節税
昨年12月14日、『令和6年度税制改正大綱』が発表されました。
政府与党によると、同大綱のトピックスは、
・「賃金上昇は、コストでなく、投資である成長の原動力」と位置付け、賃上げ促進、国内投資促進を重点的に措置
・賃上げ促進税制では控除率の上乗せについて、さらに高い賃上げ率の要件を創設
とのことで、とにかく「賃金上昇」を強調しているようです。
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<参考>自民党ホームページ
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同大綱はPDF120頁超のボリュームにつき、すべての内容はご紹介できませんが、本稿では著者が特に気になったポイントに絞ってお伝えしようと思います。
まずは、かねてより話題であった「所得税・住民税の定額減税」です。
いきなり「賃金上昇」とは直接関係しない税制だと思うのですが、同大綱の最初に記載され、多くの頁を割いて説明されている点からは、政府与党の力の入れ具合が伺えます。
内容としては、事前報道どおり、
・本人及び同一生計配偶者又は扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円の減税
・令和6年分の所得税に係る度の合計所得金額1,805万円以下(給与収入の場合2,000万円以下)に限る
といったものでした。
但し、今回記載された具体的な手続きを読む限り、実務面では相当に面倒な運用となりそうなことが新たに分かりました。
以下、給与所得者の場合の手続きの概要です。(同大綱の記載から読み取った内容につき、詳細は異なる場合があります)
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<給与所得者の定額減税手続き>
①所得税額の減税(控除)
・令和6年6月以降の最初の給与(賞与含む)につき、源泉徴収をされる所得税額から控除
・控除しきれない場合、それ以降の給与等から順次控除
・年末調整、確定申告で再計算のうえ、再度控除額を精算??
(※)同大綱の記載からは読み取り切れず、詳細アナウンス待ちと思われます
②個人住民税の減税(控除)
・特別徴収義務者は、令和6年6月給与からの特別徴収をしない
・令和6年分の個人住民税の額から特別控除の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月給与から毎月徴収
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納税の実務を考えると、たしかにやむを得ないとも思うものの、これを対応するのは行政ではなく、企業側です。
給付金ではなく「減税」の体裁に固執した結果なのでしょうが、特に、中小企業には、こうした経理・会計処理だけでも大変な負担となることは想像に難くありませんので、もう少しやりようがなかったのか、非常に残念に思うところです。
もう1つの注目は、やはり「子育て支援政策」でしょう。
同大綱では、子育て支援に関連して、「住宅ローン控除の拡充」「住宅リフォーム税制の拡充」「生命保険料控除の拡充」の3つが示されています。
但し、このうち住宅関連の減税については、ほぼ23年度までの軽減内容を24年度も延長するといったもので、かつ延長期間も1年間の時限措置です。
僅か1年間の減税措置延長が、いかほどの子育て支援となるのか、大いに疑問の残る部分ではあります。
また、生命保険料控除の拡充についても、拡充幅はごくごく僅かなうえ、一定額以上の生命保険料を支払う場合に限った支援です。
この3つの減税措置では、ほとんど子育て支援には繋がらないのでは、というのが著者の正直な感想です。
子育て支援や少子化対策に関しては、以前レアルメディアの別記事でも説明していますので、合わせてご参照いただければと思います。
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<参考記事>
『児童手当の拡充(案)』の修正案が判明!これで本当に大丈夫か!?
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これらの一方、将来の増税に向けた検討に関する記載は、今回もしっかり盛り込まれていました。
具体的には、
・私的年金等に関する公平な税制のあり方
・人的控除をはじめとする各種控除の見直し
・記帳水準の向上等
のキーワードが明記されました。
私的年金制度の見直しについては、以前別記事でも取り上げました。
世論の猛反発を受けてか、現時点で強行実施する姿勢こそ見せていませんが、将来の制度変更(増税)に向けて、含みを持たせた記載となっています。
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<参考記事>
【速報!】年金不足に加えて「退職金」にも増税が決まったって本当!?
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また、記帳水準の向上に関しては、専用の会計ソフトの導入や複式簿記による帳簿記帳を推し進める考えが記されました。
直近で開始されたインボイス制度や電子帳簿保存法の対応だけでも、既に多くの中小・零細事業者から悲鳴が上がっている状況ですが、ここからさらに管理強化をしていく意向が伺える記述です。
いかがでしょうか。
政府与党からは、「賃金上昇」のメッセージが発せられていますが、著者が見る限り、同大綱の中身は1回限りの「定額減税」や名ばかりの「子育て支援」、今後の増税に向けたエクスキューズが多くの誌面を埋めている印象でした。
肝心の「賃上げ」に関しては、「給与支給増加時の税額控除延長」など、多少は触れられているものの、控え目に言っても同大綱のメインとは感じにくい扱いでした。
その一方、「定額減税」「記帳水準の向上」など、企業の事務手続きを煩雑にする内容が目立っており、むしろ中小・零細企業にとっては、賃上げの原資を煩雑化する事務の経費に回さなくてはならなくなるのでは?といった危惧すら覚えます。
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令和6年度税制改正大綱は、以下リンク先に掲載されていますので、全体像を確認したい方は是非チェックしてみてください。
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<参考>自民党ホームページ
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