資産運用
不動産投資の融資を受けるために金融機関を訪ねると、担当者の方から「この案件は本店決裁となりそうです」「支店枠は一杯なので、次からは本店決裁となります」といったことを伝えられた経験はないでしょうか?
金融機関においても、一般企業と同じように「決裁権限」が決められています。
詳しくは後述しますが、企業や個人ごとに割り振られた融資残高等を基準に、一定金額までの融資は「支店(支店長)決裁」、それを超えた融資は「審査部決裁」→「役員決裁」→「頭取決裁」といった形で、より上位者の決裁が必要となる仕組みです。
これだけを聞くと、「それは金融機関の“内部”の話であって、投資家には関係ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、不動産投資では、この「本店決裁」と「支店決裁」の違いは、投資家にとっても大きな影響があります。
本稿では、この違いと投資家への影響について、分かりやすくご説明していきます。
不動産投資では、好条件の案件ほど、競合する投資家らと資金調達の“スピード勝負”になる傾向が強いことは、ご存じの方も多いかと思います。
好条件の案件では、売り出しと同時に複数の買い手候補が現れることが珍しくないため、売主としては「現金購入できる相手」や「融資承認を取り付けた相手」と確実に取引したいと考えるケースが多いためです。(ときには、値段を吊り上げる「買い上がり」に発展することもあるのですが、それは別の機会にご説明します・・・)
その意味において、不動産投資の融資では、金利や融資期間といった融資条件も然ることながら、相談した金融機関の回答スピードが非常に重要なポイントとなります。
その点、スピード感を期待できるのは、その案件を「支店決裁」で取り扱ってくれる金融機関です。
一般に、融資相談を受理した金融機関は、以下のような決裁手続きを踏むことになりますが、ざっくり「支店決裁」では半分のプロセスで審査が完了するためです。
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<金融機関内の決裁手続き(イメージ)>
(1)情報を整理し、上席(融資課長等)の承認を得る
※必要に応じて、追加資料・追加情報を集める
(2)支店内決裁を起案し、支店長の承認を得る
※必要に応じて、追加資料・追加情報を集める
⇒「支店決裁」案件はこれで手続き完了!
(3)本店決裁を起案し、本店(審査部等)の承認を得る
※必要に応じて、追加資料・追加情報を集める
(4)決裁者(場合によっては役員や頭取)の最終承認を得る
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さらに、「本店決裁」では、表面的なプロセスの違い以上に「支店決裁」よりも審査時間が長くなる傾向にあります。
その理由は、支店と本店の審査における「立場の違い」です。
支店はいわば営業現場であり、融資残高などのノルマを負っています。
そのため、支店としては「なるべく融資残高を伸ばしたい=融資したい」という思惑があり、その点で投資家とも利害が一致しやすいのです。
また、支店は投資家から直接、案件の詳しい説明を受けるため、決裁書に落としきれない事情や数字では表現できない投資家の人柄や性格・熱意等といった定性面も、ときには評価に繋がることがあります。
その一方、本店の審査部の役割は、貸し倒れなどのリスクを極小化することですから、やはり根本的に営業現場たる支店との温度差は否めません。
また、本店では、基本的に支店から提出された決裁書やその添付資料(投資家の決算書等)といった客観的な情報に基づき審査を行うため、不明点や不確実な箇所があれば、何度でも追加の資料・情報を支店に求めてきます。
「審査部⇔支店⇔投資家⇔関係者(売主・不動産業者等)」で、何度も情報の授受をしていたのでは、好条件の案件ほど“手遅れ”になってしまう可能性が高いわけですが、「本店決裁」の案件ともなれば、そうした事情はなかなか考慮してもらえないわけです。
このように考えると、やはりスピード勝負となりそうな案件ほど、「支店決裁」で扱ってくれる金融機関に融資の相談を持ち込みたいところです。
「支店決裁」と「本店決裁」の決まり方は金融機関によって異なりますし、第三者の投資家がこれを正確に把握することは難しいものですが、おおよその共通項はありますので、最後にそれをご説明しておきましょう。
①金融機関の形態
一般に規模の大きい金融機関ほど、支店に任せる裁量は大きくなります。
たとえば都市銀行にとっての1億円の融資と、地方の信用金庫の1億円の融資では、やはり金融機関のリスク許容度は違うわけで、必然「決裁権限」の決まり方も変わってくることでしょう。
そのため、イメージとしては、「都市銀行>第一地銀>第二地銀>信用金庫・信用組合」といった考え方で大きくは外れないはずです。
②支店の位置づけ
同じ金融機関でも、支店によって「支店決裁」とできる融資上限額は異なることが一般的です。
いわゆる地域の旗艦店とされる支店には上位等級者が支店長となることが多く、「支店決裁」とできる枠も大きく持っています。
逆に、小規模企業や個人を主たる取引先とする小さい支店では「支店決裁」の上限が低いことが多いようです。
いかがでしょうか。
繰り返しになりますが、好条件の案件ほど“スピード勝負”となるのが不動産投資の厳しいところです。
金融機関側の内情にも関心を持ち、少しでも有利に立ち回る術を学んでいきましょう。
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