資産運用
昨年9月、当時の日本銀行総裁・黒田東彦氏が、「当面、金利を引き上げることはない」「“当面”とは、数ヵ月でなく、2~3年」と記者会見で表明したことをレアルメディアで取り上げていました。
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<参考記事>
金融緩和策は継続!住宅ローン金利はどうなる!?
https://www.real-media.jp/article/618
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上記記事では、日本銀行の金利政策と住宅ローン金利の関係に触れたうえで、黒田総裁(当時)の発言が本当であれば、
・変動金利は、向こう2~3年は上がらない
・固定金利も、向こう2~3年は上がらない
・但し、黒田総裁(当時)の任期は23年4月まで。後任人事次第では方針転換もありうるので今後も注視
といった内容を解説していました。(詳細は上記記事をご参照ください)
そして、当時の記事から約1年。
10月末に行われた日本銀行金融政策決定会合では、当時の黒田路線の踏襲と一部見直しについて言及がありました。
本稿では、日本銀行の金利政策と、多くの方に影響があるであろう住宅ローンへの影響について、2023年11月最新版としてご説明していきます。
まずは、日本銀行の金利政策と住宅ローン金利の関係性についてく簡単におさらいしておきましょう。
住宅ローンの金利には、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類があることは皆さんもご承知のとおりです。
変動金利は、日本銀行の政策金利の影響を受ける「短期金利」を、固定金利は10年もの国債の金利に代表される「長期金利」を元に、各金融機関が独自に定める「引き下げ幅」を差し引くことで決定される仕組みです。
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<住宅ローンの金利>
①「基準金利(店頭金利)」を決定する
⇒変動金利は短期金利、固定金利は長期金利を根拠とする
②①から「引き下げ幅」を差し引いて、「借入金利」を決定する
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したがって、各金融機関の「引き下げ幅」が同じであれば、変動金利タイプでは短期金利が、固定金利タイプでは長期金利が、それぞれ住宅ローン金利に影響する要素となります。
それでは10月末に行われた日本銀行金融政策決定会合では、どのようなことが決まったのでしょうか。
結論からいえば、短期金利については現状踏襲(現在のマイナス金利政策を継続)、長期金利については利上げを容認する内容でした。
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<日本銀行金融政策決定会合の決定事項(概要)>
日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用をさらに柔軟化することを決定した。
具体的には、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を 1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする。
【出典】日本銀行 『当面の金融政策運営について(2023年10月31日)』より抜粋
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231031a.pdf
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長期金利を抑えるイールドカーブコントロール(YCC)については、2022年12月には上下0.5%程度を許容、2023年7月には上限1%までを許容といった形に段階的に引き上げてきた経緯があるものの、前回7月の変更からまだ3ヵ月しか経過しないなかでの再変更(上限1%→上限目途1%)であった点は特筆に値します。
今後、短期間での更なる長期金利の上限見直しや、いよいよ短期金利の見直しが現実味を帯びるのではないかとの観測が広がるのも無理のないところです。
本稿のテーマである住宅ローンへの影響でいえば、
・変動金利タイプは直接影響なし(但し、今後の金利上昇には要警戒)
・固定金利タイプは若干の金利上昇(今後、更なる金利上昇に要警戒)
ということになります。
こうした決定を受け、3メガバンクが11月の住宅ローン固定金利を揃って引き上げたことが報道されました。
固定金利に関しては、この金利政策の変更が早くも住宅ローンに影響したといえるでしょう。
そして、この後に懸念されるのは変動金利の金利上昇です。
国土交通省の調査によると、住宅ローンの新規利用者は毎年増え続けており新規貸出額は20兆円を突破、しかも変動金利を選択した方は7割超にも及ぶとのこと。
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<令和3年度実績>
(1)個人向け住宅ローンの新規貸出額は、令和2年度より増加し、約20.8 兆円。
(2)個人向け住宅ローンの新規貸出における金利タイプ別割合は、引き続き変動金利型の割合が最も高い(7割超)。
【出典】国土交通省ホームページ
『令和3年度住宅ローン新規貸出額、前年度より増加し、20 兆円超』より抜粋
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000182.html
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この調査結果は令和3年実績のため、直近の日本銀行の金利政策変更を受けて、足元ではもう少し変動金利を選ぶ方は減っている可能性もありますが、それでも多くの方が変動金利を選択していることはほぼ間違いないでしょう。
その意味で、住宅ローン利用者への影響が深刻化するのは、もう少し先といえるのかもしれません。
既に変動金利で住宅ローンを借りている方、これから変動金利で住宅ローンを借りようか検討されている方は、特に短期金利(政策金利)の動向に注視しておくべきでしょう。
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