資産運用
少し前に、ある相談者の方から「不動産業者から、住宅ローンを使った不動産投資を提案された。絶対バレないし、他の人もやっているから大丈夫だと言われたが、どう思うか?」という質問をいただきました。
言わずもがな、住宅ローンは「自分が住むための不動産」を購入するときに利用できる金融商品ですから、不動産投資に住宅ローンを利用することはできません。
詳しくお話を聞けば、今回のご相談者の方もそれは百も承知だったのですが、不動産業者の強気の姿勢を見て、「不動産投資の世界では案外みんなやっていることなのでは・・・?」と思い、著者への相談に繋がったということでした。
実際のところ、全国の不動産投資家のうち、どの程度の方が住宅ローンで不動産投資をしているのかは分かりません。
報道や統計で知れる件数は、不正行為が“発覚した”件数であって、水面下でどのくらいの不正が行われているのかは調べようがないからです。
しかし、確実に言えることは、
絶対に、住宅ローンで不動産投資をしてはいけない!
ということです。
詳しくは後述しますが、万一不正が発覚すれば大変な事態に陥る可能性が高く、とてもリスクに見合った行為ではありませんし、そもそも金融機関に対する“詐欺”行為の片棒を担ぐ(見方によっては利益を受ける投資家自身が主導したとも取れる)話です。
どんな事情があっても、絶対にNGであることは最初に強調してお伝えしたいと思います。
本稿では、特に投資初心者の方への改めての注意喚起の意味を込めて、住宅ローンによる不動産投資の危険性について、ご説明していこうと思います。
大前提として、なぜ不動産業者は住宅ローンによる不動産投資を提案してくるのでしょうか?
理由はいくつかありますが、
・不動産投資用のローン審査に通らない方でも、住宅ローンなら審査に通ることがある
・不動産投資用のローンの融資条件(短期間・高金利)では儲かるシミュレーションが描けないが、住宅ローンの融資条件(長期間・低金利)であれば描ける
・住宅ローン減税の節税効果を、不動産投資による儲けと説明することができる
といったところが多いのではないかと思われます。
ご存じの方も多いと思いますが、住宅ローンは「住宅購入の推進」という社会政策的な観点から融資条件が優遇されており、さらに住宅ローン減税といった税還付の制度まで整った、極めて借り手に有利な特別な金融商品です。
また、その方の給与(毎月の給料やボーナス等)や預貯金が主な返済原資であるため、金融機関の審査も、借り手の資産背景や属性(年齢・年収・勤続年数等)にウェイトが置かれ、「年収のN倍まで」といった融資上限を設けることで、無理なく返済できる範囲で融資を行う建前を取っています。(もっとも、昨今の歴史的低金利&変動金利一辺倒な融資状況を見ると、必ずしもそうは言えない現実もありますが・・・)
その一方、不動産投資用のローンには、社会政策的な支援はありません。
また、主たる返済原資は原則として入居者さんからの家賃収入であるため、借主の資産背景や属性だけでなく、賃貸運営の経験や実績も審査基準に含まれることが一般的です。
審査が複雑になったり、返済原資の確実性が低くなったりした分は融資条件に転嫁されますから、住宅ローンよりも条件が悪いのは当たり前なのです。
これは、特別に不動産投資用のローン審査が厳しいとか、融資条件が悪いということではなく、金融機関の融資全体のなかでも、住宅ローンが特別に優遇されていると理解すればよいでしょう。
つまり、先ほどの不動産業者の狙いをもう一段踏み込んでいえば、住宅ローンを利用することによって、
・正攻法では儲からない物件でも、売ることができる
・正攻法では融資の通らない投資家にも、売ることができる
ということになるわけです。
当然、騙された金融機関側は堪ったものではありません。
本来必要な審査をせずに融資をさせられたばかりか、貸し倒れリスクを融資条件で回収できない状況に置かれてしまいます。
「しっかり返済すれば問題ないだろう」という話ではないことを、ご理解いただきたいと思います。
最後に、もし住宅ローンを利用して不動産投資をしてしまい、それが金融機関にバレたらどうなるのかについても、お話しておきましょう。
実際に不正融資が発覚した事例としては、
・金融機関から借り手宛ての郵便物が届かない
・人事異動等で金融機関の担当者が挨拶にきた
・その不動産業者の悪事がバレて、関わった融資案件が全件調査となった
といったパターンによる発覚が多いようです。
金融機関にバレた後に起こることは大きく2つと言われています。
①融資条件の見直しが入る
金融機関で改めて不動産投資用の審査を行い、融資条件(金利や融資期間)の見直しが入るパターンです。
元々が住宅ローンの融資条件ありきで購入した収益物件だとすれば、条件見直し後はローン完済まで赤字が続くこともあるでしょう。
それでも、もう1つのパターンよりは遥かにマシといえます。
②一括返済を求められる
金融機関から契約解除を通告され、指定期日までに借入残高の一括返済を求められるパターンです。
多くの場合、収益物件を売却しても返済しきれないでしょうし、不正取引が発覚した投資家に別の金融機関が融資してくれる可能性は低いでしょう。
現実的に一括返済は不可能なことが多く、自己破産を含めて弁護士マターとなってしまうことでしょう。(悪質な場合は、自己破産による免責すらも難しいという話すらあります)
いかがでしょうか。
住宅ローンによる不動産投資は、バレたときの代償はあまりに大きく、決して手を出してよいスキームではありません。
そもそも、不動産投資用のローンでは儲からない(または審査に通らない)ということであれば、購入する物件に問題があると考えるべきです。
本稿によって、住宅ローンによる不動産投資を始める方が一人でも減ってくれれば幸いに思います。
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