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身近な方が亡くなった場合、家族・親族との間で相続の問題が発生することがあります。
相続とは、亡くなった方の財産(すべての権利・義務)を、特定の人に引き継がせる手続きのこと。
引き継ぐ相手や内容は、遺言によって指定することもできますが、原則は「配偶者」および「子」「親」「兄弟姉妹」のいずれかが法定相続人となることが、民法によって決められています。
ところで、相続の対象は、必ずしもプラスの財産に留まりません。
故人の残した資産(プラスの財産)よりも、負債(マイナスの財産)が大きければ、相続人は経済的な負担を引き受けることになってしまいます。
また、そうでなくとも、故人やほかの家族・親族との関係が良好でなかったり、相続をきっかけに家族・親族間でトラブルなりそうだったりすれば、法定相続人であっても相続に参加したくないと思うケースもあるでしょう。
そうした場合、民法では「相続放棄」が認められています。
相続放棄とは、文字どおり相続を放棄する手続きのことで、所轄の家庭裁判所に所定の申し立てをすることで、「初めから相続人とならなかったもの」としてみなされます。
相続放棄をしたい相続人が単独で行使でき、他の相続人の確認や了解を得る必要はなく、家庭裁判所としても、原則として申し立ては受理する方針で運用されています。
ところが、最近SNSや週刊誌などで、「相続放棄できなかった!」「相続放棄に失敗した!」といった声を見かけることが増えてきました。
本稿では、相続放棄に関する注意点について、分かりやすくご説明していきます。
まずは、生前の相続放棄についてご説明します。
相続放棄を考える理由は様々でしょうが、「相手(被相続人)に多額の借金があることが判明している」「相手との関係が悪い」といったケースは少なくないでしょう。
こうした理由であれば、故人が亡くなって相続開始を待つことなく、今すぐにでも相続放棄の手続きを取っておきたいと考えるのは、無理からぬことです。
しかし、民法では生前の相続放棄が認められていません。
これには例外規定もなく、当事者間の同意や書面(念書等)があったとしても、法的には無効として扱われてしまいますし、家庭裁判所に申し立てをしたとしても受理されることはありません。
現実には、「相続したくない」「関わりたくもない」といった家族・親族間の関係もあるわけで、もっと融通を利かせてもよい気もしますが、法で決められたルールのため、こればかりはどうしようもありません。
相続放棄とは、あくまでも「相続が始まった後」に可能となる手続きだということは覚えておくよりないでしょう。
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次は、「単純承認」が成立してしまった場合です。
単純承認とは、故人の全ての財産すべてを引き継ぐ意思表示のことです。
自らの意思で単純承認したのであれば相続放棄できないことは当たり前ですが、民法には「法定単純承認」という規定があり、これがしばしば問題を引き起こします。
法定単純承認とは、相続人の意思によらず、相続人が以下のような特定行為を行った場合、自動的に単純承認がなされたものとして扱われる決まりのことです。
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<単純承認したとみなされる行為(一例)>
・相続財産の全部または一部の処分・消費や譲渡
・被相続人名義の預貯金の払い戻しや解約
・経済的価値のある遺品の持ち帰り
・不動産の名義変更(所有権移転)
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さすがに、故人の不動産の名義を自分に変更したりすれば、単純承認とみなされても止む無しと思えるかもしれませんが、実際には相続財産の一部を消費したり、価値のある遺品を持ち帰るだけでも、法定単純承認が成立してしまう可能性があります。
相続放棄をしようとしたら、「既に法定単純承認に当たる行為をしてしまっていた!」ということがないよう、相続財産の取り扱いには注意が必要です。
次は、「熟慮期間」が過ぎてしまった場合です。
民法では、「相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」と定められています。
一般に、この定めにある「3ヵ月」を熟慮期間と呼び、熟慮期間中になんらの意思表示や手続きをしなかった場合、先ほどと同じく「法定単純承認」が成立してしまうことになります。
なお、熟慮期間は、期間延長の申し立てをすることができます。
精神的・物理的な事情によって、3ヵ月以内の相続放棄が難しそうな場合、期間延長の手続きをしておくと安心です。
最後は、手続き上の不備が生じた場合です。
相続放棄自体はシンプルな意思表示なのですが、故人の住民票除票又は戸籍附票、相続人・故人それぞれの戸籍謄本など、手続きに必要な公的資料が複数あります。
必要な資料は故人との関係性等によって異なるうえ、似たような名前の資料も多いことから、できれば裁判所に直接確認するとよいでしょう。
また、相続放棄の手続きを進めると、家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が届きますので、内容を確認・回答して、返送しなければなりません。
提出資料を間違えたり、照会書に気付かなかったりすると、相続放棄が却下される可能性がありますので、十分に注意して対応しましょう。
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