資産運用
先日、実質賃金の減少が23ヵ月連続となり、リーマンショックにより景気低迷した2007年9月~2009年7月と並ぶ、不名誉な最長記録をマークしてしまったことを取り上げました。
---------------------------------------------------------
<参考記事>
---------------------------------------------------------
大方の予想どおり、その後も実質賃金の減少は止まらず過去最長を更新し続けました。
目先で潮目を変える可能性があるとすれば、春闘による一斉賃上げが数字に反映する5月以降であろうと言われており、岸田政権も春闘の成果には大きな期待を寄せていたようです。
そうした状況下、いよいよ5月度の実質賃金(速報)が厚生労働省から発表されました。
期待どおり、実質賃金の減少記録は更新をストップできたのでしょうか?
本稿では、厚生労働省の発表した5月度速報の内容と今後の展望について、分かりやすくご説明していきます。
まず、実質賃金とこれを巡る近年の経緯について、簡単にだけおさらいしておきましょう。
実質賃金とは、労働者が実際に受け取った給与(名目賃金)に対して、物価の増減分を調整して計算した指数です。
単純な給与の増減は名目賃金で測ることができますが、モノやサービス等の価格は日々増減していますので、名目賃金が増えても生活が楽になったり、消費マインドが活性化したりするとは限りません。
特に昨今のような物価高騰の続く場面では、名目賃金の増加と物価上昇のバランスが重要ですから、とりわけ実質賃金の動向に注目が集まるというわけです。
ここ数年、一部企業は、物価高対策や政府からの要請を受け、賃上げを繰り返し実施しており、給与(名目賃金)は上昇傾向にありました。
しかし、物価高騰がこれを大きく上回ったことで実質賃金は減少を続け、冒頭に記載のとおり、実質賃金の減少は過去最長を更新し続けてきた経緯があります。
そして、岸田政権や一部有識者が目先の転換点として期待を寄せていたのが、春闘による一斉賃上げです。
春闘の賃上げ効果は早ければ5月より数字に現れるため、いよいよ実質賃金の減少記録更新がストップできるのか、5月度の速報に注目が集まっていたというわけです。
それでは、注目の24年5月度の結果はどうだったのでしょうか。
厚生労働省の発表した速報によると、
・名目賃金に当たる現金給与総額は297,151円(+1.9%)
・実質賃金指数は85.2(▲1.4%)
となっており、残念ながら実質賃金のマイナスは継続し、連続減少記録は26ヵ月とさらに更新する結果となってしまいました。
-----------------------------------------------------
<参考>
厚生労働省ホームページ 『毎月勤労統計調査 令和6年5月分結果速報』
-----------------------------------------------------
同資料によると、『消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は、3.3%上昇』とあり、春闘による一定の賃上げ効果は見られたものの、それを物価高騰が大きく上回るという、これまでと同じ傾向であったことが伺えます。
春闘による賃上げがなければ、実質賃金はより大きく減少した可能性が高いことを考えれば、各企業の努力や政府からの働きかけには一定の成果があったといえましょうが、それでも政治に求められることは“結果”であるはず。
この不名誉な連続記録更新は、一体いつまで続くのでしょうか?
ここからは、著者の個人的な考察を少し書かせていただきます。
シンプルに考えて実質賃金のマイナスを止めるには、「物価上昇を抑える」or「給与を大幅に引き上げる」のどちらか、またはその両立しかありません。
前者については、残念ながら当面の改善は難しいとの見方が優勢です。
インボイス導入による実質的な消費増税、賃上げの副作用ともいえる人件費高騰、さらには10月施行予定の社会保険の適用拡大など、24年度も企業を取り巻く環境はいっそう厳しくなる見通しで、これらは巡り巡ってモノやサービスの価格に転嫁せざるを得ません。
また、これに追い打ちをかけるように、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が24年5月使用分を以って終了しました。
---------------------------------------------------------
<参考記事>
---------------------------------------------------------
8月を目途に再開することが報じられましたが、既に首都圏や関西圏では記録的な猛暑となっており、家計の負担増&企業のコストアップのダブルパンチとなって、一時的にはさらなる物価高騰を招くことになるでしょう。
さらには、足元160円前後まで進行する円安についても、根本的な解消方法はなく、アメリカの金利動向次第、という様相を強めています。
アメリカにも景気後退の兆しはあるとはいえ、円安の一巡にはまだ相応の時間を要するとの見方が支配的です。(一部で指摘されているような、日米の金利差拡大を解消する規模の利上げを強行すれば、それこそ日本経済は一気に崩壊の危機で現実的ではありません)
こうした内外の要因を踏まえると、現状で「物価上昇を抑える」ことは非常に難しいと言わざるを得ないでしょう。
その一方、後者に関しては、緩やかながらも実現していくのかもしれません。
但し、物価上昇の内訳の大部分が、ディマンドプルではなく、コストプッシュによるものであるため、近年の物価高騰のペースを超える賃上げが出来る企業は限定的でしょう。
あくまで楽観的に見ればですが、春闘の結果が完全に反映され(5月は未反映の企業もあるため)、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の補助が再開する9月が、実質賃金のマイナスを止める可能性のある、次のポイントといえるかもしれません。
Real Media メールマガジン登録完了
不定期(月1回程度)にてお役立ち情報のお知らせを
メルマガにてお送りさせていただきます
未来に向けての資産運用にご活用くださいませ。