節税
先日、企業が接待・会食などで使う交際費について、税法上の損金として非課税にできる上限額を、現行の5000円から1万円に引き上げる方針を2024年度税制改正大綱に盛り込むことが報じられました。
背景には、バブル期の1990年代初頭には約6兆円あった交際費が、最近では3兆円ほどに半減したこと、昨今の物価高騰により1人5,000円以下での社外接待が困難となりつつあることが挙げられており、企業間取引の活性化とコロナ禍でダメージを受けた飲食産業の活性化に期待が寄せられています。
また、23年度末までの時限措置であった、交際費に関連する2つの特例に関しても、2年間の延長(再延長)の方針であることも、合わせて報じられました。
インボイス制度導入や電子帳簿保存法改正など、企業(特に中小零細企業)に厳しい税制改正が続くなか、今回の改正は企業にとって朗報となるのでしょうか?
本稿では、23年12月18日現在で判明している情報を元に、2024年度税制改正大綱に盛り込まれるとされる交際費基準の改正内容とその影響について、速報としてお届けします。
まずは、交際費の現行ルールをおさらいしておきましょう。
法人税は、「利益(益金)」から「費用(損金)」を差し引いた金額に対して税率を乗じて計算します。
そのため、交際費が損金として扱えるかどうかは、その企業が納める法人税額に直結します。
税法上、交際費は損金不算入が原則となっていますが、2006年度の税制改正で1人あたり5,000円以下の飲食費に限り、交際費から除外し、別の勘定科目で損金計上できることとなった経緯があります。
これにより、多くの企業では1人あたり5,000円以下の飲食費については、会議費として全額損金計上をするようになったことで、「5,000円以下は会議費、5,000円超は交際費」のルールが実務で広がることとなりました。
※正確にいえば、会議費として会計処理するためにはいくつかの要件を満たす必要があります。詳しくは国税庁ホームページなどをご参照ください。
また、会議費として会計処理できない場合においても、2023年度末までは、
①飲食費が1人あたり5,000円を超えた場合、50%を損金算入できる
②中小企業(資本金が1億円以下の企業)は、交際費を年間800万円まで損金算入できる
といった2つの特例が適用できます。(中小企業は、①か②の特例を選択適用)
これを整理すると、交際費の現行ルールは以下のようになります。
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<現行ルールの交際費基準>
(1)1人あたり5,000円以下
【大企業】会議費
【中小企業】会議費
(2)1人あたり5,000円超
【大企業】特例によって、50%損金算入
【中小企業】
特例によって、年間800万円まで全額損金算入または50%損金算入
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たとえば、大企業では、4人で20,000円以下の飲食費であれば会議費として全額損金算入できますが、4人で30,000円の飲食費では会議費として計上できないということになります。
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続いて、今回の改正方針をご説明しましょう。
ポイントは2つあり、1つ目は、交際費から除外できる上限額について、1人あたり5,000円から、同10,000万円まで引き上げようというもの。
もう1つは、先ほど挙げた2つの特例を2年間延長しようというものです。
たとえば、交際費900万円(1人あたり10,000円)の中小企業を例に考えてみます。
現行ルールでは、特例によって、800万円までは全額損金計上できるものの、100万円は損金計上できません。
法人税実効税率33.58%とすれば、33万5,800円(100万円×33.58%)の法人税が課税されることになります。
これが改正後のルールでは、100万円が会議費として全額損金計上できるため、法人税の支払いは0円(0円×33.58%)となります。
昨今の物価高騰を踏まえても、1人あたり10,000円を超える飲食はそう多くはないでしょうから、たしかに企業間の接待・会食の機会が増え、取引活性化や飲食業界の支援にも繋がる効果は期待できそうです。
しかし、一方では、「ギリギリの経営が続く企業(特に中小零細企業)には恩恵を感じにくく、一部の大企業にメリットの集中する不公平な方針だ」「大企業といっても、実際には多額の接待交際費を使える立場の極めて限られた人だけが恩恵を受け、大多数の一般社員や派遣社員には全く関係ない」といった厳しい声が、SNSなどを中心に寄せられています。
直近でも、インボイス制度導入は、売上規模の小さい非課税事業者に負担を強いる税制改正でしたので、大企業優遇に対する不満が再燃するのは仕方ないのかもしれません。
また、今回の見直しを「将来的な法人税増税の布石ではないか」との見方もあり(実際、税制調査会において、中長期的な法人税の引き上げに関する意見があったという報道もあります)、残念ながら現時点で朗報と歓迎するには時期尚早といえそうです。
(参考)国税庁ホームページ 『接待飲食費に関するFAQ』
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