資産運用
近年、「マンションの建物管理費が値上げとなった!」という声を多く耳にします。
建物管理費とは、マンション全体に対する建物の保守・保全、共用部の管理・清掃等に要する費用、即ちビルディングマネジメント(Building Management)全般に関する費用のこと。
通常、マンションごとに建物管理会社を選定し、建物管理業務を一括して外注するケースが多く(外注せず、マンション住民で組織する管理組合が直接建物管理をする場合もあります)、建物管理費は、「①建物管理会社への外注費(固定費)」と、「②それ以外の費用(水道光熱費・保険料、小修繕費等)」を合算した金額で構成されています。
この建物管理費が、近年値上げされる事例が増えているとのことですが、背景には何があるのでしょうか?
本稿では、建物管理費の値上げの背景について、分かりやすくご説明していきます。
先ほど、マンションの建物管理費の内訳には、以下2つの費用があるとご説明しましたが、値上げの要因は片方ではなく、この両方に潜んでいます。
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<マンションの建物管理費の内訳>
・建物管理会社への外注費(固定費)
・それ以外の費用(水道光熱費・保険料、小修繕費等)
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前者の「建物管理会社への外注費(固定費)」に関しては、人件費高騰の影響が直撃しています。
建物管理会社における人件費とは、自社社員の人件費と再委託先への業務委託費(広義の人件費)の合計です。
自社社員と再委託先の使い分けは会社によって異なりますが、通常はマンション管理組合との窓口には管理業務主任者等の専門資格を保有する自社社員を充て、マンションの管理人・巡回員や清掃員等は再委託先の人員を充てることが多いようです。
昨今の政府からの賃上げや働き方改革の要請もあり、自社・再委託先を問わず、人員単価は増加傾向にあり、さらに同じ人員で回せる仕事量は減少傾向にありますから、建物管理会社における人件費(原価)は上昇する一方です。
原価上昇を企業努力で吸収するにも限界がありますから、ここへきて建物管理会社から管理組合に対して、管理内容の見直し(業務削減)や、外注費の値上げ交渉が増えている、という経緯です。
今後も人件費高騰は止まらないでしょうから、「建物管理会社への外注費(固定費)」に起因する、マンションの建物管理費値上げは今後も続くことが予想されます。
そして、マンションの建物管理費の値上げについては、「建物管理会社への外注費(固定費)」以外の要因も多数存在します。
特に影響が大きい要因は以下のようなものです。
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<建物管理費の主な値上げ要因>
・電気代、ガス代の値上げ
・火災保険料の値上げ
・小修繕コストの値上げ
・消費増税の影響(インボイス制度導入を含む)
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順番に説明していきましょう。
まずは、「電気代、ガス代の値上げ」です。
通常、マンション共有部には電灯や冷暖房設備、給湯設備等が設けられていますが、これらの使用に伴う電気代・ガス代は、管理組合が負担しています。(管理組合が契約先の電力会社・ガス会社等に直接支払う場合と、建物管理会社が間に入って精算する場合があります)
電気代・ガス代の高騰は、管理組合の収支にも影響を与え、やがては建物管理費の値上げの形で支払原資を確保せざるを得なくなるわけです。
マンションの総会資料等には、毎月・毎年の電気代・ガス代が記載されているはずですから、数年前の料金と比べることでその影響の大きさが分かるかと思います。
「火災保険の値上げ」も深刻です。
通常、マンションの室内(専有部分)には各部屋の所有者または住民がそれぞれ個別に火災保険を契約していますが、マンション共用部分は管理組合が一括して火災保険を契約し、保険料を支払っています。
しかし、以前レアルメディアでも取り上げましたが、火災保険は保険料の値上げや長期契約割引の縮小が続いているのです。
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<参考記事>
火災保険がまた値上がり?!最長契約年数も10年から5年に変わります
https://www.real-media.jp/article/449
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マンションによっては、契約更新のタイミングで保険会社や保険内容の見直しを進めるケースも出てきていますが、それでも中長期的な保険料の増額は避けられないでしょう。
保険料の支払原資は、言わずもがな建物管理費ですから、保険料の値上げが続けば、必然建物管理費も値上げせざるを得ません。
次に、「小修繕コストの値上げ」です。
マンションの建物管理をするうえでは、大規模修繕とは別に汚破損した設備の補修・交換などが随時発生します。
通常、こうした小修繕は、建物管理会社への外注費(固定費)とは別に、発生都度に管理組合の予算から支出しますが、工務店等の人件費増加や資材の高騰を受けて、この単価もまた数年前と比べても大きく上がっています。
最後は、「消費増税の影響」です。
ここで挙げた、「電気代・ガス代」「火災保険料」「小修繕コスト」は全て課税対象ですから、本体価格の値上げに加えて、消費増税分の支出増も伴います。
消費税が5%や8%の時代の試算に基づく建物管理費が設定されていた場合、税率差分の支払原資が不足するのは当然のことです。
また、マンションによっては、消費税非課税事業者に前述した小修繕対応等を依頼することもあったかもしれません。
詳しい仕組みの解説は省きますが、その場合、インボイス制度導入による実質的な増税分が、支払額にさらに上乗せされるケースも考えられます。
マンションの建物管理費は扱う金額が大きい分、消費増税やインボイス制度導入による負担増も、軽視できない規模となることがあるのです。
いかがでしょうか。
このように、マンションの建物管理費値上げには複数の要因が重なっており、少なくとも短期的な解消の見通しは立たない状況です。
残念ながら、今後はまず間違いなく建物管理費は上がるもの(二度目、三度目の値上げもあるもの)と思っておいた方がよさそうです。
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