資産運用
著者が不動産投資のご相談をお受けしているなかで、融資に関するお問い合わせをいただくことがあります。
なかでも、
・不動産業者から、これ以上は融資が受けられないと言われた
・これまで購入した収益物件では利益が出ているはずだが、自分の何が悪いのだろうか?
・あるいは、取引する不動産業者を変えた方がよいのだろうか?
といったご相談は、以前より変わらず頻繁にいただきます。
実は、不動産投資の融資では、こうした状況は起こるべくして起こるもので、必ずしも投資家の方に問題があるとか、不動産業者の力不足によるものとは限りません。(なかには、本当に投資家の方や営業担当に問題があることもありますが・・・)
いざ融資が受けられなくなって焦ってしまう気持ちは分かりますが、融資の仕組みを正しく理解し、冷静に対策を練ることが大切でしょう。
本稿では、不動産投資の融資の仕組み、なかでも途中で融資がストップしてしまう原因を中心に、分かりやすくご説明していきます。
まずは、不動産投資の融資の種類に関して、ご説明しましょう。
融資を大まかに分類すると、「アパートローン」と「プロパーローン」に分かれることは、皆さんも聞いたことがあるかもしれません。
アパートローンとは、主に融資を申し込んだ本人の年収・資産・属性といった個人与信を重視して審査するタイプの融資のことで、金融機関によっては「マンションローン」「投資用不動産ローン」「不動産投資ローン」などの名前が付いていることもあります。
また、特定の不動産業者と業務提携をして、「提携ローン」という名目で取り扱う金融機関もあります。(以下、これら類似商品を含め、「アパートローン」と総称します)
これまでの事業実績や案件の収益性も審査対象ではあるものの、それよりも個人の年収・資産を返済原資として期待して見る傾向が強く、一定以上の個人与信があれば、投資初心者の方にも比較的融資が出やすい特徴があります。
一方のプロパーローンとは、主に決算書等による事業実績とその案件の収益性を重視して審査するタイプの融資のことです。
アパートローンと異なり、個人与信以外の様々な要素を総合的に判定する傾向が強く、一般に審査基準は厳しい傾向にありますが、その分、金利や返済期間等の条件面では有利なことが多く、投資実績のある不動産投資家や専業のプロ大家さんなどが多く利用しています。
冒頭のご相談をされる方の多くは投資初心者の方であり、詳しくお話を聞けば、ほぼ全てのケースでアパートローンの利用によるお悩みでした。
では、なぜ投資初心者に比較的融資の出やすいアパートローンなのに、途中から融資がストップしてしまう状況になるのでしょうか?
結論をいえば、アパートローンには、「個人与信を棄損することで融資を受ける」といった側面があるためです。
先ほど、アパートローンは、「本人の年収・資産・属性といった個人与信を重視して審査する」と書きましたが、金融機関ではこうした情報を以下のように活用しています。(実際にはもっと細かく計算されているはずで、あくまで説明用の簡易的なイメージとご理解ください)
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<個人属性の活用方法イメージ>
・年収 :年収のN倍を融資上限額に設定
・資産 :融資上限額に加算
・属性 :現在の年収を補正
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たとえば、ある年収800万円の投資家Aさんが、年収の8倍を融資上限額とする金融機関に申し込んだとします。(倍率は金融機関により幅があります)
その場合、Aさんへの融資上限額は6,400万円(800万円×8)を基準に、諸々の要因で加減算を行います。
たとえばAさんが預貯金500万円を持っていれば、その全額または一部を融資上限額に加算したり、逆に勤務歴が短ければ早期退職のリスクを考慮して一定額を減算したりする・・・というイメージです。
では、これの何が問題になるかといえば、融資上限額の計算では、過去に融資で購入した収益物件の実績評価が反映されにくく、実質的に上限額がほぼ更新されないということです。
そのため、Aさんはアパートローンの融資を受けるほどに融資枠を減らしていく一方ですから、冒頭のように「利益は出ているのに融資が受けられない」という状況が、どこかで生じてしまうことになるのです。
では、アパートローンのこうした課題に対して、どのような対策が打てるでしょうか?
1つ目は、本業の年収を上げたり、属性を強化したりすることで、融資上限額自体を引き上げてもらう方法が考えられます。
とはいえ、「年収を上げろと言われて上がるなら苦労はしない」という話ですし、アパートローンという商品自体に一律の上限額を設定する金融機関も多くあります。
ちょうど昇格のタイミングだった等であればよいですが、そうでなければあまり実効性のある対策とは言いにくいかもしれません。
2つ目は、相談する金融機関を変える方法が考えられます。
前述のとおり、個人属性の活用方法は金融機関によって異なるため、別の金融機関に相談先を変えることで、与信枠をより多く計算してもらえる可能性があります。
また、既に住宅ローンやマイカーローン等の借入がある場合、金融機関によって既存借入の算入ルールが異なることがありますので、一つの金融機関に拘るのではなく、複数相談してみるのがよいでしょう。
3つ目は、プロパーローンに挑戦する方法が考えられます。
プロパーローンにはアパートローンと異なり、融資を受けて利益を拡大するほどに評価が高まる傾向があります。
そのため、うまくやれれば「融資を受ける→儲かる→実績が評価される→さらに融資を受ける・・・」といった好循環を作ることも可能です。
初心者の方には敷居が高いことも事実ですが、プロパーローン攻略をテーマにした書籍も多数販売されていますので、関心のある方は検討してみるとよいでしょう。
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