改悪の背景は各社異なるものの、各社とも明確に反転攻勢できる材料に乏しく、「まだまだ値上げ・改悪が続く可能性が高い」と考えた方が無難だと思います。
さらに、こうしたECモールには、大手販売店だけでなく、中小・零細の販売店も多く出店していることから、10月からのインボイス制度開始によって、今度は販売価格の一斉値上げといった事態も不安視されるところです。
ここから三大ECモールが盛り返すのか、新興のECモールが台頭するのか、それともネット通販の構図が大きく変わるのか・・・、引き続き注目していきたいと思います。
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